第12回1000字小説バトル結果
第12回作品受け付け───2月10日〜2月29日
作品発表──────── 3月1日〜
人気投票受付け───── 3月1日〜3月29日
結果発表──────── 4月2日
第12回1000字バトルチャンピオン
越冬こあらさん作『蒸発』に決定です。
越冬こあらさん、おめでとうございます!!
●蒸発(越冬こあら)
- 都合上じっくりと作品を読むことができなかったんですが、その中でも一番目を引いたのが「蒸発」でした。従って、これに一票。
- この作者の作品で、初めて納得のいくものだった。感動したし、自分の色もちゃんと出てた。面白かった。ただ、蒸発するところの描写「靴が音を立てて落下した」というのは違和感があった。なんか「ヒュー」と音をたてて、地表を通り越し、ずっと落ち続けるイメージがわいたから。「コトリと地面に落ちた」でいいんじゃないかと思った。
- 非現実を淡々と描き、なんら違和感を感じさせない力量に感服しました。
●星のお伽ばなし(蛮人S)
- 今回は悩みましたが、やはり手堅いところで蛮人Sさんの作品を推したいとおもいます。
- 最近思うのは、「1000字小説」とは「1000文字小説」のことではないか、ということです。つまり、1000字以下の文字数で構成された小説ではなく、1000字きっかりに書くということ、ですね。999文字の作品と1000字の作品とでは厳然たる差があるように思えるのです。もちろん、999文字で終わらせた作者にも999文字で完結しなければならない確固たる理由があるのかもしれません。それは作者にしか分からないのだけど、でもしかし、なぜもう1文字を活かさないのか、という想いが私にはあります。ひとつのスペースでもいいし、読点でもいいし、てにをはでもいいし、感嘆符でもいい。なぜそれを活かさないんだろうかと歯がゆい思いさえ抱きます。まあ、余計なお世話ですけど。あと1文字を活かすためには何度も推敲をしなくてはなりません。1文字を差し込む(それは現実的には3文字足して2文字削ったり、9文字足して8文字削るという作業ですが)ために、すべての文字を総点検しなくてはなりません。1000文字の作品と999文字の作品の大きな差はこれだと思うのです。推敲の差。それはもしかしたら作品の表面には現われないのかもしれません。誰一人としてそんな差異には気付かないのかもしれません。でも現実的な作業量の差としてそれはあるような気がします。1000文字使い切ってやろうという作者の意気込みでもあると思います。そんなわけで、その作品の内容にかかわらず、私は1000文字の作品には敬意を抱いております。そして、数多くの投稿作品のうち、1000文字の作品はそれほど多くありません。あくまで申告値を基にしてのお話ですが。
今回の「1000文字」小説で印象に残ったのは一之江さんの『くのいち』と藤次さんの『警官殺し』と蛮人Sさんの『星のお伽ばなし』です。『くのいち』は気になる作品です。問題作です。私はこういう問題提起の仕方がわりと好きです。主人公の忍者性を追い掛けていると読者は訳が分からないまま煙に巻かれます。これは作品自体に忍者性があるのです。マニアには堪えられないません。もし、この作品を真に理解したいならば一度は北春日部の駅に足を運んでみるべきでしょう。『警官殺し』は緊張感あふれる文体と緻密な構成でぐいぐい読ませる作品です。ただ、構成を緻密にすると揚げ足を取りたくなるのも人情で、警官を15人殺す役を演じた俳優が果たして一日署長に呼ばれるのか、などとも考えてしまいます。警察機構にそれくらいのしゃれっ気があったら図書券麻雀などという発想は起きなかっただろうに、などと思ったりもします。『星のお伽ばなし』は以前作者のHPで読んだような気もします。ただ、その既読感を差し引いても今回のバトルの中ではやはり抜きんでた作品であると思います。独特の世界をもっている作者です。作り事でない世界。登場人物なり描かれる風景なりがきちんと作者の物語世界に定住しているという感じがします。安心して読めるのです。またこの場所で書き続けて欲しいという願いを込めて、この作品に1票を投じます。
●くのいち(一之江)
- 一文一文を短くすることで、軽快さと緊迫感をうまく演出できたように思います。冒頭にも「読ませる」工夫が感じられました。面白かった。
- このタイトルと作者を見た瞬間から「これだ!」と思っていました。もう少しストーリー的に展開があっても良かったような気がしますが、企業戦の中の女戦士としての主人公の姿がとてもリアルに伝わってきました。ほんとうに面白かったです。
●悔悟(鮭二)
- 奇妙な話が文章のテンポよさで読ませる。一番よくできた作品。
- 流れがスムーズで読者を乗せる巧みさが際立っているように思いました。冒頭はややゆっくりした感じなのですが、中盤以降の加速度のつき具合(語り手の生活に関する説明が一気になされる)が、バスの加速を願う語り手の思いと呼応していて、一気に読ませます。また、見方によっては重くなるテーマを、ユーモラスでわけのわからない不条理な話というオブラートで包みながら読者に飲ませ、じんわりとかすかな苦味を与えるといった罠に、こちらも、にやりとさせられました。ちょっとくせになりそうな大人の味という感じ。
●彼女のアイランド(川辻晶美)
- 透明感のある素敵な文章でした。表現・構成など、うまくまとまっていると思います。反面、さらりと読めてインパクトが薄い向きもあるかもしれませんが、それがボクとしては好ましい……ということで、1票。
- この作品が一番心に残った。というよりも、強く惹かれた。作品として完成しているとか、すばらしい文章だとか、そういうのではなく、この人の感じるものに素直に惹かれた。だから、これをおす。他にも良いと思える作品はあるけれど、この作品から見れば、次点はなし。
●娘が連れて来た男(しょーじ)
- 目を惹かれたのは、『娘が連れて来た男』『くだらない私』です。『娘が連れて来た男』は、皮肉ともボケ倒しとも裏の裏を掻いたとも取れるオチがツボにはまりました。『くだらない私』は、まとまりのある完成された作品ですが、一人称ということで次点です。私見ですが、一人称は筆は進む分稚拙に陥りがちです。お互い気を付けましょう。
●湖(小石川ももこ)
●必ず当たる予言(Momo)
- 簡単でわかりやすく変な想像力を使わなくても最後まで読めるのが私好みでした。オチも面白かったです。ピカ一だと思います。
●千文字聖書(特約)(スベスベマンジュウガニ)
- スベスベマンジュウガニさんの『千文字聖書(特約)』を推します。笑うべきところでしっかり笑わせていただきました。文章はテンポよく、言葉の選択も鮮やかです。何か裏のテーマがありそうで、やっぱり何も無いみたいなのも良い。
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