第75回1000字小説バトル結果

おめでとうございます!

今回のチャンピオンは、
荵さん作『蛇口の彼』
ながしろばんりさん作『秋と玉袋』
の2作品です。
エントリ作品作者得票
07蛇口の彼4
10秋と玉袋ながしろばんり4
02遠い碑の詩石井伸太郎1
04夕焼けメタモルフォーゼ安芸賢治1
06信号談義ごんぱち1
11アナトー・シキソの「スプーン」アナトー・シキソ1
 該当なし1


感想票をお送りいただいた皆様、ありがとうございました。
「私の投票がない!」「内容が違うような」……
掲載もれ、ミス等ございましたらご連絡いただけますようお願いいたします。



推薦作品と感想

■蛇口の彼  荵さん
 
感想: ぴかぷ〜★

04  夕焼けメタモルフォーゼ    安芸賢治
 ヤプーズの世界だな。でもこっちの方が泥臭い。ちゃんと味が出ている。

06  信号談義    ごんぱち
 四谷さん、またえらい出世を……

07  蛇口の彼    荵
 な、なにをしたんだ!('A`)

 「蛇口の彼」楽しそうでいいぢゃない。これにしよう。(M)
票者:このバトルへの参加作者


感想:最後の一言が効いています。
主人公の気持ちの変化が、違和感無く表現されていて読みやすかった。
ああ、好きになるってこんな感じなのかな。と妙に納得しました。
読後感が良かったです。
票者:その他のQBOOKS参加作者


感想:エントリ01  僕の手段 のぼりんさん

 フェチには恋する資格はないと自縄自縛に陥っている主人公と、嫉妬を恋と勘違いしたライバルとの、女性の存在を無視したエゴイスティックなおしゃべりというところですか。この話はそれだけでごはん三杯いけると思うので、個人的にはオチをつけるよりもっと会話を楽しませて欲しかったのですが、ハイジャックなんて所詮過剰な自己主張なのだと思考すれば納得するオチなのかと。

エントリ03  童貞 小笠原寿夫さん

 精神科診療を廻る世論の深刻さの中で、待合室の場面をあたりまえのようにあっさり捉えて描く作品というのは貴重で、かつ挑戦的だと思いました。しかし、あの二人のぎこちない距離感をかもし出す会話が、あの場面でなくても成立するように思えます。「ぎこちなさを精神的な疾患に起因すると書きたかったのか。それは差別の助長だ」という反発を生みかねないのでは、と余計な心配をしました。きっと上手く読み取れていないせいなのでしょう。

エントリ04  夕焼けメタモルフォーゼ 安芸賢治さん

 曳きこまれる表現。ああ、安芸さんのいいところがでてるなあ、と思いました。
 ところで、主人公が何を望んで旅に出たかがうまく読み取れませんでした。財宝ではないそうですが、「変態」を望んだのでしょうか、それとも、やむにやまれぬ渇望を描きたかったのでしょうか。
 それと、私としては「はだかの右足」とした方がいいのかな、と感じました。漢字で書くと「裸足の右足」…細かいのですが。わざとでしたか?

エントリ06  信号談義 ごんぱちさん

 ラストの一言でにんまり、って感じでした。

エントリ07  蛇口の彼 荵さん

 今回投票はこの作品へ。「股間を剥き出しにし、思いの丈を告白してきた。」で笑いました。笑うところじゃなかったですか? 長さに語る男の思い、って読めてしょうがない。告白を了承した理由も推して知るべし。
 蛇口の彼より彼女の方が光ってます。そんなギャップもおもしろかったり。

エントリ10  秋と玉袋 ながしろばんりさん

 今回の拘り大賞は金玉に。
 日本の金玉、とか「もうぞろぞろと」とか、あっさり納得。
 金玉に隠れてた月の気分に同調しちゃって、ちょっと不快。

エントリ11  アナトー・シキソの「スプーン」アナトー・シキソさん

 「豆しる」もとの作品にもあった表現ですね。インパクトあります。
 単純にシャレって受け取って宜しいのでしょうか。自分、真面目なもので婉曲表現とか苦手で。
 スプーンを掬うためにスープを飲む…というのを少し考えてみました。墜ちているのに昇っていく無垢なる少年のようなスプーン…関西弁とのギャップはおいといて。そんな今を愉しんでいるような存在には、スープを飲みながらゆっくりと掬うのが心意気…現実感のない世界、なのに、いや、だからこそ許されるような対話。つまり、洒落やんけ。

エントリ12  埋もれる 越冬こあらさん

ああ、埋めてしまった…!
というか、消滅させてしまった。
誰の? ねえ、誰の、何の才能?
票者:このバトルへの参加作者


感想:滅茶苦茶な中に登場人物のどうしようもない感情がのぞいて、初々しい緊張を共感できた気がしました。
曲者です。
票者:このバトルへの参加作者


■秋と玉袋  ながしろばんりさん
 
感想:10、11、12は甲乙つけがたいのですが、秋と玉袋の「あごの先だけ爆発したようなひげ」という表現が気に入りました。
票者:その他のQBOOKS参加作者


感想: シモネタである。
 シモネタは、そもそも品性に問題があるし、子供にも分かるような簡単で低級な笑いとも言えぬ笑いで云々。
 でもそれなら、中年以上を対象にした小説に必ず濡れ場を仕込むのは、月9ドラマで必ず人気俳優を使うのは、宮崎駿作品で必ず飛翔シーンがあるのは、簡単ではないのか。
 「うちの息子はエロマンガばっかり見ている」なんてオヤジの青春の一本が「お熱いのが好き」だったりするのだ。
 娯楽の本質はそれこそ、玉袋の毛みたいなものなのだ。無論、この比喩は間違っている。だから、所詮は玉袋の毛なのだ、日本の夏、夏に浴衣で胡坐をかくと、はみたまするからご妖人、なのだ。

 無論、同じようなものが、来月も出たら全然入れる気はない。念のため。
票者:このバトルへの参加作者


感想:04「夕焼けメタモルフォーゼ」安芸賢治
いいねえ。始まりから終わりまできちんと世界イメージを維持できている。
物語世界そのものが、ドタリ、バタリと歩いてきて、最後にパーンと羽ばたく。
ちゃんとメタモルフォーゼしてる。

08「秋雨戦線異状なし」とむOK
いいねえ。地力を感じる。
しかし、なんでも書けるなあ。

09「往昔」ぼんより
SFか。P.K.ディックな世界だなあ。
マシンの力を借りた、失われた「偽物の思い出」との、結局うまくいかない再会とか。

10「秋と玉袋」ながしろばんり
こりゃあおもしろい。今回はこれか?
下品でシャレてる。この、オヤジ的な粋。

12「埋もれる」越冬こあら
ぬう。これもいいなあ。まさに、こあら寓話の真骨頂。完成度高いぜ。


「秋と玉袋」か「埋もれる」のどっちか。いや、上に挙げた他の3作品もかなりいい。
と、ここまで書いて、ばんりの作品だけが、作品の「性別」が違う事に気付いた。
上の5作品のなかで仲間はずれを探すと、ばんりのヤツだ。
と、いうわけで、今回は、ばんり・MAO・ながしろの「秋と玉袋」に。

(アナトー)
票者:このバトルへの参加作者

感想:おっきな玉袋に遭遇してみたいと思った。

次に面白かったのは越冬こあらさんの「埋もれる」

(ぼん)
票者:このバトルへの参加作者


■遠い碑の詩  石井伸太郎さん
 
感想:家族全員呆けてもて沙紀が家出するシーンが面白かったです。
それやったら玄関で気づくやろというツッコミは敢えて入れません。
票者:このバトルへの参加作者


■夕焼けメタモルフォーゼ  安芸賢治さん
 
感想:内容よりも、文自体のエネルギッシュな描写に惹かれました。
子供のころに読んで怖かった童話で、太陽が沈むまでに歩いた土地だけくれてやる、と悪魔に言われた男が、戻って来れないで死んでしまうという話を思い出しました。全然内容違いますけど。感情移入は出来ませんでしたが、真に迫った覚悟が格好良かったです。

あと、アナトー・シキソさんの『スプーン』が面白かったです。
まるでスプーンが自然に生きているような、微妙な感じを受けました。荵
票者:このバトルへの参加作者

■信号談義  ごんぱちさん
 
感想:台詞のみでの進行はあんまり好みではないのですが、オチが私の大変な好みだったのでしかたがありません。もっとも集中して読めて楽しかったです。
票者:このバトルへの参加作者


■アナトー・シキソの「スプーン」  アナトー・シキソさん
 
感想: 裏天神のお祭りにいった。
 煙がたちこめた裏参道の両側には、ぎっしりと軒を連ねた露店。
 本堂でお参りを済してから、ネコと一緒に露店をひやかして歩くことにする。
 七味唐辛子、お面、マヨネーズ、うどん、布団乾燥機、木彫りの仁王、下駄などをてんで勝手に売っている。どこかで演歌をやっているらしく、呼び込みの口上にまじって音色が低く聞こえる。
 すると、サンダルと蚊取り線香を並べた露店の隣に、スプーンを売る露店があった。
 生まれたてのスプーンが裸電球の下で、二つに仕切られたケースいっぱいに入ってわらわらしている。
 子どもが、母親の袖を引っぱってスプーンをねだっている。
 スプーンなんて飼う場所がないわよ、と母親が言う。
 いいよ、外スプーンにして飼うから。子どもが大きな声で答える。
「外ったって、外でちゃんと生きていけるかしら、こういう売りスプーンは」
「大丈夫だよ、なんとかなるよ」
 私はケースでわらわらしているスプーンを見た。
 アルミ合金のスプーンばかりだ。これなら半永久的に死なない。
 スプーン売りの店主は、黙って親子のやりとりを聞いている。
「ねえ」突然、ネコが私に言った。
「なに?」
「わたしも買いたいから、ちょっと待って」
 ネコはスプーンの露店に歩いていって、
「雄と、雌を、一本ずつ」と頼んだ。
 左右に分けられたスプーンの群れの中から、一本ずつ取り出し、店主はそれをやわらかい布に包んだ。あいよ、と言って、ネコに渡す。私はネコの財布からスプーンのお金を払う。ネコはそっとスプーンを抱いて、すこし笑った。ネコはかわいい。
 さきほどの母子連れが、こんどは茸の露店の前にいた。
 茸なんて飼う場所がないじゃない、と母親が言う。
 いいよ、外茸にして飼うから。子どもが答えている。
 さっきの、スプーンのときと同じことを言い合っている。
「サクラだったのかな?」ネコが言う。
「さあ」私は答える。

票者:このバトルへの参加作者


■なし  
 
感想:今回は良いのがなかった気がします。
なので今回は無投票で次回期待します。
遠い碑の詩がよく意味がわからなかった…。
票者:純粋読者