Bolly:I don"t know he is a student.まさか彼が学生だったとはね。Eric:What is your father?君のお父さんは何してんの?Bolly:He is Golbatiov.ゴルバチョフさ。Eric:Show me your father、please.だったら会わせてくれないか。Bolly:What are you saying? It"s more hard you meet him than Antonio Inoki.何言ってんのさ。猪木に会うより難しいよ。Eric:Which is more hard to meet your father or Unagi?うなぎを捕まえるよりも?Bolly:Of course Unagi.勿論、うなぎよりは簡単さ。Eric:By the way、have you been to Harajuku?ところで、原宿へ行ったことは?Bolly:I have never been to Harajuku as same as Sannomiya in Kobe.一度もない。神戸の三宮すらない。Eric:Why not? Both of them are cities of teen.どうして? 両方とも若者の街なのに。Bolly:In first、I need a lunch box.まずお弁当を用意しなくっちゃ。Eric:Mammy"s lovely lunch?ママの愛情弁当かい?Bolly:You shall die.And then I want to Ueno zoo park.殺す。だったら上野動物園に行きたいよ。Eric:What kind of animals do you like?どんな動物が好きなの?Bolly:"Kirin."キリン。Eric:I want to watch a snake.私はヘビを見てみたいなぁ。Bolly:"Kirin! Kirin!"キリン!キリン!Eric:And elephant.それから象とか。Bolly:"Kirin! Kirin! Kirin!"キリン!キリン!キリン!Eric:Be quiet. Here is the libraly. 静かにしろよ。ここは図書館だぜ。Bolly:Okay.In final、what KohtarohTakamura however mean in that poem?うん。でも結局、高村光太郎は例の詩で何を言いたかったんだろう?Eric:I can"t understand.解らないよ。Bolly:I guess he doesn"t want to fame neither rich.私が思うに、彼は地位や富を求めてたんじゃないってことさ。Eric:Do you mean he couldn"t stop writing?書かずにはいられなかったと。Bolly:No!he wanted play a pierrot roll.違う! 彼はピエロの役を演じたかったんだ。Eric:pierrot? He is so far from pierrot.ピエロ? 彼はピエロからは程遠いよ。Bolly:He is the same kind human of you and me.彼もまた我々と同じ人種さ。Eric:Wouldn"t you like to atudy chemistry?化学の勉強はしなくていいのかい?Bolly:Chemistry is only study which make new matter.化学は新しい物質を作り出す唯一の学問だ。Eric:It"s a nice words!いい言葉!
雨上がりの、寒々とした夜だった。したたか酔っ払った僕は、気がつくとひとり、住宅街の中の、長い、長い一本道を歩いていた。道は、街灯の光を浴びてところどころ鈍色にうっすら光っていた。両脇に並ぶ家々はどれも灯りを消して辺り一帯は森閑と静まり返り、ただ僕の足音ばかりが、ガランとした夜の底に響いた。 どうやって其処へ着いたのか、いや、そもそも其処がどこなのか、僕は知らなかった。家並も、景色も、まるで見覚えがなく、そのくせ、歩いていると過去に、幾度かここを通ったことがあるような気がしてくるから不思議だった。 先へ行くにつれ、段々と、家屋は廃屋めいて、数も疎らになった。そうして家並が絶えると、左右に鬱蒼とした雑木林が広がった。いくら歩いても周りの景色が変わらず、歩いているのか歩いていないのか分からないような心地になって、それでもしばらく歩いていたら、道の真ん中に、雄牛のような形をした水溜りがあった。近づくと、白骨の色をした街燈の丸い灯が、水面にまぶしく煌いた。かすかに揺らめくその光を茫っと凝ていると、深い夢の底に沈みこんでいくような、なにがなし不思議な気持ちがしてきた。よく見ると、水溜りは、道の彼方此方に仄黒く光っていた。どの水溜りも、何かしらの形態を模していた。馬……烏……猫……蛇……鹿……山羊……河馬……昔飼っていたコリー犬……幼い頃友達にもらったハムスター……それから、ちょっと判断のつかない、ぼやけた形が現れた。何かはわからないけれども妙に懐かしいような、哀しいような感じがして、ぼんやり見入っていると、それは次第に、死別した恋人の左手のように見えてくるのだった。指先は、助けを求めるように、僕の影のほうへ伸びていた。僕は避けるようにそこを離れた。 さらに先を行くと、やがて、眼路に黒々とした小山が現れて、道は山の手前で途切れていた。そうして、その道の果てるところ、僕は見た、僕の形をした水溜りを……。 身を乗り出して磨かれた硝子のような水面を覗くと、白濁した狡猾な目が二つ、水面の向こうから僕を眼差した。 声を上げる間もなかった。気がつくと、僕は硝子の向こう側に閉じ込められて、此方を見下ろす、知らない僕を見上げているのだった。僕は叫んだ、喚いた、罵った。けれども無駄だった。知らない僕は、素知らぬ顔して明日へと歩み去っていった……。
※作者付記: 体感バトルに一度だけ投稿したことがあります。こっちは初めてですがよろしくお願いします。
今日も得意顔で、虎を連れた狐が森を練り歩きます。 森の動物達は虎にお辞儀をしますが、虎の目には狐にお辞儀をしているようにしか見えません。 すっかり騙されている虎は、狐を王様と呼び、森の動物たちも今度こそ本当に狐を王様と呼ぶようになったのです。 ところが。 向こうからやって来る野ねずみは、胸を張ったまま頭を下げようとはしませんでした。「なんだ、けしからんヤツだ、王様に対する礼儀はどうした!」 狐が怒ると。「へへん」 野ねずみは涼しい顔で、狐に耳打ちしました。「虎ならこっちにだっているんだぜ」 野ねずみの後ろには、虎がいました。どうやら、狐と同じ手口で従えたようです。「あ、う……と、虎は関係ない、狐の方が頭が良くて立派な尻尾を持っているから王様なんだ」「それが、ぼくの虎にかなうかい」 狐と野ねずみは睨み合います。「そんな無法を言うなら、虎をけしかけてお前を耳からバリバリ食わせるぞ」「その前に、こっちの虎がお前を尻尾からがぶりとやるさ。さあ、虎さん――」「こ、こら、待て、落ち着け!」 狐は慌てて虎を止めます。「いいか野ねずみ、私はお前と一対一でやったって勝てるんだ、大人しくそのミミズみたいな尻尾を巻いて立ち去れ」「へん、そりゃあ一対一じゃかなわないかも知れないけど」「だから、虎はナシだよ、そんな事したら両方喰われるって、ちょっと考えれば分かるだろう」「知った事か、お前に勝てれば良いんだ」「止せって、正々堂々と狐と野ねずみで勝負しようじゃないか! それに、虎が狐一匹食べて満足すると思うか? 血の味に興奮した虎の近くにいたら、その気がなくたってはずみで喰われちまうぞ!」「へん、そんな時は、逃げれば良いだけだ」「一日に千里を走る虎から、野ねずみが逃げられるもんか」「千里ってのがどれぐらいの速さか知らないけれど、ぼくは野ねずみ仲間と駆け比べをしてもそこそこ勝つんだ、虎なんか楽々振り切れるさ」「虎の速さも恐ろしさも、ちゃんと知らないんじゃないか、君は! 私は君よりずっと長く虎を従えてだね」「止めて欲しいなら、降参して僕に跪くんだな!」「つけあがるな、クソねずみ! 自分まで危険だってのが、まだ分からないのか!」「あんたが虎を手放して謝れば、こっちも手放すさ」「冗談じゃない、手放すのならお前の方だ!」 言い合いは延々と続きました。 日も傾いた頃。 虎たちのお腹が、ぐぅ、と鳴りました。
ネットに飽きて夜空を見上げると、満月がまるではんぺんみたいにふわふわ白かった。そのままふわふわ見ているうちにふわふわ体が沸き立つ心地がして俺は気づくと何かふわふわしたものに置き換えられていた。 腹が空いた気がしたので冷蔵庫を漁ったら凍った鶏肉が出てきた。切って焼こうと包丁を入れたら手が滑り、鶏肉は切れず自分の指がぽふんと転がった。特に痛みもなく切り口がふわふわと盛り上がってきた。どうやら再生の兆しらしい。指を拾ってみると同じようにふわふわ動いているのでちょっと気味が悪かった。切り口から指が三日ほどでふわふわ再生した。こんな生き物を俺は知っている。プラナリアだ。 ネットの掲示板に「プラナリアになりました」とスレを立ててみたら、三日で百ちょっとのレスがあった。大まかな傾向は「切って写真をうpしる」「氏ね」「俺は○○(その他の生き物)に鉈よ」そしてキャッチとかワンクリとか関係ないカキコでまあ四等分というところだった。「プラナリア」でググッてみたら、頭の尖った白いなめくじのようなプラナリアが、胴体の半ばまで唐竹割りにされて、双頭になって復活する前後の姿を写した二枚の画像を見つけた。俺が立てたスレでは「銀杏切り」だの「かつらむき」だのと無責任な書き込みが幾つも来ていたけど、やればできると言われたって、はいそうですかとやってみる気持ちになんてなれない。 一週間がたち、切った指の方もふわふわ俺になった。とろとろ眠たげな目もたぷたぷの腹も俺そのものだった。俺達はてれてれと夕方に起き出しては、夜じゅうネットやらテレビやらほけほけと過ごし、夜明け前に何かもそもそ腹に入れて、敷きっ放しの蒲団にへろへろ転がって眠った。消費者が二倍になって、僅かな蓄えはみるみる減っていく。仕事の人間関係で自分がコマ切れにされるのは嫌だけど、通帳の残高がとうとう三桁になって仕方なく俺達は働くことにした。翌週、じゃんけんで負けた相棒がバイト先への初出勤を飾った。一日交替だから明日は俺の番だ。仕事はコピーとか、書類の破棄とか、要するに雑用だった。「シュレッダーが、無闇に元気なんだよ」 ひん曲がったネクタイ(俺が結んだ)をぎこぎこほどきながら奴はいう。俺は強力な回転で書類をばりばり噛み千切るシュレッダーの前で、ネクタイを絞めておどおどびくびく書類を裁断する明日の自分を思い浮かべた。今度の仕事も長続きしそうにない。
時計を見るともう1時を過ぎていた。私はノートを閉じて散らばった筆記用具をざっとまとめて息を吐く。立ち上がって机の電気を消し、蛍光灯のスイッチも切って、毛布に包まった。家族はもう皆寝ているので静かで、カーテンの隙間から少し空が見えた。私はその辺りを漠然と眺めながら眠気がやってくるのを待った。目を閉じてしまうと、締まるように胸が苦しくなるのだ。夜の静かな時間には昔のことを思い出してしまう。耳を澄ましても生き物の音のしない、寂しい時間には余計なことが思い出されてならない。 そうやってじっとしているとまもなく目の奥がじんわりと重くなって、それでももう少し我慢して、それからやっと私は目をつぶる。すると頭の奥に黒っぽい影のようなイメージが現れる。いつも決まって、はっきりとした姿が浮かぶことはない。というか、半分忘れているのかもしれない。「…………」その影は明確な顔も持たないのに、怒った、つらい表情をする。そしてぽそぽそと何かを呟く。それは確固たる声色も持っていないのに途端、胸が、苦しくなる。思い出そうという努力をしなければその思い出の断片のようなものの詳細は現れない。ただ、悲しくて、苦しくて、つらい。息が苦しい。その時の思いだけが蘇るのだ。でもそれも一瞬のことで、まもなく私は眠る。黒い影も、呟きも霧散する。 霧状になった黒いものが周りの黒に飲み込まれていく。私はほっとして夢に引き摺られていく。固くて冷たいものに圧迫されていた私は、今度はふわふわとして暖かい毛布のような夢にくるまれる。夢は柔らかいけれど重く、私は安心して包まれて沈んでいく。そこで漂って、ふと気付くと目の前にあの人がいた。突然、素裸にされたような寒気がして、さっと血の気が引いた。暖かな夢にいきなり現れた「黒い影」であるところのあの人は今はちゃんとした姿をしていた。その確かな鼻筋に、黒々とした眉に、曖昧だった記憶が途端に色を得て私の脳裏を巡った。たくさん、たくさんの楽しい想い出と、少しだけれど重たくて、冷たいあの記憶。怯える私を前にして、あの人はいつものつらい表情をした。それから少し、笑った。 目が覚める。毛布を蹴っ飛ばしていた。寒いのは当たり前だ。頬が冷えているのを感じて手のひらをあてがうと、濡れていた。私は頬を拭って起き上がると灯りをつけ机に向かった。涙がとめどなくこぼれて、私は泣きながらあの人へ手紙を書いた。
いつの間にか我々の後ろにも人が立ち並び、立派な行列となった。 前を見ると頭と肩が幾重にも並んでいるが、一向に進む気配がない。足も大分草臥れてきたし、腹も減った。喉も渇いた。一緒に並んでいる息子も思いは同じらしく、二分に一度くらいの割りで、私の顔を恨めしそうに見上げ、「早く進まないかなあ、僕、お腹空いちゃったよ」 と同じ科白を繰り返す。私は、「もう少しの辛抱だ」 とか、「我慢したほうが美味しさが増すぞ」 とか答えているが、さて、一体何の『美味しさが増す』のか良くわかっていない。そもそもこれは、何の行列だったのだろうか。よく憶えていない。 昨晩は接待で、否、接待という名目の憂さ晴らしで、朝帰り。今朝は妻とひと悶着あった。アルコールが抜けきっていない頭と体を居心地の悪い居間に置いておくわけにいかず、息子を連れて、逃げるように外出。息子の言うなりに、さて、何処に向かったのか、定かでない。 何にしても、我々親子が腹を空かして、炎天下に並んでいるのだから、この列の先にあるのは、食べ物屋に相違ないだろう。バッティングセンターか何かに行く途中、二人で食べることにしたのだろう。そうなると息子の目当ては、ファミリーレストランかラーメン屋に決まっている。大方、テレビで名前を覚えた「行列の出来る」店の行列に並んでいるのだろう。それにしても記憶が曖昧だ。 またひとつ、欠伸を噛み殺す。「疲れているんだなあ」 毎日の残業で溜まる疲労は、週末の休息で補える域をとうに過ぎている。一週間のサイクルからはみ出した疲労が蓄積され、肉体と神経と頭脳を蝕んでいるのだ。『人間ドック』『検診結果』『転地療養』『長期休暇』『青い空』 思考が巡る。「ねえ、さっきから全然進んでないよ」「ああ、サイクルがあるんだよ。今にドドッと進むさ」「僕、ちょっと見てくる」 息子は列の前方に走っていった。『車はどこに停めたんだったかなあ』新たな疑問が濁った頭をよぎる。ガソリンの匂いがする。燃焼臭が漂ってくる。こんな砂漠のど真ん中で。砂漠……いいや、砂が白い。「ねえ、前のほうに動物も並んでいたよ」 戻ってきた息子が不思議そうに言った。「ハト、カラス、犬、猫。たくさんの豚、たくさんの鶏……」 息子が指を折り、報告する。 うたた寝、衝撃、叫び声、サイレン、たくさんの煙、たくさんの血液。「もう、疲れることもないんだな」 そう思い、納得した。
きゃん。 猪口と猪口が弾く音は犬の鳴き声に似ていた。震えきった犬の鳴き声。「こっ」とか「かっ」とか、もっとそんな音を期待していた。 寒いね。めっきり寒くなったね。 そこまで大袈裟じゃないだろうと怪訝そうな顔をしてみたが、隣のヒゲは全く聞いていない。汚らしいヒゲ。私は見知らぬヒゲと酒を嗜んでいる。温めの燗酒は私。ごつごつの熱燗がヒゲ。ヒゲの酒はごつごつに燗した。オヤジがそう言う。 ヒゲが何かのメロディを口ずさみはじめた。銀色っぽいメロディ。何だろう、ずっと昔聴いたことがある。私はそのとき大勢の人たちと一緒にこのメロディを聴いていた。トモダチだとかシリアイだとかナカマだとか、チキなんて言う人たちと一緒だったと思う。 それで皆泣いていた。この銀色っぽいメロディで泣いていた。私は泣かなかった。今でも泣けそうにない。 痛いな。でも満足してる。すまないね、お酒ご馳走してもらって。 ヒゲのお代は私が払う事になっている。誰が決めたのでもなくそういうことになった。オヤジもそのつもりでいる。私はもう二合、ぬるめの燗酒を頼んだ。ヒゲの顔は痛々しい、ただそれだけで酒は進んだ。ヒゲも追加で二合、ごつごつの熱燗を頼んだ。 きゃん。 今度は「かちっ」という音を期待していたが、やはりそうはならなかった。 「ぎん」「がん」「ごちっ」「がっ」「ぴーん」 どうしてこういう音が鳴らないのだろう。 晴れ晴れとした深い夜に月明かりが煌々と照っている。海はざぁざぁと波音を立てて、生温い風が背中を覆う。 そんな当たり前のことなどどうでもよかった。 月がキレイだな。うん、実にキレイだ。だけどこれじゃダメだ。月は見えないぐらいがちょうどいい。ああ、そうだ。お酒のお礼にアンタにウタをカいてあげようか。もちろん金は取らないよ。ああ、それにしても寒いね。 私はウタをカいてもらっている。ありがた迷惑のようで、嬉しくもある。ヒゲはちょっと狂人かな、と思ったりもした。でも月は見えないぐらいがちょうどいいというのはそうだろうな、と思う。 きゃん。 オヤジはずっと無言で、ヒゲはウタをカいている。私のために。時折私と杯を交わす。私はたまに肴に手を出しながら、酒を呑んでいる。波音だけの静かで濃い夜。濃くした夜。肌寒くアツい夜。向かいの白いホテルも夜の色に沈んでいる。 ヒゲがカく世界中で私だけのためのウタって、一体どんなウタなんだろう。
何処までも飛び続ける。何処までも何処までも何処までも。 何処までも飛び続ける。 飛び続ける。科学者達は地球が丸いことを証明するため、今日も飛び続ける。真っ白な白衣、落ちていく顕微鏡、砕け散るフラスコ。 何処までも何処までも何処までも。 地上では麦拾いの女達が収穫の踊りを踊り、ゲイバーで吐きつぶれた男がオカマに介抱され、教会のステンドグラスは今日も綺麗だ。赤。黄色。緑。紫。橙。微妙な陰影。鮮やかな色彩。ステンドグラスは今日も綺麗で聖女と聖女は今日もその色彩に白い身体を晒しながらお互いのふとももを舐めあう。ビルの屋上で音楽に明け暮れる少年達。地球儀が回る(それはアルミ仕上げの光沢があり、とても良い出来である)。 世界の果て。 オーバーザレインボー。 科学者達は飛び続ける。科学者達は何処までも飛び続ける。 廃ビルの根元から空へと伸びていく虹を、醜いアヒルの子のような、ばさばさの髪の女の子が渡っていく。 それをわたしはジェット機の中から眺めている。ファーストクラスのシートだ。機内には私のほかには誰もいない。ねじられ、ひねられ、七色、醜いアヒルの女の子は白鳥になって世界の果てへと飛び立っていく。それをわたしは書類を繰りながら、ゆったりと眺める。雑居ビルの看板をすれすれに飛びながら、うち枯れた街路樹を、ガードレールを、螺旋階段を、テレビモニターを、図書館の階段を、すれすれに飛び続けながら、世界の果てへ。世界の果てへ。 世界の果てへ。 オーバーザレインボー。 科学者達は飛び続ける。飛び続ける。見続ける。宇宙の果てを。巨大な鏡を丹念に磨き上げた巨大なレンズを幾重にも連ねた望遠鏡を衛星軌道へ打ち上げ、宇宙の果てを見続ける。何処までも何処までも何処までも。「フィッシュ、オア、チキン?」 ワゴンをかたかたと押しながら、客室乗務員がわたしの隣にやってくる。そして静かな笑顔で尋ねる。フィッシュオアチキン? 魚ですか? 鳥ですか?「フィッシュ、オア、チキン?」「虹ですよ」 わたしは窓の外を指差して言う。書類の束を閉じ、窓の外を指差し、言う。「あれは虹ですよ」 オーバーザレインボー。回る地球儀。白鳥は今どこまで行ったのだろう。科学者達は。わたし達は。何処へ。「そうですね」 青空にかかる真っ黒な半円。虹。ステンドグラス。白鳥。オーバーザレインボー。「虹ですね」 若い客室乗務員は静かにそう答える。