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第44回詩人バトル

エントリ作品作者文字数
1香月朔夜 48
2スハヤクイック・マチマチカ歌羽深空346
3ドキドキしてるやまなか たつや123
4三日月ゆふな さき220
5コティー0
6星空を見上げて藤原 けゐこ83
7詩に吹き込めるもの道人150
8ねがてぃぶ・しんきんぐK.N366
9月の降る夜望月 迴77
10マリオネットマリオが訴える儚さを悟りし者237
11神の痛みを僕は知らない早透 影855
12残り物柳 戒人332
13高嶺の花朧冶こうじ125
14鳴かない蛍は身を焦がしたヨケマキル0
15シンク佐藤yuupopic254
16いばらの道有機機械333
17変化マリコ289
18ゆンべのことながしろばんり347
19帰宅電車村上かおる295
20(作者の要望により掲載終了しました)
21ディモーニッシュな夜紫色24号691
22月極駐車場相川拓也49
23会話凜一24
24ゴクフツウ空人590
25love novel ?暇 唯人229
2610 years after…大介456
27カサブタ木葉一刀378
28野蛮の血大覚アキラ43
29チャイニーズ ロックンローラーイグチユウイチ57
30色のない季節のスライドを、ただショウウィンドウを眺めて通り過ぎるイタリアン・ラッシュ5+7+5
31ラジオスターの悲劇ぶるぶる☆どっぐちゃん0
32べっそん0
 
 
 ■バトル結果発表
 ※投票受付は終了しました。








エントリ1       香月朔夜 


雨が降る……

それだけで、世界はとても優しいものに変わる



冷たい雫はとめどなく降り注ぎ、体温を奪う。
幾度も 幾度も浴び続けるうちに感覚は溶け、
温度を 痛みをやわらげてゆく……


アスファルトを激しく打ちすえる音は重なり、木霊する。
まるですべてのノイズを隠すかのように鳴り響き、
やがて 車の排気音や怒鳴り声を飲み込んで、消えてゆく……


横切る水膜は、景色を淡く見せる。
強い鮮やかな色彩は、瞳にあせて映り込み、
ただ ぼんやりとした輪郭のみを捉えてゆく……



そう。
ここは、何もかもがあいまいな世界。

不確かで、
ゆえに 誰も傷つけない

すべての感性は薄められ、
心は、ゆるやかにたゆたう

それは、まさしくうつつならぬ夢に等しく、
まどろみの中に落ちてゆく



だから―――


何処までも優しく包むこの場所で、
僕は ひたすらこの身をさらし、
いつまでも立ち続けていよう………





―――――この雨がやむ、その時まで。






エントリ2  スハヤクイック・マチマチカ     歌羽深空


スハヤクイック その極意
スバヤQUICK はやはやく

思い上がった訳ではないよ
スタイル見つけただけなのさ

ムリをするよりユウリが良いね
サインするより乞うサイン
呼んでくるならよっぽど良いね
書かんと来んから やっかいだ

QUICK飛びつく QUICK食いつく
クイック 9・1・9 81

スピード不足は時代の所為さね
いくぶん日本は空気がおもい
湿度で温度が伝わりにくい
伝わり2・9・1で18コ、ハイ!

ふわふわケーキに飛びつけオトメ
ぎらぎらチェリーに食いつけコトリ

タクシー空飛ぶ36台 Tシャツ干します64枚

いくぶん日本は空気がおもい
東南アジアは おも重い
ジャパン 32
東南 70
……ホラ重い!

先生に見に来た6回目
目をほらゴシゴシ400回

しかし続くよ どこまでも
線路も続くよどこまでも
線路は続くよ6000先まで



ね!






エントリ3  ドキドキしてる     やまなか たつや


渚の雲
見てる私
私の胸
ドキドキしてる

明日の学校
ちょっと憂鬱
憂鬱な時は
ココアでも飲む

ココアの味は
私の安らぎ
安らぐ私の
足元にチビ

チビは子犬
子犬だけれどきっと
私より先に死ぬ
死んだらみんな
おそらくみんな
雲みたくなって……

渚の雲
見てる私
私のムネ
ドキドキしてる







エントリ4  三日月     ゆふな さき


三日月が光る夜に彼女に告白されたんだ
「好きなのずっとあなたのことを」
ぼくは空を見上げるんだ
その闇浮かぶのは遠いお月さま
ぼくの心はもう飛びたてはしないんだ ずっと

「あの子はいい子だし、君は普通の男で。」
口笛を吹き友人の声。俺も思う、ね、そうだろ?

満月が笑う夜に彼女と一緒に歩いてく
浮ぶ笑み愛らしくてそして鉛のような恋
何もなく欲しいのは黒い浮かぶ雲
あの灯りをただふわふわ消してよ

それでも浮かぶのは遠いお月さま
ぼくの側においでよ あなたの道しるべ






エントリ5       コティー


ほんのちょっと前
今も少し
世界と繋がるのが不自然で

でも必死で堪えて
心地よさを待った
時々 君の歌を聴いた
一度導いてくれたことがあったから聴いてみた
今回はうまくいかなかったけど
またいつか君の歌声を聴いたとき
泣けると思うよ
泣けるときは
もう半分救われてる証拠だったり

君が話したことを今知った
じわり、とした
君の歌があまりにも素敵だったからなんだよ
こうして私がまた何か生み出そうなんてするのはさ
だから
家族から言われた言葉だけど
苦しいときは
明日生きることだけ考えよう
ほら、また何かができた、それが嬉しいこと。



※作者付記: 詩の方は初めてです、また度々送ろうと思います。





エントリ6  星空を見上げて     藤原 けゐこ


北極星に言ってみた

あなたはあんまり遠いので
私にはあなたの400年前の姿しか見えません
今 あなたはそこにいらっしゃいますか?

北極星はなにも言わず
優しい瞬きを返してくれた



※作者付記: ゴロがよいので400年にまとめてしまったけれど・・・本当は約430光年の彼方に北極星はあります。






エントリ7  詩に吹き込めるもの     道人


言葉にならない感情
伝わらない、愛する人への感謝

今生きている自分の存在は
雨音に埋もれる幽かな影

放蕩の挙句に気づいたものなど
後悔の種にしかならない

美しい魂の震え
哀しい耳鳴り
純潔な呻き
意識する乾いた涙

搾り出す、その詩に感情を吹き込め
私の存在を紙片に託す

幻覚も現実も
カオスの中に光を放ち
すべてから
解き放たれる







エントリ8  ねがてぃぶ・しんきんぐ     K.N


春、草木の若さに死を感じ
夏、冴え渡る青空に死を想い
秋、落ち葉を巻く木枯らしに死を重ね
冬、しんしんと降る雪に死を実感する。
日々、鬱々とし、休まることなく
常に不幸を背負い
日夜不安を感じ
素朴な愛に満たされること無く
苦しむことにも既に麻痺し
癒されること無く

あぁ、私は石になりたい
それ許されぬなら孔子、アルキメデス、ルソー...
知りたい。私は知りたい。
どうせ知らぬのなら、何も知らぬ石になりたい
ねがてぃぶ・しんきんぐ
その中で、その私の心の中で
コツコツと音をたてて燃える私の
欲求の炎は
その炎の火花を持って
私を包んで殺さんとす。
お前もか。ブルータス。
唯一信じた私の欲求の炎さえ
無垢な私を裏切って

そうなれば私には
四季の変化に風化し、侵食され
紅葉散る銀杏の木の下で
そっと死ぬことくらいしか残されていないではないか。
主よ、それくらい許したまえや。アーメン。


※作者付記: 春とか、ふと死にたくなったとき「なんでかな」って思って書きました。






エントリ9  月の降る夜     望月 迴


今夜も夜は紺碧で
今夜も町は暗澹で


茜色した月が見下ろす
僕らが謳うエデンの宴

白銀の鎌を振り下ろしては
狂ったような叫びを上げて


今夜も空は紺碧で
町は真紅の夢を見る






エントリ10  マリオネット     マリオが訴える儚さを悟りし者



囚われたくなければ
迸る旋律に酔い痴れよ

沐猴が耳と口と目を塞ぐのは
忌避する現実を受け入れたくないから

清清しい朝に負け犬の野良犬
その面貌が醜いと思うのはお前が回禄の災いに
いつも首を突っ込んでいるからだろう


落日ののプラットホームを
ぷらぷら歩く浮浪者に一度声をかけてみるといい
お前は日々生きる目的の無さに気づき狂うだろう

囚われたくなければ
迸る旋律に酔い痴れよ


はためく白旗にでもなったつもりか
勘違いするな

お前は
その白旗を翩翻と無様に翻す
沐猴に過ぎないのだ


ほら
山手線がお前に手招きをしている








エントリ11  神の痛みを僕は知らない     早透 影


  かあさん 僕はこのままでいいのでしょうか
  教えて下さい
  
  人の気持ちが理解しきれないのです
  僕がおかしいのでしょうか
  
  友達がいます
  でも本当の友達かどうか 分からないのです
  友達の心の痛みが 分かってあげられないのです
  友達は僕の心の痛みを 感じ 泣いてくれます
  でもどうして泣くのか 分からないのです
  そんな友達を 僕は傷つけました
  でも 何も感じないのです
  何故ですか 知る必要は ないのでしょうか
  かあさん 僕はこのままでいいのでしょうか
  教えて下さい
  
  かあさん あなたの子供の頃はどうでしたか
  教えて下さい
  なぜ僕だけ そうなのでしょう
  とうさんや かあさんや ねえさんも
  みんな人の気持ちが 分かるのに
  なぜ僕だけなのでしょう
  
  かあさんは 泣ながら教えてくれました
  僕に 何度も何度も 頭を垂れて
  泣ながら教えてくれました
  無痛分娩 そうだったのですね
  
  これから僕は どうすればいいですか
  このまま生きていても いいですか
  かあさんが悪いわけではなく
  僕が悪いわけでもなく 誰が悪いんですか
  そんなの 無いですよね
  誰が悪いなんて 無いですよね
  
  でもこのまま 僕は大きくなっていいのでしょうか
  人の命の大きさなど 分からないんです
  もし明日 かあさんが死んでも 
  僕は 悲しまないかも知れない
  それが 怖いんです
  
  死んでくれますか
  僕がこの手で かあさんを殺していいですか
  僕が悲しめるのか それを確かめる為に
  死んでくれますか
  
  優しいのですね かあさん
  
  かあさんの首に巻き付けた僕の手
  かあさんは その手を優しく包んで
    動かなくなりました
  かあさんの温もりは消え
  冷たく横たわる かあさんの屍
  僕は 泣けませんでした
  
  ただ 怖くて 震えるだけです
  ただただ 怖くて 怖くて 怖くて
  ただ 震えるだけです
  かあさん 怖いです
  かあさん この僕を タスケテ





エントリ12  残り物     柳 戒人


僕らは踏み出すべき地平を持たない

 国境のパズルで大地は埋まり

 未知の地は失われた

 自由平等がはびこる中を

 不自由に不平等に生きるほかない


 僕らは踏みならす大地を持たない

 「歩いた所が道となる」魯迅は言った

 アスファルトに足跡は残らない

 すべての人はその上をただ通過し

 その足跡が刻まれることはない


 僕らは持つべき希望を持たない

 将来は設計されるものとなり

 レールの上こそが成功の証とほめそやされる

 明日が明日でなくなったとき

 人生は一片の闇を許さぬ蛍光灯の光に包まれるほかない


 僕らがそのすべてと引き換えに手に入れたのは何だったか

 ドアに鍵を掛け

 道行く人におびえ

 札束に屈する日々ではなかったか


 もう火は足を焼いている

僕らに残った最後のかけらが

 僕らの上でうごめく何者かに奪われる前に









エントリ13  高嶺の花     朧冶こうじ


嘘吐きBABY
真っ赤な鞄
手に持って

悪戯BABY
闇色の傘
日に掲げ

誓った永遠?
何ソレだって

妖しく微笑う
PINKのLIPと
薄紅色の爪先が

僕等を呼んでる
清々しいよな
藍の宇宙さ

我が侭BABY
紫の紗羅
身に纏い

意地悪BABY
鼈甲眼鏡で
眼を隠し

僕等を指して
誘うのさ

此処迄おいでと
微笑うのさ







エントリ14  鳴かない蛍は身を焦がした     ヨケマキル


部屋を後にする時には階段には冷えた風は吹いた

坂をはさんで古いアパートの窓には
「波路はるかに」はラジオより流れた

夕立にも濡れたいくつかの洗濯物は風と北に揺れた


遅すぎました


ドアにはさんだメモに誤字は無かったろうか
確かめに再び坂をのぼる気にはなれない


これより季節は はらはらに散るだろう

わかっている

神速に過ぎるだろう
紙よりも薄い幸福の記憶を連れ去るだろう


ひどいことをしたね


新しい靴を買いましたね
新しいかばんを買いました

遅すぎました









エントリ15  シンク     佐藤yuupopic


「胃袋には三十分で穴が開くのだ」
なんて本当教えてくれたあの人は
もう、
いなくて
次は私の番
なんて
やだ
そンなん
絶対、やだ
そこで待っていないで
未だ往く気はないよ
ごめんね
勿論ずっと大好きだけど
お願い
待っていないで
ごめんね、
往けないよ。

喉咽裂けて
血反吐
ぼたりと
真紅の

シンクに
辛苦
と咲かせ
どうか
この
ちっぽけな冴えない私の
深紅の熱よ。
何よりも
匂い立て
どうか、
この世界で一等
可憐であれ

夕焼け朱に染め上げる当たり前の町の風景よ
ありがとう
おまえは
こんなにも美しく愛しい

ありがとう
おまえは
こんなにも、美しく、
愛しい。





エントリ16  いばらの道     有機機械


想像してみて

仲間とばか騒ぎしている飲み会の席

一人トイレに席を立つ

店内の喧噪が遠くに聞こえる廊下で

ふと窓の外の星空に目をやる

どんな気分?

僕は目の前のばか騒ぎが文字通りばかばかしくなって

こっそりと飲み会の席を後にする

店から出るとそこは想像の世界と違い

土砂降りの雨

僕はかまわず外に出る

ずぶ濡れになりながら歩き続ける

でも本当に分かっているのか?

テレビのドラマや映画のように

そんな僕に駆け寄ってくる者など誰もいないんだぞ

それを覚悟して歩き続けられるのか?






エントリ17  変化     マリコ


夏から秋へと変わるにつれて、
あたしも少しずつ変わっていく

駅までの街路樹が色づいていくたびに
あたしの頬も薄桃色に染まっていく

あなたと言葉を交わすたびに
細胞の一つひとつが生まれ変わっていく

鏡を見るたびに
笑顔の練習をする自分が愛しくなっていく

でも思い出が増えていくたびに
明日を見るのが怖くなっていく

弱い自分を実感するたびに
負けそうになる自分を奮い立たせていく

肌に少し冷たい風を感じるたびに
茶色のマフラーの編み目は増えていく

季節が変わるたびに
あたしは少しずつ変わっていく

でも今年の秋は、いつもとちょっとちがう気がする

あなたのそばで過ごす一日は、
今までの100倍くらいドキドキしているから







エントリ18  ゆンべのこと     ながしろばんり


空を見ると
どこまでも
どこまでも
おっこちていきそうで
綿の帽子をかむって
じっと膝の震えを意識していました

肉体は
鬱陶しいが嘘をつかず

線路傍の砂利を見下ろし
どこまでも
どこまでも
お近づきになれそうで
そのままふっと
だれか背中を、
抗えない位置を押してくれんものかと

すんでのところに中央線
精神が髪の毛一本でおれの身体を引く

 昨日消防士に助けられる夢を見まして
 青黒い闇でよくわからなかったのですが
 ただ、夢から醒めようともがいた手は
 目覚めたときには体の下で痺れていて

目の脇をちらちらと虫が走るのです
不意に眠る装置のことを考えたときなんか
で、ふと振り向くと
誰もいなくて

ただ
向こうの屋根の向こうの風景に
貼り付けたような月や太陽があって
世の中がネガになってくれれば
もっと動きやすいだろうにな、という
帰り道、
でした。





エントリ19  帰宅電車     村上かおる


目の前でいちゃついてるカップルを
今夜はほほえましく眺めていた

君たちも幸せになるんだよ。
それにしても、
不細工な彼女だね。て
心の中で語りかけながら
電車を降りた

ホームの人ごみを
泳ぐように歩く

改札の前では
あいかわらずの長い列
だけども今日は頭にこない
みんな愛する人のため
一生懸命働いているんだなぁと
なんだか感動してしまう

割り込まれても
怒らない怒らない
足を踏まれて
ちょっとムッとしたけれど
怒らない怒らない

夜風が頬に心地いい
星の瞬きが目にしみる
生きてるっていいなぁて
しみじみと思ってしまう
アパートの三階
向かって左の角部屋
今夜は明かりがついている

おかえんなさい。

君の声が聞こえたようで
僕は 階段を駆け上がる







エントリ21  ディモーニッシュな夜     紫色24号


夜は…
ディモーニッシュに更けてゆく。

ディモーニッシュな夜は 口笛のような風を鳴らし
爛れた正気にツバを吐く

今、
目の前、
デーモン、
堕りたら…、
魂なんかくれてやる。

いらないんだ。
もうウンザリだ。

酒にも女にもクスリにも爆走(スピード)にも爆音(ノイズ)にも
…そう、暴力にも。
アア、飽き飽きだね。
まっぴらゴメンだ。

右と左で目の色の違う猫ケリ跳ばして
バニラの香りのする天使汚して
目隠しでKATANAぶっ飛ばして
無音と錯覚するくらいラウドなハードコア頭蓋骨の奥の奥スパークさせて
あの世ギリギリまでぶちのめしてぶちのめされて…
脳内麻薬で恍惚としたところで
何一つ変わりはしない。

ディモーニッシュな夜はタールの舌を伸ばし
娼婦のようなやり方で、
醜く崩れたケロイドの心
執拗に嘗め回しては辱める。

だから
こんなディモーニッシュな夜には
デーモンに魂でもくれてやって
死体のように蒼白い、冷えた眠りを眠りたい。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・と、
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・気付けば、

俺自身が
ゼリー状の闇 翼に持ったソイツで
今、
アンタの魂掴んだところ。

悪いね。
俺も喰わなきゃ やってけないから。

ディモーニッシュな夜は夥しい数の凶鳥めいた雲 天一杯に蔓延らせ、
星という星、無表情に窒息させる絶対零度の夜
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は、
ディモーニッシュに更けてゆき
もう二度と明けない。  







エントリ22  月極駐車場     相川拓也


空アリマス
なんて
貧相な看板が言うものだから
上を見たら
確かに空があった
まったく、
バカみたいに高い空だ






エントリ23  会話     凜一


本気なの?

うん。

ぢゃあ、もう、何にも云わないよ。








エントリ24  ゴクフツウ     空人


僕は ごくふつうに毎日を生きている
ごくふつうの人間だ
ごくふつう というのは どういうことかな
と考えて それはたいしたことのない人間だ ということに気づく
だれよりも 速く走れる脚を持っているわけでもなく
だれよりも お金を持っているわけでもなく
また だれよりも不幸な人生を送っているわけでもなく
もし 「望みをひとつだけ叶えてあげます」と言われたら
だれもが願うような 家族が健康でいられますように とか
仕事が順調に進みますように とか
宝くじが当たりますように とか
そんなことを真っ先に思いつく
たいしたことのない人間だ

ごくふつうに毎日を生きている
たいしたことのない人間は
べつにわざとやっているわけでもないのに
自然と まちがいを起こしたりする
大切なことがわかっていながら
どうしてもそれを 大切にできない事情があったり
一時の突発的な感情で 何かをしてしまって
後悔したり
また 正しいと思ってしたことが
じつは どこかでだれかを傷つけてしまっていたり

たいしたことのない僕は
たいした力もないままに
ごくふつうの毎日を
それでも まだ見ぬあしたという世界に
希望やら 喜びやら 思いがけないすばらしいことを願って
生きている

いや

それはちょっと おおげさかもしれないな
ごくふつうの たいしたことのない僕は
いろんなことが自分にはねかえってきたときに
あらためて そんなことを思うんだ
ごくふつうの 情けなさを味わうんだ






エントリ25  love novel ?     暇 唯人


いきなり筆を止めた
心の中に突然生まれたある疑問

なぜお前は筆を動かす?

苦労して一体何の為だ?

虚を突かれた疑問、筆を置いた

好きなのか? 机に向かって何時間も原稿を書いて

好きなのか? 顔も知らない誰かの為に頑張って

好きなのか? 小説が

ああ、好きさ

狂おしいほどにな

だから机に向かえる、嫌いな机に

だから頑張れる、顔も知らない人の為でも

だから―――



眠たくはない、何故か

何かが心を揺り動かし、鼓舞する

そして、止めていた筆を進めはじめた

握られた筆は陽光を反射させ、輝いていた








エントリ26  10 years after…     大介


頭の中で会議が始まる。今日の論題は「10年後」。

今から10年後、僕は何をしてるかな…。
別に10年後じゃなくってもいい。
ほんの少し先、3年でも5年でもいい。
今の、小学校からの幼馴染とはやっぱり、遊んでるかな。
変わらず集まって朝方に釣りしたり、サッカーしたり。
夜中にゲームなんて幼いこととかもやってるのかな。
もう結婚なんてしてるのかな。してるなら誰と、してるのかな。
その子との子供なんかいたらどうしよう。
甘やかしてるのかな。ありえるなぁ…汗
仕事は、今目指してる教師とはいかないだろう。
けど、好きな仕事に就いてると思う。

ずっとずっと、ここで、この街が変わっていっても暮らしていきたい。
今と少し違う流れや空気を感じながら、昔を懐かしく思いながら。
町並みを川原で眺めたり。でも仲間と、親友と一緒で、大切な誰かと
幸せに暮らせていたらいい。親の面倒も見れて…

それだけでいい。

僕が望む幸せは、そんな小さなものです。
でもこれ以上の幸せなんて、ないよね。今の僕には考えられない。
別に収入なんて大してなくてもいい。
大切なものが、それらが守れれば…
そのとき、半端者の自分を認めてやりたい。

自分が言いたいことを言い終わり、一息つく。
そこで、ふと目が覚める。昨日の未来がそこにあった。





エントリ27  カサブタ     木葉一刀


女を買った。
何処ぞの高校の制服など着ているが年は尋ねなかった
兎に角、寂しさを紛らわせてくれと言うとホテルへ誘われた

風呂に湯を張り二人で沈んだ
こぼれた湯を見て傷口が疼いた

あの子との風呂では湯はこぼれなかった

疼いた傷口をさするかのように
女の背中を胸に抱き手を合わせ水鉄砲を放った
水流の帯がビュッと音を立て壁にあたり霧散した

「すごい、どうやるの?」

記憶の声と女の声が一つになって聞こえた
途端、押さえ込めていた感情のタガが外れた

涙がこぼれた
嗚咽が漏れた
女が気づいた

合わせたままの私の手を両手で抱き

「どうするの? 教えてよ」

傷口には触れず、優しく促した
優しい声で私は我を取り戻した

この手を離れていった息子は
もう戻らない
諦めは付いていた筈だ
私は冷静だ

そう言い聞かせると落ち着けた気がした

女の手を握り返し
水鉄砲の撃ち方を教えた

背中に落ちた滴より私の気持ちは冷えきっていた






エントリ28  野蛮の血     大覚アキラ


野蛮でありたい

粗野ではなく
無骨でもなく

無銘の日本刀のように
ただ
光り輝く
野蛮でありたい






エントリ29  チャイニーズ ロックンローラー     イグチユウイチ


従東的國家 烏鴉的群 來臨


烏鴉吃光 大地的成果

唱下來到街 黄色的歌


用紅的子彈 撃落!

用紅的子彈 撃落!

撃落!

撃落!

撃落!



※作者付記: 和訳は以下のイグチ個人HPで公開しています。(Japaneseをクリック)
http://www.geocities.co.jp/Bookend-Kenji/8364/cr.html






エントリ30  色のない季節のスライドを、ただショウウィンドウを眺めて通り過ぎる     イタリアン・ラッシュ


恋もなく 季節が過ぎて また涙






エントリ31  ラジオスターの悲劇     ぶるぶる☆どっぐちゃん


そして辿り着いた摩天楼の屋上から人々は
安っぽい空へ白黒クロマキー落ちながら
地下鉄がくるくると回るように壮大な曲線で永遠を描くように
絵を描く絵を描く絵を描く絵を描く
オールドイングリッシュマン イン ニューヨーク
絵を描く絵を描く絵を描く絵を描く絵を描く
絵を描き続ける





エントリ32       べっそん


勝手に足が、僕を旅へいざなう。

列車に自分を乗せる。


レールは、どこかへ続いてる。

そう・・・  どこかへ。

自分発、どこか行き片道キップ。


歴史は、過去ではない。

過去からずっと走ってきて、

今を通り過ぎ、

終わりの見えない未来への、

軌跡。

それ全部があって、始めて僕の歴史。


旅とは、歴史をつむぐこと。

途中で切れてたり、色落ちしてたり、しみがついてしまってる過去に、

いずれ過去になるこの瞬間を、

まだキップしか持ってない未来を・・・


その自分だけのフィルムの中に、

”時代”を再発見する。

 

旅をするということは、生きるということ。