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第48回詩人バトル

※紫色24号さんの「暗黒郷通信」の文字数に誤りがありましたので修正いたしました。(2005/02/09)


エントリ作品作者文字数
1白スギズ 熱すぎず べっそん71
22005年元旦に思う事岸野 雅也167
3ピアニシモゆふな さき138
4幸せへと街歌 結夢94
5ネバーランド香月朔夜222
6ユリルアミルヨケマキル※データ無
7春を待つ千早丸285
8「。」→「、」人々308
9(作者希望により掲載終了しました) 
10月のカケラ月子162
11不確定理論と予言影山影司301
12暗黒郷通信紫色24号2400
13もてない君蒼樹空844
14本当の気持ち木葉一刀38
15連綿カイコがブリを焼く日出野テルミ744
16オス有機機械191
17国道730928号線佐藤yuupopic567
18少女i(口述筆記による)ながしろばんり267
19メロディライン歌羽深空292
20すくう大覚アキラ236
21またあしたぶるぶる☆どっぐちゃん301
22迎えにゆこう早透 影607
23 In the Bed 空人 258
24 スタンドアロン コンプレックス イグチユウイチ 308
 
 ■バトル結果発表
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エントリ1  白スギズ 熱すぎず    べっそん


白スギズ、寒スギズ・・・

足下より水溢れ、シブキ氷り、肌をかすめつ舞い、

天へと堕つ


空、 very very blue...



ナガレトマラズ・・・

ココロ ナガサレズ



白スギズ 青スギテ・・・


白スギズ、熱すぎず 





エントリ2  2005年元旦に思う事   岸野 雅也


新しい年がやってきた
ただの1/365ではない1日

何かにすがるかのように
だけど希望いっぱいに願いをかける

災いが幸いに変わりますように…
笑顔が絶えない年になりますように…



新しい花が咲きますように…

家の庭の片隅にも
災害で荒れ果てたかつて花咲き乱れた場所にも
血を流した戦いの有った場所にも

そして
世界中の人々の心の中に



優しさが世界を包み込みますように


作者付記:2005年が良い年だったと思える年になりますように…!





エントリ3  ピアニシモ    ゆふな さき


弱音ヒビク歌の空

        とおくに飛ぶ鳥 ひかる影

ピアノは黒くツヤびかり

        夢はとおくに 流れいく

青い空は墨の色

        今日こそ飛ぶのは窓の下

〈あなたはどこへも行けないし〉
〈一緒に生きていくしかないの〉

殺しちゃいたいな

        ゆるしてくれる?





エントリ4  幸せへと
   街歌 結夢


小さな 体で
大きな 背のび

もうすぐ キミの元へ

幸せへの 第一路

小さな 指で
大きな 夢を

もうすぐ 辿りつくょ

幸せの  第一糸

小さな 足で
大きな 明日を

もうすぐ 乗り越えるょ

幸せへの 第一歩





エントリ5  ネバーランド    香月朔夜


金色月が夜空に張り付く
四角い建物
ぴかぴかネオン
ゆかいな音楽 止まらない
ここはネバーランド
眠らない世界
 
仲間の笑顔が溢れ出す
楽しいおしゃべり 永遠に
飽きない 尽きない 楽しい時間
赤信号でも恐くない
ここはネバーランド
終わらない世界

陰る月に渦巻く雲が映し出す
重たい建物
あせた光
うるさい雑音止まらない
ここはネバーランド
眠れない世界

他人の涙が見え隠れ
合成音が繰り返す
意味ない 虚しい くだらない時間
遮断機なんて下りてこない
ここはネバーランド
終われない世界





エントリ6  ユリルアミル   ヨケマキル







まったく新しいタイプのチフス菌が発見されたと
ラヂオのニュースで言っていた




<ユリルアミル>
      ヨケマキル




ボクのカビ臭いアパートの部屋に
今日もボクの女の娘 ユリルアミル は
いつものように白い服を着てやって来た

そして植物のような声で
「爪のチアノーゼが治らない
ナニカの悪い病気でしょうか」
などとボクに聞いた

ボクにはわかるわけもないので
いつものように無視した



ガタガタの鍵盤上の性的行為

ユリルアミルはそれよりもっとガタガタの声で
「ゆるしてくださいゆるしてください」と

体が繋がっていても
それはセックスでは無い

ボクはユリルアミルの体を、心を、命を否定するため
いつも服を着せたまま彼女を犯した

ボクは史上最高のエゴイズムを彼女に捧げ続けた

僕はユリルアミルの体を見た事が無い



ある昼下がり

すべての物事の正体が
かなしく、にがく、露見していくような光があって
その光の中で
ユリルアミルはこんな事を言った

「うす白いぼんやりの中で思い出す
心が不自由で体が自由なあなたを

いつも見ていた事を」


ボクは新しいチフスに冒されたユリルアミルの腐った体を夢想した







エントリ7  春を待つ   千早丸


冬は嫌い
寒いから

手が冷たくて、かじかむ
足が冷たくて、眠れない
身体が冷えて、動けなくなる

冬は嫌い

手が冷えて、足が冷えて、身体が冷えて
脳味噌までも凍りつく
だって、うまく思考が廻らない
だって、全部が「おっくう」になる

だって、空が澄んでるのに
だって、鳥が群れてて賑やかなのに
だって、星が遠くまで見えるのに
だって、夜明けが長くて綺麗なのに
涙が出るほど、綺麗なのに

冬は嫌い
だから布団に包まって
ゆるゆるゆると、寝てしまおう
小さく小さくちぢまって
夢にまどろみ、春を待とう



でも、春も嫌い

木のめ芽吹いて若葉で飾り、花があふれる季節なのに
何処までだって見に行きたいのに

あったかすぎて、眠いのよ





エントリ8  「。」→「、」    人々


。。。。
頭の上には澄んだ青空。
地上では自動車が排気ガスをばら撒き。群れを成している。
冷たい朝の空気が。自転車をこぐ俺の頬に針を刺す。
日常のワンシーン。
はまり損なったギアチェーンの音が。自分を更に不快にさせた。
意味があるのか。
世界が追い求めた謎、闇に包まれた死という1ページ。
空はただ青く。
天国の先に浮かぶ人工衛星。
なんだ。
俺はなんだ。
俺はどこから来て。どこへ行くんだ。
工事現場の砂利道にタイヤを滑らせ。
自転車は俺の隣でカラカラと鳴く。
俺の自転車は死の1ページを開いた。。。
生意気に。俺より先に。
深紅な体液は粉砂に混じれて更に深く、
膝小僧を染めていく、
、、、自転車よ笑ってくれ、
生意気に、俺は生きている、、、、
、、、、





エントリ10  月のカケラ    月子


満月は、美しい。
満ち足りて、欠けるとこなく、明るい。
半月は、可愛らしい。
半分を、照れて、隠して。
三日月は、儚くきれい。
ほんの少しだけ、心を開いてる。

わたしは欠けた月。
満月でも半月でも三日月でもない。
決して満ち足りることなんてない。
隠すのは照れているからじゃない。
心は開けない。

月のカケラを。
わたしのカケラを。
どうか。
どうか。





エントリ11  不確定理論と予言     影山影司


 予言書によると破滅と救世主は訪れたらしい
 今日も明日も毎日普通の日常だというのに

 予言書によると世紀末がヤバかったらしい
 世界中でお祭り騒ぎがあっただけなのに
 
 予言者達は口を揃えて言ったんだ
 「新世紀は新世界の時だ」
 俺の手には今も変わらず銃がある
 新世界は裸足で逃げてったのか
 あんなに金を積んだのに

 教主は今日も変わらず言うんだ
 「三年後が破滅の時だ」
 妹の顔は相変わらず白く
 静かな吐息で喋るんだ

 布教に勤しめば天国行きだと
 予言者も予言書も教主も言ったんだ

 鉛弾を飲み込んだ教主は
 天国へ行けただろうか
 目を覚まさない妹は
 天国へ行けるだろうか
 赤い名前を背負った俺は
 地獄へ堕ちるだろうか





エントリ12  暗黒郷通信    紫色24号


ここは詩人の入口
ホラ そこのドア 開けてごらん
また ドアだから

開けても 開けても ドア

開けて閉めて開けて閉める
後ろを振り返ってはダメだよ
そこには…
後ろを振り返っている自分がいるから

ああ 視えてきた
…詩の胎児のパレード
視える 視える 視える
本当は目なんかないのに

発作なんですよ
しつこくチラついてジャマくさいから
書き留めるだけのことで…

なめらかな
あまりにもなめらかなアルペジオは流星の口笛
空想の猫を起こすための合図
始まるよ
−273℃のファンタジー

ピエロ クラウン アルルカン
泣いて 笑って 仮面をつけて
おどけて 沸かせて 夢の国
玉乗りゆらゆら ゆらゆららん
不思議なキミらのマゴコロは
きっとそこにはないのだろう
どうせどこにもないのだろう

デ・キリコ デルヴォ ダリ マグリット
シュルシュルシュールの夢見がち
原色の白昼夢
狂乱のカーニヴァル
見えたかい?
見てしまったんだね
変人をきどるより凡夫の皮をかぶろう
その方がずっとシュールで素敵
素敵で無敵 無敵で知的
知的で痴的で血滴でシュールな
お絵かきしよう

彼女はサッフォーのような美しいスミレ色の髪をしているけれど
実は脳ミソがスパゲッティーなんだ
そういうボクも素麺だけどね

風はいつだって
生ぬるい日常をゆするナイフ
強く吹け
急所を貫くように吹け
優しく吹け
首筋に刃をあてるように吹け

タチの悪い酔っ払いを
冬の公園に放置しよう
タチの悪い美意識を
夏のドブ川に投棄しよう
あー やめて
放置しないで 投棄しないで
酔って酔うほか この世で一体何が出来るの?
さて 今日も公園では酔っ払いが体温を失くし
近くのドブ川では美意識とやらがヘドロ状に泡立ち
その様をうっとりと眺める
エセ詩人のネジを締めてあげる奇特な人はやってこないのでした

もっと斬新な水が飲みたい
もっと もっと…
一口ふくむと吐きたくなるヤツ
それでもすぐまた飲みたくなるヤツ

論理脳を閉じようと右目に眼帯をしてみました
黒い眼帯です
自分で言うのもなんですが
カルトスターに勝るとも劣らないほどクールです
これで絵空事がたくさん浮かびそうです
空想だけで
人生を二周半はから回りできそうです

開けても 開けても 入口

ここは詩人の入口
トントン 詩人さん 詩人さん
ガラクタはいりませんか?
はるか彼方の惑星から
光の河を流浪して
気付いてみれば詩人の星
御代はちっともかかりません
その代わり…といってはなんですが
光る星になってガラクタ作りの手元を
明るく照らしてく…アッ 痛っ!
足はさまってますから…
だからタダですって… 御無体な…

アア 耳が破壊されるようなオンガクが聴きたい
脳が沸騰するようなオンガクが…
ノヴァのリズムで フレアのメロディ
そんな音符で サイケ柄の
ねじれ曲がった夢が見たい
アア 耳にテキーラ流し込まれたようなオンガクが…
脳に宇宙を不法投棄されたようなオンガクが聴いてみたい
…ジョイントみたいな詩でもいい
遠く高くぶっ飛べるヤツ
何度も読むと
心も体もダメになるヤツ

スローモーションで理性が崩壊していくのを
脳学者の目で見ている
どうやら脳内物質が乱交パーティーをしている模様です

天国と地続き 見晴らしのいい崖っぷち
キミをね
出来るだけ不安にさせて
可能な限り不安定な場所に立たせて
後ろからポンって背中を押してやりたい
どーだい キミときたら人形みたいに手足バラバラ
堕ちて昇って また堕ちて
価値観は二転三転 また回転
ほら 常識だとかいうつまらないものは
すっかり死んでしまっただろ
頭ん中 お花畑だろ

妄想の神様に張り手をくらわせて
あらゆる全てを いわゆるおどしで自供させる
泣き落としはしない
だからカツ丼も出さない

探偵狂いのあの娘は
アーモンド臭のする死に憧れていたし
殺し屋にぞっこんのあいつは
飛び道具にやられちまいたいと心の底から願っている
そう
ソレもいわゆる愛だね
愛だろ?
愛なんだよ

ええと
濫りに冗漫で
徒に実験的で
そこはかとなく思わせぶりな…
なんていったっけ
…そうソレ
プログレ
うん 嫌いじゃないね
たまには すごく聴きたくなるね
…三年にいっぺんくらいかな
やってみたいね あーゆーの
いや 楽器は弾けない
必要ない
違うかたちでやりたいね

銅にふく緑青のような 美しい悪事を働こう
心中を夢見る恋人たちのような 黄金の病を患おう
宝石を…
心の宝石を強奪し
フェイクパールの光沢を持つ
希望やら良心やらのことごとくを血祭りにあげ
高熱の のっぴきならない色彩の中で
ひねもすよもすがら
永遠の愛と孤独を知ってうなされよう
銅にふく緑青のような…
心中を夢見る恋人たちのような…
悩ましい薔薇の大輪を 世界の中心に咲かせよう

真夜中にしか薫らない 夢幻の百合が
閉じて開いて 開いて閉じる
それは途轍もなく淫靡な光景で 崇高な光景で…
それゆえ銀河を孕もうと身をくねらせる
マザーそのもののよう

アレに色はない
あり過ぎてない
しいて言えば クレージースパーク
目ン玉に
まともにグーをくらった色

ここは詩人の入口
ノブはまわらない

邪な魂にしか通じない言葉で喋っているのじゃないよ
年齢も性別も 瞳の色も心の器量も…
委細かまわず 聞いて流して欲しいんだ
そこからうまれる反響音に 耳を痛めてみたいから

終点を決めるのは私じゃない
それを決めるのは線路なのだと
ようやく気付いた
車窓は無表情
車内は乱痴気騒ぎ
レトリカルまみれ 有象無象の群れ
トランスファーからこっち ずっとこんな調子
くり返そう
終点を決めるのは私じゃないし
終点が出来るのはきっとまだずっと先のこと

たずきではなく書く人は
みんなそうだと思っていた
…魔物を鎮めるために書く…
どうやらそうでもないらしい
この身裡に
もしも花があふれたら
宝石があふれたら
どんなにか愉快だろう
見当たらないんだ
どこ探しても
偽悪に染まった暗黒郷で踊り呆ける火の精しか…
吐息で消し飛ぶちっぽけな 炎の形の異形しか…

いえね 発作なのですよ
凍りついてシャリシャリした
陰鬱な魂のひきつけなのです

…………
ここは詩人の入口
開けたとたん出口





エントリ13  もてない君   蒼樹空


「ねえ、鼻毛出てるよ・・・。」

「いや、だからさあ、俺が言いたいのはそんな簡単に、チューハイのグラスを片手に持ちながら、斜め45度を見て、パンパンの奥二重の瞳で、『幸せになりたい・・・』とか、呟くなって言ってんの。人間の欲望なんて、際限がないんだから、どこまでいっても欲してるわけだよ。今、欲しいものが手に入ったら、また、別のものが欲しくなるわけだろ。だからといって、無欲になれとか、滅私奉公しろとか言ってるんじゃないよ。この競争社会の世で、そんな化石みたいな思想でいたら、負け組まっしぐらだからね。そもそも、ブッタは“無欲は無い”って言ったんだ。それなのに、ちょっとだけかじった奴が、『俺は無欲だ!釈迦になった!』なんてことを言い出すわけ。でも、あれはただ単に“やる気”がなくて、何もかも面倒臭くなってるだけだからね。草吸って、ボブ・マーリーが言いたかったことはこれだ!とか叫んで『悟りを開いた』なんて言ってる奴はもってのほかだよね。大体そういうことを言う奴はアマチマリみたいな顔してるんだけどね。話を元に戻すよ。少し辛らつなことを言うけど、今、生きてるこの現世に“永遠の幸福”はない。確かに刹那的に幸福を感じることはあるよ。でもそれはしょせん泡沫だよね。それをさあ、文化よりのちょっと微妙な、ジブリとディズニーが死ぬほど好きです。生まれ変わったら魔法使いになりたいです。ちなみにペットを飼うなら『トトロ』です。みたいな女子がね。『この幸福が永遠に続けばいいのにね・・・』なんて、潮風で髪をなびかしながら言うのよ。馬鹿なことを言うなと、幸せは泡沫だからこそいいんだと、消えてなくなるから、僕達は次を求めて歩いて行けるんだ。と、その泡沫を凝固しようとする。その考え、その行動自体が、虚しく、愚の骨頂だと。でね、つまるところ何が言いたいかというと、人間は永遠の幸せをつかめない不幸なもので、永遠の幸せとは、生まれる前と死んだ後にしかないということだよ。」

「うん。だから、鼻毛出てるって・・・。」






エントリ14  本当の気持ち     木葉一刀


愛していると言うのなら
絡めた視線で気づいて欲しい
本当の気持ちに

嘘があることに





エントリ15  連綿カイコがブリを焼く   日出野テルミ


ブリ照り焼きの日が暮れます
どこかでまた産声が上がっている
のでしょうが
わたしの周りでは 今
これといって生産的な現象もなく
ブリ照り焼きの日が
モノクロコピーのように
暮れようとしています
頭のうしろではキャロル・キングが
織姫となってつづれ織りの真っ最中
織りあがった暁には
よひょうさんが
町に売りに行くと言っています
もう 暮れてしまうというのに
あのね それは彦星の役目だから と
教えてやらなくてはなりません

ブリ照り焼きの日が暮れます
どうしてこんな甘っ辛い魚が
おいしいのでしょうか
ブリ自身としては
きっとどんな味つけでも
納得しないのだろうな と
そんなことを思いながら
わたしはどこまでも動物です
じゃまな乳房をふたつ くっつけて
それをご丁寧に覆い隠したりして
甘辛いブリをおいしいと思っている
へんな形の動物です
明日にはおそらく
コンソメ味のベーコンとキャベツあたりを
おいしいと思っているのでしょう
際限が無いのです
動物ですから

ブリ照り焼きの日が暮れます
あのひとはどうしているかな と
どさくさまぎれに思ってみたりして
雑念だらけの味噌汁は だから
にごり模様です
連綿めんめん めん めん と
ひたいの真ん中から
ゆるい生糸吐きながら
甘辛いタレをつくり続けるわたしは
どうにもカイコなのでした
そのうち脱皮でもするのかも
しれません
でもやっぱり際限が無いのです
動物ですから

ブリ照り焼きの日が暮れます
最近どうも
明けるよりも暮れることが多い
そんな空には
これ見よがしにブリの皮でも
投げてやります
無礼な動物らしく
四の五の言わずに明けやがれ と
啖呵も切ってやります

それにつけても

ブリ照り焼きの日が暮れます
暮れるといったら暮れるのです
暮れてください今日のところは
際限が無いのです
自分の糸にからまってはもがく
きわめてあきらめの悪い
動物なものですから





エントリ16  オス    有機機械


毎朝の通勤の国道

ガードレールに供えられた花束

僕は毎朝そこで祈りを捧げる

そこは10年前に同級生が死んだ場所

でも僕が祈りを捧げる理由はそれだけじゃない

彼は深夜、高校の先輩に呼び出された

女友達達が遊びに来るからと

そして彼はオートバイでガードレールに突き刺さった

彼は僕自身

彼は僕達自身

だから僕は祈りを捧げ続ける

女を求め

外に飛び出し

そして死んでいく

僕達の人生にそれ以上の意味なんてあるのだろうか





エントリ17  国道730928号線   佐藤yuupopic


わたし。
には
もう
帰る
道なんて
ない、
なんて
勝手に
思い
込んで
いた
けど。

「くにのみち」
て書くくらいだから当たり前なんだけど
ソこかしこに国道が通っている、
おかげで
わたし、
そン中から一本選んで
高速に合流する上がり口で
車。
拾ッて
どうやら
うちに
帰ること、
出来そうだ


何だかもう
すっかり
いろんなことが思い出せなくなってしまってから
あきらめたり
投げやったり
いろんなモノをうち捨てて過ごしてしまって
そんなふうにしているうちに
随分たってしまって
こんな処まで
とうとう
漂着してしまった

ちら、とアタマ
よぎる
(夜霧の向こうみたい
 本当のこと
 どれも
 不確か)
車のライトに時折照らし出される看板の文字みたく
浮かんだ
わたしの名前
も実際はわたしのじゃなくて
他の誰かのモノやも知れない
そんなふうに呼ばれていたような気が
ちっともしないから
でも
それ自体を
忘れてしまっただけと云うのが
真相やも知れない

(そんなン実際どっちでも好い
 もう
 全部
 過ぎてしまった)

けど。

でも。

今朝起きたら
不意に、
本当に、
不意に。
理由はわからないのだけれども
戻るべき処、
あるよ、な気がして
高速に合流する上がり口で
車。
拾ッて。


心許ない身体
と一緒に
名も知らぬ
鳥。
いっせいに
はばたき
群れて向かう方へ

もし、
本当に、
万が一で好いから。
誰かがわたしを
待っていてくれたら好い。

酷く怖い。
でも、

わたし、
730928号線を
帰る。





エントリ18  少女i(口述筆記による)     ながしろばんり


どんすかどん どんすかどん だんどん
どんすかどん どんすかどん だかどん
どんすかどん おんばざら だどばん
どんすかどん どんすかどん だかどん

究極究明永遠少女は世界のどこかで
完璧造形眉目秀麗の潤みを揺らす
大国一芥傾国絶後の美貌に萌えて
三界四海の海空山風一声に吼ゆる

複素数[i]は厄体免除で不安に浮かび
快適言語の下位的幻素に身をくらませる
ウザくて嘯々ヤバくて焦々二人で居ると
マイナスアルファー足すこと災厄もう止まらない

どんすかどん どんすかどん だんどん
どんすかどん どんすかどん だかどん
どんすかどん どですかでん だだどん
どんすかどん だん。





エントリ19  メロディライン    歌羽深空


オレンジラッパが高鳴って 青色の幕があがるのさ
飛ぶ雪よりも軽快にストーブの火は空高く
目的地までは遠いから パレードドンパン MEROディライン

セピアな車が連れてゆく 緑の明日に乗る前に
流れる風と思い出す 声のトーンはそのままに
上からリズムが落ちてくる それを数えて メロDAYライン

ベージュの窓が感じてる 紫が続くその次を
寝転ぶ夢は今以上 背中の糸を確かめて
呼ぶ声よりもまろやかに しみこんでゆく メロディLINE

アンダンテとはよく言って
可愛いあの子も踊りだす
届いた頃にはきっともう
手遅れなのかもしれないが
雲切れ雪去れ露払え
耳から聴かせるメロディーライン
も一つおまけのメロディーライン





エントリ20  すくう    大覚アキラ


救う

掬う

なぜ同音なのでしょう

溺れかけの金魚を
掬い上げて
救いました

いやいや
待てよ
金魚が溺れるわけがない

慌てて水に戻したら
金魚は一目散に逃げました

薄ら寒い私の首筋には
救ったはずの金魚が巣食って
まるで襟巻きのように
ぐるぐると首筋を回遊し
不細工な尾びれで水を弾く音が
耳障りでならないんです
しかも
襟巻きみたいに温かくはないので
今日みたいに寒い日は
身体中が凍えるようです

そうか
寒いんだね

耳元で誰かがそう囁いて
首筋の金魚を
そうっと掬ってくれました

掬われたのは
私で
救われたのも
私でした





エントリ21  またあした   ぶるぶる☆どっぐちゃん


さまざまで
ばらばらな
いろあいの
かけら

おはなしをしよう

きょうはもうつかれた
ながくあるいたからつかれた
あしたはもっとたくさん
あるかなければならない

さまざまで
ばらばらな
いろあいの
さかな

さまざまで
ばらばらな
いろあいの
とら

おはなしをしよう
おはなしをしよう
おはなしをしよう

かえるべきところにかえっても
たどりつくべきところにたどりついても
あしたはもっとあるかなければならない
あしたはもっとたくさん
あるかなければならない


さまざまで
ばらばらな
いろあいの
みち

さまざまで
ばらばらな
いろあいの
まち

だきしめよう
おはなしをしよう
おうたをうたおう
あしたはもっとたくさん
あるかなければいけない

おはなしをしよう
おやすみ
またあした
おやすみ





エントリ22  迎えにゆこう   早透 影


  
  迎えにゆくんだ きっと戻ってくるだろうから
  勝手に出ていったなんて 言っちゃだめだよ
  タバコの煙り なんとかなんないかな
  今日は呑んじゃだめだよ 人の変わるお酒なんか
  
  迎えにゆくんだ きっと帰ってくるだろうから
  嫌みな奴だなんて 言っちゃだめだよ
  そんな酒癖 なんとかなんないかな
  今日は言っちゃだめだよ ありもしない嘘なんか
  
    誰が 誰を 想っているのか
    誰が 誰の為に 生きているのか
    
    二人は言えるでしょ
    仲良くなれるでしょ
    ここに居る僕は 何の為に生きてるの
    
    短くなった蝋燭を
    吹き消すのに どの位の力が必要なの
    僕が フッと吹けば 消えるよね
    でも僕は火を点けれない 子供だもん
  
  父さん行くよ 早く 早く
  駅まで 駅まで 迎えにゆくよ
  駅まで 駅まで 駅まで 駅まで
  ほらほら 早く ほら早く
  
  あったら言おうね 言ってよね
  父さんが 母さんを 大好きで
  僕が そんな二人が 大好きで
  きっと 母さんも 僕らが好きで
  きっときっと 戻ってくるから
  迎えにゆこう 迎えにゆこう
  
  
    もうあれから 何年たった
    あの時 それきり 何年たった
    あれきり 僕は 何かを 何を
    知らない 知らない
    シラナイ
    タンナルカタワノ
    オトナニ
    ナッタ





エントリ23  In the Bed   空人


どうかな?

 どうかな、って?

いや、うまく泳いでいけたかな、と思って

 さぁ、どうでしょう

だってさ、たくさんいるんだよ?

 そうね

あれだけいれば大丈夫でしょう

 1つでいいんだもんね

そうそう



 でも、ほとんど死んじゃうのよ

そうだね

 けっきょく、競争ってこと

まだ始まってもないのに、ね

 もし、他の1つだったら、わたしはわたしじゃないのかな?

どうだろう

 もし、他の1つだったら僕は僕じゃない?

どうかな




 いま、どのあたりだろう

最終コーナー?

 カーブなんてないわよ

そうか

 ううん、やっぱりあるかもしれない

そうだね





 おやすみなさい

おやすみ





エントリ24  スタンドアロン コンプレックス    イグチユウイチ


母さん、へその緒を 僕に再接続して下さい。

このままじゃ、無重力の彼方に飛ばされてしまいそうさ。
身体中に接続を あつめて、
軽薄な この僕を どうか しっかり つないでいて。

臆病な僕は 千手観音のように 両腕を伸ばし、
わずかな友人達を さらに 接続してまわる。
恋人とは ダイレクト プラグイン。強く、身体を結ぼう。
大切なのは 接続の数ではない、と思っていたい。
お願いさ。守って下さい。
どうしようもない、この僕を。

つながりの向こうに光るのは、
50億回線が結びあう 曼陀羅の宇宙だ。
あそこから、絶えず 風が吹いてくるのだ。
それでも 僕の結合部は 温かい。
依存は、いつも 僕に優しい。

どうか、
いつまでも かばっていて下さい。
いつまでも、この僕を。