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第81回詩人バトル

エントリ作品作者文字数
1消えた夕焼け小焼け待子あかね232
2始点ぽえぽえふぁいぶ(ピンク)368
3パスポート鈴木70
4その日の映像の予感霧一タカシ404
5心の扉について(1)mizuho.y1088
6真夜中の少年桜はるらん496
7CON・CON柿坂鞠211
8びすとろ ぴえろ紫生684
9凍鶴岡崎龍夫315
10矛盾或る水無月305
11ノヴェンバー・ステップス大覚アキラ161
12遠い親戚Tsu-Yo187
13少女kikki260
14綿花橋ヨケマキル207
15黒猫のビビトノモトショウ188
16八面体モナリザぶるぶる☆どっぐちゃん911




 


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エントリ1  消えた夕焼け小焼け    待子あかね


夕焼け小焼けはやさしいね
夕焼け は涙色
夕焼けは 涙

ふたりで見とれる
ふたりでこころがやさしくなる
いつもいつも みれるといいなあ
夕焼けは 涙色

消えた夕焼け小焼け
見とれていたのに 消えてしまった
確かにあった
それは 間違いではない
確かにあった

コーヒーが飲みたい
お気に入りのスターバックスのあの席で
あんたとふたり
コーヒーが飲みたい

消えた
消え


コーヒーが飲みたい
とびっきり甘いコーヒーが
とびっきり甘いコーヒーが

消えた
消え


夕焼け小焼けはやさしいね
なんて ね
うそ ね

うそ


え た





エントリ2  始点    ぽえぽえふぁいぶ(ピンク)


アルコールのせいで腕の内側が赤い
トイレの鏡の前で舌を出す
案の定、狡さ、と舌に書いてある
毎度のことなんで
もう慣れました
もうちょっと酔っ払ったら
なにかわかるかもね
鞄の中の寂しさを見せ合って
せつなくなるくらい泣けよ
そこから始まるんでしょ

夜のあいまいさの中で
無責任な私の持論が闊歩する
できれば次は
キラキラした飲み物を下さい
宝石みたいに
一瞬の幸福ならば

カヌーで世界一周を目論んだ金曜の夜
今週末はちょっと用事があるんだ
僕はいかれないよ
ごめんね

一人、カヌーを漕ぎ出す
口笛をでたらめに吹いて
静かな波間に溶けるように
水を進む
神様議論なんて
いまさらいらない

世界の始点はどこか
手に手をとってみんなが
酔っ払いながら
世界の始点を探しているけど
あと何秒かで全部、忘れるよ

私の恋人がカヌーに手を振る
もう帰れないよ
酔っ払いの一人が
始点が見つからないと
海岸で号泣している







エントリ3  パスポート    鈴木


近所に大国という名のラーメン屋がある
線を一本たしたら天国になった

天国さんよ
これでご近所さんだなあ

今から一緒に天国にラーメン食べにいかないかい






エントリ4  その日の映像の予感
    霧一タカシ


時間が歪んでいく。
いろいろな街の映画が時間になる。
時間の漫画が映像を作っていく。
いろいろな夜が本屋の街を勉強させる。
何かから勉強して小説にする。
夜の悲観的な歌が歴史を何かの本で攻撃する。
勉強の街を作っていく。
何かの予感を操る。
熊が何かを作っているような絵を描いた。
その映画が何かの作業を街に描く。
町が時間で何かをする人に歩かせる。
いろいろな店が何かの商品を売る。
いろいろな人の話を聞く。
街の映画が雑誌に載る。
その夜は時間の映像が作られた機械を知る。
いろいろなことがあることをこの街で僕は知りたい。
世界の夜が自信のある漫画を描かせてくれる。
何かの予感は時間の映画を記録にする。
時間のある店がおいしいパンを売っている。
いろいろな絵のある部屋で本を投げ捨てる。
僕は新しい布団で寝る。
いろいろな何かの時間を過ごす。
いろいろな人の何かの表現を絵に描く。
その街を歩いていく映像が残る。
何かのことを言ったのかノートに書く。







エントリ5  心の扉について(1)    mizuho.y


【心の扉について(1)】

***わたしはわたしに問います。その行動を行うのに最適な顔で開けて出られる扉はどこですか。***

答える時間は、瞬時。

そう、つまり、考えている時間なんてないってこと。

だって、会話してる瞬間はみんな立ち止まって判断したりしないじゃない?

わたしの丁寧で抗わない言葉と笑顔はそのために常備されている。

なぜって。

対話が凍結されてしまう人との関係性がこわいから。

例えば、怒りという否定。あなたはわたしの気持ちをわかっていない受け入れていない、という相手側の主体からの対面するわたしへの否定的反応。

言い換えれば、「(そんな反応をするあなたを)拒否します」という相手の意思表示。

***拒否を回避する回答を答えることのできる扉から選択した言葉と笑顔を送信します。感情は削除します。相手の希望するわたしには不要なものですから。***

そう、心の扉は、ひとつではないのです。

心の扉について、確実にいま言えることは、それは感情出力レベルによっていくつも分かれて作られ存在してる、っていうこと。

そして、それが、感情出力レベルを瞬時に使い分けるひとりのわたしだということ。
そんなの当たり前でしょう?

***そう、そこでいつも、「相手の希望の顔からの扉」じゃなく「わたしの感情からの扉」から出られたら、普通***





わたしは、出られない。
自分の感情からの扉から。
それは、相手から否定の、拒否の回答が返ってくる、相手の主張というわかってくれないとあなたと要られない、居たくない、あなたは必要ない、という結論を招くことを知っているから。過去の経験として、そう学習しているから。





誰かが悪いわけじゃない。みんな、そのようにしか在ることが出来なかった辛さのルートで生きて自分以外の人達といられかなかっただけ。正解なんてないわ。そこには関係性があるだけ。脳の病気に決まっているじゃない。脳で判断しない人間なんていないんだから。
ごめんなさい。傷つけるつもりじゃないの。本当よ。わたしはわたしで在りたいだけ。

けれど。
だから。
わたしは感情の混ざらない扉からしか、出られない。





だって、みんな、怒るでしょう?
そんなのあなたの勝手だって。そんなわたしは必要ないって。言うでしょう。言わなくても、そう、行動するでしょう?

あなた以上のわたしなんて、要らないでしょう、そんなわたしでいてはいけないのでしょう。

そうして、閉じたままの扉がある。わたしはいまその前にいる。だから誰とも居られない。

扉を、開けることはできない。

そこから出た過去に学習した回答はいつも、否定・拒否・関係性の終焉の扉だから。

みんなとのさようならの扉。







エントリ6  真夜中の少年    桜はるらん


「おかあさん、ただいま、僕です、ドアを開けてください!」
夜の十時ごろ、毎晩隣のアパートから、少年の声がする
少年が塾から帰って来る時間、母親はいつも決まって留守だった

「おかあさん、僕です、開けてください!」
少年の声はすでに三十分を超えていた
私は耐えられずにいつも大家さんの家に合い鍵を取りに行く

私は大家さんから預かったアパートの部屋の鍵を少年に渡し
少年は「おばさん、いつもすみません」と礼を言って
誰もいない部屋の鍵を開け、少年の家にやっと灯りが点った

それからほどなくして、私の部屋のチャイムが鳴る
ドアを開けると少年の母親が立っていた
「いつも息子がすみませんね、でも私、あの子には合い鍵を渡したくないの」

そう言って母親はまた新しい化粧品のサンプルを私に押し付けた
少年の母親は化粧品のセールスを毎晩遅くまでしているらしい
私の家には彼女がくれた化粧品がびっしりと使われることなく、並んでいる

「おかあさん、ドアを開けてください!」
少年の声を私はあと何日も聞けないだろう
来週にはこのアパートを引っ越す予定だから

あと何年叫び続けたら
少年の声は母親に届くのだろう
沿線を走る電車の音に少年の声はかき消されてゆく






エントリ7  CON・CON    柿坂鞠



壁をコンコンと叩く

向こうには誰もいない

コンコンは振動となって
壁の外の環状七号線に通り抜けた






     孤独?







いいや。






友達と一緒にいても孤独なのに

一人で壁をコンコンしているのが孤独と
誰が言えよう

少なくともコンコンは私の存在の証でもあり
今ごろ空気と融合してある種の柔らかなエネルギー体になり

環状七号線を走る多くのドライバーたちの無意識の中に
インプットされたことだろう

深く考えることはない


生きるなんてそんなもの





人間関係もそんなもの



そして今宵もこうして壁をたたく

コンコンコンコンコンコン
コンコンコンコンコンコン














エントリ8  びすとろ ぴえろ    紫生


フォークは刺してばかりだから
自分も痛い 自虐のマロンチスト

きみは弱いから
いつだって立派な栗のよろいをつけて
とげとげのイガで威嚇するんだね
そんなきみをはっきりときらいになったのは
花冷えのする午後だった
砂時計は泣いていたよ
さらさらとただ静かに

スプーンはすくってばかりで
すくわれない 霊性を帯びたキサラギハニー

コーヒーカップのはきだす湯気が
亡霊みたいに儚くなってる
臨終まぢかの水の精はゆらめいてセクシーな踊り子
バイバイ ぼくらは何にだってなれる
今度は猫に生まれておいで
そうして二匹で恋に堕ちよう
すばらしく破滅的な恋に 
螺旋を描いておぼれてゆこうよ

ナイフは切ってばかりで
こころもズタズタ センシティブな五右衛門

燃えるような恋がしたいと願ったあの子
愛なんてくだらないから燃やした
そう言って 燃え尽きた
あいつ刃みたいな男だった
熱し凍えることをくり返した心は
いつしか鋼のように堅くなり
ある瞬間にあっさりと折れちまったのさ
椰子のようにしなる心は
嵐の懐にあっても
どこまでも椰子のままであるというのに

とりどりの味覚を皿に盛る
味わう 吐き出す

愛さなければこどくさえも知らなかった
咀嚼する嚥下する

同じ狂気を追っていっても
きっとそれはイロ違いの地獄
ガラ違いのキチガイ
べつべつの脳ミソ
それぞれの楽園 宇宙 暗黒
ひとり ひとり ひとり
こどくという名の満ちたりたサーカス

さまざまの味覚を更に盛る
食べる 生きる
生きる 食べる

さらさらと さらさらとふりしきる時の砂
もくもくと ただもくもくと食みつづけ
玉乗りの要領でゆらゆらと生きるて しあわせ

自家発電 エレクトリックサーカス
ブレーキは はじめからきかない





エントリ9  凍鶴    岡崎龍夫


あなたのその凍う指のあかぎれも
今日の地上で死に消える生命のひとつに過ぎぬ
あなたの爪痕がこの世にたとえ何年遺ろうが
価値など、価値を感じる者の奢りでしかない
意味など、知りたがる者の気休めでしかない
その死を救いはしないだろう

マツモトキヨシで購入したトラベル用睡眠薬四箱
すべてをのみきるまであと十と二錠

幇助などと
事がややこしくなる前に早々にここを立ち去ります
手慰みに
折り紙置いておきます
全部飲んだら鶴でも折って下さい

緊張した面持ちも
アルコールに
滑稽なほど柔らかくされて
もうすぐ
もうすぐ
よくなる

さようなら

本当は
喜びも悲しみも排泄で
難なく忘れていくのだろうか

優しい顔

あいしてる
あと五錠


<その後のことは知らないが死体の手は空ではなかったという>










エントリ10  矛盾或る水無月    双


消える雲の欠片に手を伸ばして。
面影。掌に残し、貴方を待つ。

月明かり 抱いて 遣らず潜む。
言葉は、響かず 笑う。貴方は、いない。

湖面へ煌く、背面の月光。
儚く、萌えては、隠れ、潜み、消える。
降り注ぐ雨。月明かり照らして。

霞む空に走り出す。

貴方が向かったあの場所へ。月の向こうへ。
追いかけて、走り、転げ、また走る。

繰り返し、繰り返す。それでも私は生きている。
生きている。例え私が埋もれ沈もうとも。

待ち焦がれ、走り出した。

歩けども、駆けようとも辿り着かない。辿り着けない。
そして気がつけば。

追いかけていたはずの月に、私が追いかけられていた。
手を伸ばして、求める。心は、深く沈み 私は笑う。

今私は
真っ直ぐに 歩けていますか。





エントリ11  ノヴェンバー・ステップス    大覚アキラ


たぶんノルウェーあたりに
巨大な送風機があって
そこから送りこまれた冷たい風が
君の頬を桃色に染める

わかさぎのエスカベッシュ
南瓜のキッシュ
ハッシュドビーフ
そして食後には
アイリッシュ・コーヒー

やたら
「ッシュ」ってカンジの
メニューばかりなのは
11月が
「ッシュ」ってカンジだから
と君は説明する

そういうのって
なかなかいい
だから11月は好きだ





エントリ12  遠い親戚    Tsu-Yo


「遠い親戚です」と呟きながら
脂ののった秋刀魚を食べる
身を骨から器用に削いで
大根おろしをちょんと乗せて
神経質に醤油を垂らして
「遠い親戚です」と呟きながら
秋刀魚の塩焼きを食べている

「どんな時も感謝の気持ちを忘れるな」
という今は亡き叔父の厳しい声が
遙か遠い日の港町から聞こえてくる
「遠い親戚です」そう呟くたびに
溢れてくる涙の中を
骨の秋刀魚は泳いでいくが
いつかの海にはたどり着けない





エントリ13  少女    kikki


仮想世界の猫は
煙草をくわえて
色づきの悪い空
ばかり見ている

裸の水色人形は
壁に視線を向け
半永久的幸福を
指に感じている

依存的治癒音楽
による不治の病
鳥の音が橙色の
地上に蔓延する

命を持つ幽霊は
この世界のもの
ではない言語で
空気と交流する

少女は踏切を背に
時の逆回転を夢見て時計回りの踊りを披露する
鳴り響く汽笛

それを見つめる山羊の目は白く

仮想世界の猫は
長く伸びた爪で
ジュ・トゥ・ヴ
奏で少女を迎え

裸の水色人形は
形失せし少女の
胸元に横たわり
指は焦げて灰に

鳥の音はそして
火の音に変わり

少女は猫の好きな不協和音色の空を見て
ここじゃないのと泣いた






エントリ14  綿花橋    ヨケマキル


ゆらいだり 
風はくるると吹くですな
水はそれでもじっとして
まったくひょんなはぐれ道
綿花橋はあったので

スナックmomoやカラオケ京
ビルはむこうににょっきりと
秋陽のカンカン照っている
草木はつるつる伸びていて

ピラカンサスにはトゲがあり
赤い小さな実がついて
軒はちんまりならべられ
赤子はすこぶる泣きしきる

時の亡骸ビヨトープ
狭き空などしんとして

雨などや
鳥や空気や日輪や
人の為には在りません

秘し隠された
こんな場所
綿花の橋はあったので






エントリ15  黒猫のビビ    トノモトショウ


ふしだらな黒猫ビビは
横目で愛撫を促して
アネモネの部屋の隅っこ
ツィゴイネルワイゼンの正確さで
鳴いていた

気紛れな黒猫ビビは
片足で本能を引き出して
陽だまりに潰れた日曜日
ツァラトゥストラの曖昧さで
泣いていた

「ボクは忘れようとしている」
「何を?」
「ボクが見てきた全てを」
「何故?」
「ボク自身が忘れたいからさ」

夢見がちな黒猫ビビは
遠い視線を放り投げて
小さく 小さく 本当に小さく
泣いていた





エントリ16  八面体モナリザ    ぶるぶる☆どっぐちゃん


八面体モナリザ それで楽園への扉を叩き壊す
花園にには誰もいない ビルや街にも誰もいない チューリップ カーネーション バラ アメリカにも誰もいない 八面体のマリリン・モンロー 赤 黄色 青 白 緑
「十字架は十字架だから」
ジュウジカハジュウジカダカラ
コンピュータゲーム コンピュータミュージック コンピュータグラフィック コンピュータの地球儀 コンピュータの前のあなた
コンピュータのミサコンピュータのダンス
どこまでも計算され続ける円周率
「今、笑ったでしょ。今笑ったの誰? どこにいるの?!」
「誰も居ないよ。ここには誰も居ない」
「そう。そうだね。ここには誰もいない」
「そう。結局は方程式の話だ。全て方程式で近似できる」
「それでさ、ねえ、終わりをどう考えてる?」
「終わり?」
「そう、終わり。終わりの終わり。全ての終わり。スカーレット・オハラは風とともに去りぬ。マリリン・モンローは薬を飲んで死ぬ。カーペンターズの妹はお兄さんを思うがあまり死ぬ。ねえ、終わりのことをどう考えているの?」
「腹が減ったな」
「オイディプス王、が、失われた時を求めて。河童。かぐや姫。レニングラード・カウボーイズ。アメリカへ行く」
「なあ、お前、コーヒーだけじゃあ駄目だ。コーヒーだけじゃ駄目だよ。何か頼もう。腹が減ったぜ」
「ユークリッド幾何学。ゲーテの、光について。アイネ・クライネ・ナハトムジーク」
「ステーキが良いな。最近こんなもの食べてない。ただの肉の塊だ。最近こんなもの食べてない。面白いよな。ただの肉の塊だぜ。ただの牛だったものの残した、肉の塊だぜ。面白いよな」
「ねえ、終わりについてどう考えているの? 終わりについて。終わりについて。ねえ、どう考えているの? ハッピーエンド? バッドエンド? ねえ、どう考えているの?」
夢を見る 夢を見る 終わりない夢 夢 夢
嘘 ウソ 夢なんて見ない 終わりのない夢なんて嘘
嘘をついてしまった
「終わりよりも直線だ。直線。その方が重大な問題だと思う。なあ、そうじゃないか?」
「ねえ、砕いて! 全て砕いて! わたしの全てを砕いて! それで良いの! それだけで良いの!」
また嘘をついてしまった また嘘をついてしまった