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第96回詩人バトル

エントリ作品作者文字数
1大丈夫RISE190
2生者(せいじゃ)の行進オメガ879
3満月128
4本屋で本を売ること。霧一タカシ877
5げっと・わいるどわいさん344
6アイデンティティ空人531
7最悪な炎の夢蒼ノ下雷太郎265
8ト マ ソ ン大覚アキラ2142
9ジビエ葉月みか155
10かもめ いっぴきゆた香362
11王様越冬こあら253
12生贄Tsu-Yo236




 


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詩人バトル読書会
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エントリ1  大丈夫    RISE


明日の陽が昇る
水面でゆれる月
赤い翼の金魚

月喰らいが泳ぐ夜
夢は現実と交差して
異次元へいざなう

とてもふわふわとした現実感
壁の模様が歪んで見えるのは眠り薬のせい
世界が回る

私の目は正しいか
そう正しい

君の目は正しいか
そう正しい

皆の目は正しいか
そう正しい

全ては正しい
ただ
それは今だけの正しさ
そう今は正しい
けど明日にはわからない

でも誰にも明日はわからない
だから正しい
全ての今は正しい

そう
正しい。





エントリ2  生者(せいじゃ)の行進    オメガ


ふと道端に目をやると
二〜三センチ足らずのアリが
隊列を組んでいた
北北西に進路を取り
整然と行進している
そこにあるのは
一週間の役目を果たしたセミの亡骸なのか
幼児の落としたアイスクリームなのか
それとも
台所でこぼれた砂糖の山なのか
隊列から目を離すと
一匹のアリが
三時方向に歩みを進める
目的地とは無関係の方向に
ある研究によると
「勤勉であるといわれる働きアリの約三割は怠け者である」
つまり
全ての働きアリが働き者ではない
……ということだ
しばらくするとアリの隊列は
戦利品を背に
大本営へ帰還していった
戦線を離脱していたあのアリが
何ごともなかったように
隊列に加わった
気が付くと
他の離脱者も合流し始めた
この後大本営では
戦勝会が開かれるのだろうか
それとも次の作戦会議か
戦線離脱者の軍法会議か

目線を
一七〇センチ足らずの人間に転じてみる
我が統合作戦本部は
経済効率という名の人員削減と経費節減
少数精鋭という名の労働時間の加重
それを履行できない士官と隊員は
心に風邪をひくか
落伍者のレッテルを貼られる
小さきアリたちよ
君たちはリストラや残業を
押し付けられることはない
仕事の失敗を処罰され
心を病んで自ら死を選ぶことはない
ただあるのは
自然の摂理の従うことだけ
しかし人間は
自然の摂理など蚊帳の外
怠け者と思われている君が
どこで砂糖の山を見つけようが
どこで骨休めをしていようが
どこで情報収集し
その間に名誉の戦死をしようが
知らぬ存ぜぬである

君たちは
君たちの住む大本営が
貨幣という砂糖の山で
売り買いされていることを
知っているのか
君たちは
信仰する絶対的超越者の違いで
罵り合い血を流していることを
知っているのか
君たちは
快適な生活を送るために
生活の礎となる
空と海と大地を穢(けが)していることを
知っているのか
僕と君は同じ粒でできている
同じ素材でできている
違うのは体を創造(つく)る設計図だけだ
この青い惑星で生まれた限り
誰がその者の良心を否定できようか
誰がその者の信条を否定できようか
誰がその者の生存を否定できようか
生けとし生ける者は
謙虚であろう
実直であろう
誠実であろう
そして
深い愛を共有できる
誇り高き生者(せいじゃ)であろう






エントリ3  満月    百


 濃い紺色の空に

 凍った銀貨

 冴え冴え

 厳しくも 優しく


 
 淡い灰色の空に
  
 砂金をまぶして

 柔らかく

 儚くも しなやかに


 
 朱を帯びた薄墨色の空に

 熟れた木の実

 たわわに

 狂おしくも 瑞瑞しく


  
 澄んだ漆黒色の空に

 神の覗き穴

 遥か

 小さくも 高みに





エントリ4  本屋で本を売ること。
    霧一タカシ


本屋に行くといろいろなことがわかる。
いろいろなことを書くため時間を使う。
街のことを書くため時間を使う。
自分の事を書くため時間を使う。
自分の事を書くといろいろなことがわかる。
いろいろなことが僕にできると思う。
本屋に行くといろいろな事がわかる。
本屋に行って本を買ったことを文章に書く。
本屋には新しい本が売られていた。
本屋に行くといろいろな人と会える。
いろいろな街に外に出て行く。
街で映画を撮る。
いろいろな街を旅してどこで映画を撮るか決めたい。
街を歩いてどの店から壊すか決める。
映画をどう撮るか考えるのは難しい。
本を読めばいろいろな人とどう話すかわかる。
いろいろな人と話すと小説についてわかる。
小説の書き方について勉強するため色々なことをする。
いろいろな街の本屋に行くため外に出る。
僕は小説を書いていきたい。
その街を歩くといろいろな人が歩いているのがわかる。
僕はいろいろなことをしたいからその街を歩く。
僕はその街を歩くのが好きだ。
本屋に行って壊すのが楽しみだ。
映画館に行くことで勉強することができる。
いろいろな街を歩いてどこに本屋があるか探す。
いろいろなことを書いていく。
本を読んでいく。
街にはいろいろな人がいると思う。
歌を歌うためにステージまで歩いていく。
どういう歌い方をするかイメージする。
本屋で本を読む。
映画館から出て街の景色を観に行く。
街にはいろいろな人が歩いていた。
僕はソハルと話しながらどの店に入ろうか考えていた。
いろいろな人と話すために本を読む。
僕は店に入って席に座る。
メニューを見ながらどんな物がおいしいか考える。
いろいろな物を食べるといろいろなアイデアが思いつく。
メニューを考えながら見るのは楽しい。
いろいろなメニューを見ると食事の作り方について考えたくなる。
食事を作るのが楽しくなる。
ソハルはその店のメニューを見るのが楽しい。
その店のメニューは食べたくなるような食事が多い。
いろいろなことをその食事を食べながら考えた。
今日はこの後どんなことをするか考えた。
映画のある街を歩く。
映画館の中で本を読む。
いろいろなことを話したいと思いながら歩く。







エントリ5  げっと・わいるど    わいさん



 アスファルト
 タイヤを切りつけながら 何処へ 急いでいるの 右へ左へ カラダを揺らして
 まるで
 何かに追われた 映画の主人公みたい

 もしや
 ずっと先を急ぐアナタは もしや

 電柱を掠めて ガードレールを踏み越えて
 斜めに横切り それでも振り返らない
 マンホールを派手に鳴らして アルミ缶を蹴り飛ばし 何処へ 急いでいるの

 犬が吠えている
 閉めた窓から誰かが見ている
 まるで ゴールを目指すランナーみたいに アナタは

 もしや
 ずっと 先頭へ向かうアナタは もしや


 タイトルを決めてるうちに 日が暮れる
 教えて
 シワのつかない洗い方を
 高速道路の降り方を
 革靴の改造を
 休日の数え方を


 それでも 加速するアナタは もはや 止まって見える
 青空に浮かぶ星のように
 何も語らず ただ 加速してゆく






エントリ6  アイデンティティ    空人


ついうっかりと この世界に生まれてきてしまって
わたしは 動きつづける心臓を得てしまった
それからというものの
わたしは 何かを食べなければ生きていけないことに気づき
食べ物を得るためには お金が必要だと教わり
人を愛することをおぼえ 傷つけ 心の痛みを知り
ある時 自分はたったひとりしかいない存在だ ということも知った

大人になれば 過去を掘り返し 未来へのかけ橋をつくるものの
すこしばかりの知識を使って はるかな宇宙の無限を描いてみれば
自分という存在は 塵にも満たないものだと知った

振り返れば もう想い出せないほどの記憶と
心にまとわりついている たくさんの錆
だんだんと その時が遠くないことを 脊髄の痛みが知らせてくれる

心臓が止れば じきに焼かれて消えてしまうわたし
そのあいだ 七 八十年
その時間で いったい何がわかるのだろう
わたしは どこから来て どこへ行くのか
この瞬間 産声に泣き 永遠の沈黙が叫びをあげるこの場所で
いったい何を想い 何を考えればいい
なぜだかわからないけれど この世界に生まれてきてしまって
さまざまな不運をかいくぐり いまここに生き残ったとしても!

いったいわたしは わたしたちは ここで何をしているのだろう
その答えは 目を閉じる瞬間にわかるのだろうか






エントリ7  最悪な炎の夢    蒼ノ下雷太郎


飼い慣らした悪夢は動き出す。
肉で餌付けしたからか
彼は容赦という概念を知らない

悪夢は魂を喰らい
その人の環境を荒らす
火がないところに煙は立たぬ?

馬鹿馬鹿しい

火は不始末だけじゃなく
放火することだって叶うのに

だから悪夢は野放しにされ
目を閉じても夢は消えない

さようならと誰かが泣いた
高い所から落ちて飛ぼうとしたのか
それとも最初から飛ぶために飛んだのか
烙印を押された子供は迷子になり
何処にも帰って来なくなる

自分達になかった夢を見て
大人は未知を知る

思い出せ

お前らの頃から
その悪夢があったことを
媒体が変わっただけで
悪夢は昔から放火されていたことを

作者付記:ニュースを見て思う

今はひどいですよね?

昔からひどい






エントリ8  ト マ ソ ン    大覚アキラ

















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  │音│肉├┐│色│遮断機│女│流星群│
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  │音│肉├┐│色│遮断機│女│流星群│
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エントリ9  ジビエ    葉月みか


狩りに行こう
雪を踏み分け
深い森へ

獣を喰わせろって
腹が啼くんだ

白く冷えきった脂の家畜に
用はない


火影
薪のはぜる音


羽をむしれ
皮を剥げ
蛆がわきそうな肉に
血のソースをかけて
輝くナイフを突き立てるんだ

鼻腔をくすぐる
蛋白質の焼ける匂い
犬歯に抗う
強靭な筋肉
手懐けられない
クセだらけの臓物


たまんねぇ


なぁ 男だろ?
ほら
もっと喰えよ






エントリ10  かもめ いっぴき    ゆた香












ひとは ひとりじゃ


ありません


ひとつ です


おめめ ひとつ それだけ


です


ふたつ あるから


みえた きもちに 


なるの です








あすの おてんき


おしえて あげて


はれ ても


あめ でも


いい おてんき








うみと かわは


おなじ みずじゃ 


ありません


あなたは わたしと おなじ こ じゃ


ありません








おうちが ふたつ


おおきな おうち と


ちいさな おうち


となりの おうちは こどもが


います


なきごえが しています








いすが ひとつ


ぼくらが ふたり


りん らん りん らん


さあ どうぞ


あら どうも 








かもめは そらを とびます


わたしは そらが すきです


わたしは かもめと ともだちじゃ


ありません


かもめは そらが きらいかも


しれません


それでも かもめは


とりなので


けっきょく そらを


とびます


べつだん わるくも


ない き が します


かもめ は ほんとう に


きまぐれ なんだから。
















エントリ11  王様    越冬こあら


なんでもかんでも忘れる王様は
何を忘れたかも忘れてしまうので
何も残らずとても幸せだ

そして
王様が忘れるのは
「ここ最近」に始った事じゃない
生まれた時から
いや
むしろ生まれる前からだ
だから
生まれた事はもうとうに忘れちまっとられる

もちろん
親兄弟も家来も御后も王子も
なんちゃらおぼえちょらんばい


波の静かな海が見える丘に建つ大きな煉瓦色のキャッスルが
王様の御住まいだということも
ズボンの前にパンツを穿かなければならないということも
いっさい記憶に御座いません


とにかく
なんでもかんでも忘れるんだ

だから
王様の国は
至極平和だ








エントリ12  生贄    Tsu-Yo


あるいは、青春とは生贄のようなもの
だったのかもしれない
私たちが、終わりの終わりまで
上手に歩いていくために捧げた
血なまぐさい生贄
それが美しいものだったなんて嘘を
眉一つ動かさずにつけるようになるころ
人々は互いに良く似た顔をしている

私の友人のひとりは
生贄の差し出し方を知らなかった
いつでも重たい岩のようなものを抱え
苦悶の表情を浮かべ歩き続けた
今も棺桶の中で彼は
そんな顔をしたままでいる
生贄を差し出すことを知らなかった者は
自ら、世界の生贄になるしかない
ということを私は知らなかった