エントリ1
さわやかななつ、しあわせななつ 咲本らら
外へ出かけよう
ローファーも白ソックスも脱ぎすてて
入道雲をまといながら
風のように走ってみよう
眩暈の先に立ちはだかった
炎帝と握手、仲直り
丈の短いプリーツスカートを
夏の風たちが物珍しそうに触っていく
スクールバックから零れた参考書は
鳥のように羽ばたいていった
制服のリボンを外して
太陽にかざす
リボンの色と手のひらを流れる血潮が
この世で一等、美しいものに見えた
一番高いビルの屋上に立って
ふわりと飛び立つ
夏の風たちを捕まえてみたら
おかしくて笑いがこみあげた
見て! 私はここにいる!
絶叫は空の青に吸い込まれて
雨となって街に降り注いだ
最期に見るという走馬灯すら
入り込めないほどの幸福
それだけで私の人生は無駄じゃない
そう思えるの
ああ、なんて爽やかで
なんて幸せな夏なのだろう!
天気予報を聞いた人々が
色とりどりに雨傘を開くころ
私の体は墜落機のように
固いアスファルトに着地した
エントリ2
ビーバーのダム サヌキマオ
ビーバーのダム
バービーのムダ
天井に 壁に敷き詰めて
メタリックゴルドのスプレーで塗ったとさ
人が
「これはクサヤマヨイのオマージュですか」というので
そんなことはありませんと答えたが
ネットで調べるとたしかにキューピーが
無数のキューピーが
銀色に塗られている
壁に天井に敷き詰められている
バービーを買い集めたのに
Amazonだけで500体も買い集めたのに
日本各地の
津々浦々のいたいけなこどもの手に渡って
紆余曲折、波乱万丈の活躍をする予定のバービーを
買い占めたのに
途端にごみになってしまった
途端に無意味になってしまった
トイザらスのでかい袋に詰めて
今朝の燃えないごみに出してしまった
バービーのムダ
ビーバーのダム
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