第24回詩人バトル
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  INDEX
 エントリ 作者 作品名 文字数 得票なるか!? ★
 1 りりっく  PLEASE  16   
 2 香京  Omohide  15   
 3 ヨケマキル  群青エコー夏ひのひ  14   
 4 さゆり  冬はいい  13   
 5 歌羽深空  Q,ワタシヲミツケテ  213   
 6 詠理   夢路に小石  26   
 7 道人  きんぎょのはか  22   
 8 魁秘 渉  傷  221   
 9 清田拓郎  「時計」  197   
 10 香織  罪悪感  10   
 11 香月朔夜  孤独なりし白き者  0   
 12 クマクマ  一等賞  19   
 13 山口アヤ  Cry  8   
 14 蜜  The heart  10   
 15 棗樹  雪雪雪  12   
 16 3カウント  支離滅裂  29   
 17 沙生  戦いの終わり  29   
 18 五月原華弥  他愛のない言葉  9   
 19 須藤あき  私に触るな。  142   
 20 木葉一刀(コバカズト)  鬱向きに満天  50   
 21 ティリス  見えないもの。  11   
 22 河野夏実  時の鎖と己の道と・・・  238   
 23 みや  心のアルバムを手に...  127   
 24 三浦智恵  存在価値  10   
 25 月明かり  自転車に賭けた冬。  56   
 26 小松知世  髪を切った訳  28   
 27 芽萌里  距離  15   
 28 日向さち  ノラ  24   
 29 (作者の要望により掲載終了しました)    
 30 加賀 椿  冬の一駅  18   
 31 満月うさぎ  月の出に  28   
 32 さと  千字と君の文隠し  359   
 33 佐藤yuupopic  ほろほろ  24   
 34 大覚アキラ  おわりかた  21   
 35 下圭  歌?  38   
 36 植木  稜線  7   
 37 瑞松花  欲しいもの  0   
 38 凛  スカートの中  1   
 39 氷月そら  リアル  19   
 40 空人  丸みを失い、消えないように  40   
 41 春九千  2000年後にこんな悲喜こもごもな狂想曲を引き起こすなんて、
 バレンタイン氏も罪な お人だなー(^^;A
 
 2   
 42 橘内 潤  『ねこ in the darkness』  0   
 43 ぶるぶる☆どっぐちゃん  頭は西向き尾は東向き、
 右手と左手は南北へそれぞれ引き裂かれるように伸ばされている
 
 42   
 44 フウソウアカネ  迷いの森  0   


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バトル結果ここからご覧ください。




Entry1
PLEASE
りりっく

そうね、そうかもしれないね
誰にも知られなければいいと思っているのは確かです。
誰にも言わなければいいと思っているのは確かです。
だけど、分かっているよ
悔しいくらいに頼りない自分は、誰かの助けを借りなくちゃいけないのに。
苦しいくらいに許せないのは、自分のつまらないプライドがそうさせていて。
分かってるよ、だからそんなに責めないで
プライドなんてハリボテで、つついたらすぐに倒れるだけの物で。
それでも必死に見栄を張れるところは、唯一の取柄で。
分かってるよ、だからそんな眼で見下さないで
くだらないと笑ってください。
つまらないと舌打ちしてください。
だけど、お願いがあるよ
どうか嫌いにならないで、どうか呆れていなくならないで。
自分は自分が嫌いで嫌いで虫唾が走るくらい、壊して消して裂いてやりたいから。
だから、どうか、あなただけは見捨てないで


Entry2
Omohide
香京

部屋で見つけた  古ぼけたタンス
たくさんの思いが  あふれかえった

忘れたはずなのに
全てを知ってしまったから
どうしようもない
傷付け合う絵日記の中には

信じあった友情の裏側
形もない薄暗い夕焼けに映る

色あせた手紙なんて
何にも答えにならない
足跡も消えてなくなる
ただそこには夜明けの別れを

悲しい思いは部屋から捨てよう
暖炉で焼いて粉々に砕く
そうやって何も無くなる思ひ出


Entry3
群青エコー夏ひのひ
ヨケマキル

すぱらしき夏ひのひ
すさまじき光の運動です
てーて照らす てて照らす
大変気持ち悪くもあるのです夏ひのひ

悲式(かなしき)な白日にキミ裸んなり
セメンタァの地球上駆け抜け抜けるゆけゆける
焼けつく屋根だトタンだピキピキ

ポラロイド坂道
そら群青でエコーして
深呼吸 精霊は寸劇 かぜはスライドする

生育する音音(ねね)に耳塞ぎ
背開きの町
高らかなパカラカナ金管楽器チンカンパッキ
ココロココ練習曲稚拙鳴る夏ひのひのひ


Entry4
冬はいい
さゆり

冬はいい

研ぎ澄まされた
ナイフの風は
私をしゅんとさせる

張り詰めた心の奥で
氷の触れ合う音

冬は
私のうちに
あるもの全部

整列して
肩を抱き合って
木枯らしを防ごうとする

そんな冬はいい


Entry5
Q,ワタシヲミツケテ
歌羽深空

これはあなたにあてた手紙です。

私を探してください。
君は見つけてくれる、そう信じてるから。
私はここで歌っています。
君がここにいてくれることを信じて。
私はどこにも行かない、行けないから。
君のことをいのりながら。
私はきっと来ると信じてる。
君のために歌うよ、ずっと。

「君」とはあなたのことです。
私はこのせまいオリの中で
祈っています。
あなたが私を見つけてくれることを。
手紙の中に、
私がいます。
見つけてくれますか?

『ワタシハココニイルヨ』


Entry6
夢路に小石
詠理

夢路に小石を見つけたから
拾って投げるとぶつかった
笑気が頬に張り付いて
怒気を養い自滅する

し様が無いから笑うだけ
胸は頻りに吼えるけど
口を塞げば涙の滴り

浮世の暇にしがみつき
月下の静香に沈みこむ
跳ねた水面を生起として
刺さる降雨に情死した

し様が無いから踊るだけ
砕けた手足を積んだのに
自ら蠢き四散する

溜めた涙は吸い取られ
すくってみれば涎だけ
悲境に至って住み着くと
嬉々たる仕草に身を染める

し様が無いから笑えや踊れ
歌う言葉も忘れれば
硝子に映る獣の眼


Entry7
きんぎょのはか
道人

よみせでかったきんぎょが死んじゃった
チイちゃんのせいで死んじゃった
ママとまいにちちゃんとエサあげるってやくそくしたのに
おなかをみせてプカプカういてきのうまでげんきだったのに
チイちゃんのせいで死んじゃった
ママはこわいかおしてすてなさいっていったけど
きんぎょがかわいそうでまた泣いた

おばあちゃんが死んだときママも泣いていた
おばあちゃんはおはかにはっているのに
どうしてきんぎょはすてちゃうの
ママにナイショでおにわにうめた
ママにナイショでなむなむした
だけどどこにうめたかわからなくなるから
(きんぎょのはか)ってママにかいてもらった
そしたらママ、チイちゃんをぎゅってだいて
「ごめん」っていった

ママ、どうしてあやまるの
ママ、どうして泣いてるの

きんぎょが死んだのはチイちゃんのせいなのに・・・


Entry8

魁秘 渉

誰もが傷つかない世の中なんてない

知らない国では武器で傷つけ合っていたし
富んだ国では言葉や想い考えで心を傷つけ合っていた

見上げた空が青すぎて恥ずかしくなった

空は繋がっているのに
助け合うことの出来ない国々
分かり合うことの出来ない国々

青すぎる空に汚い言葉を吐き捨てた
それでも空の青さは変わらなかった
大きい空に小さい心を思い知らされた

誰もが傷つかずには生きられない
傷つき癒した分だけ大きくなれる

誰もが傷つかない世の中なんてない
傷つかずには生きられない


Entry9
「時計」
清田拓郎

僕は時計に遊ばれている


楽しいときには秒針をブンブン振って長針を走らせ

退屈なときには秒針が寄り道をして

なかなか長針の目の前で腰を上げようとしない

とうとう僕は悔しくなったから

じっと5分間、時計から眼を離さずに見続けてみた

    ・
    ・
    ・

そして気が付くと、きっかり5分が経っていた

なんてことだろう

またまた時計に遊ばれてしまった

    ・
    ・
    ・

次は横目でやってみるか・・・


Entry10
罪悪感
香織

いつもあたしは自分を守るために

自分が悪者にならないように

気付かない振り繰り返してた

軽やかに進む足

立ち止まった瞬間

今後ろから誰かに背中を刺されたら

あたしはその人に

「ありがとう。」って

「ごめんね。」って


Entry11
孤独なりし白き者
香月朔夜

ここは傷つくことから逃れられぬ世界
私が歩いた後に いくつもの涙がつたう

ならば目も耳も閉ざしてしまえばいい
苦痛に歪められた顔を見ることもなく
苦痛の叫びを聞くこともなく
ただ時だけが流れゆく空間

心は意味をなくし、消えてゆく
後に残るは『虚しさ』のみ

人々は私をこう呼ぶ

『天使』、と。


Entry12
一等賞
クマクマ

貴方も、私も、あの人も、
皆、それぞれ一等賞。

生まれる前に私達、厳しい競争してきたの。
幾つも仲間を追い抜いて、一つの卵子を勝ち取った。

だから貴方は愚図じゃない。
あの人達はビリじゃない。

この世に生まれてくる為に、自分の意志で追い抜いた。
自分の力で勝ち取った。
この世に生まれてくる事を、自分の意志で選んだの。

「生まれてこなけりゃ、よかったよ」

「生んでくれとは言ってない」

そんな悲しいことなんて、
考えないで、言わないで。


Entry13
Cry
山口アヤ

「また今度」は来ないから、
あたしはいつだって、あたしのために泣く。

「美しい明日」は来ないから、
あなたはいつだって、未来のために泣く。

泣いた涙が乾いて消えて、雪になったり雨になったり、
いつか、あたしや、君や、あの人がこぼした涙が
遠い遠いどこかの国の、お腹がすいて死にそうな子供たちの

飲み水になればいいのに、と思う。


Entry14
The heart


除光液で ネイルを落とすみたいに
ヤなこともツルンって消せればいいのに。

タワシでこすったって 全然消えてくれないし。
よけいに傷は増えてって。

仕方ないから 包帯をグルグルにまきつける。

いっそ多少の衝撃にも耐えられるように
ギプスでもつけて。


Entry15
雪雪雪
棗樹

雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪
雪雪雪雪雪 犬!雪雪雪雪雪
雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪雪

ゆきゆきゆきゆきゆきゆきき
ゆきゆきゆ手袋片方きゆきゆ
きゆきゆきゆきゆきゆきゆき

雪雪雪ゆゆききゆきゆきゆゆ
雪雪雪 崩れかけた雪だるま
雪雪雪ゆゆききゆきゆきゆき

ゆききゆき雪雪雪ゆゆきゆき
ゆききゆき小鳥の骸(むくろ)
ゆききゆき雪雪雪ゆゆきゆき


Entry16
支離滅裂
3カウント

 水溜りに写っているモノのように 簡単に景色は
 奪われていく
 そして 忘れたかのようにまた元にもどる
 そんな現実世界の中で 僕は真実を探している
 写っている 世界には 美しさも 儚さも  
 それを消し去るような矛盾もあるから 
 
 「
 どんなに心打たれても どんなに心ときめかせても 
 いずれそれは矛盾とともに消えていく
 強い意見に 水面を揺るがせ
 強い意志に 水面を揺るがせ
 強い姿に 水面を揺るがせ 
 一時的な感情に 愛しい人に・・・
 それでも何もなかったかのように元にもどる
 矛盾とともに元にもどる
 でも忘れてはいけないモノがあるはずで… 
 何も変わらなくても 何かが変わっている
 そんなリアルな世界があること
 」 
  
 こんな言葉を信じながら 
 何がホントで 何がニセモノか考えている
 疑問持って 理想持って
 僕は生きている
 くそったれの社会や 意味のない人間関係に包ま
 れみんな生きてる

 でも疑問がある
 「どうしたらいい?」


Entry17
戦いの終わり
沙生

きょう、世界は青いと思った。
きょう、風の透明な笑顔を見た。

乾いていた。
世界は動いていた。
無力だと思った。
なにも変わらない、空があった。
私を見下ろしていた。

本当は、世界はもう青くないのかもしれない。
本当は、風は笑っていないのかもしれない。

叫んだ声が、真緑の山にこだました。
さえぎるなよ。つれていけよ。
だめなのかよ。
世界は進んでいた。
止めようがなかった。
悔んで悔んで、悔んだ。

未来は見えない。
ただただ、今は、無心の花を心に咲かすだけ。
平和の花を。世界の花を。

きっと、いつか満開にさくことを願った。


Entry18
他愛のない言葉
五月原華弥

電話の向こうにいる君に
好きだと言いたくなった
だけど紡ぎ出せる言葉は
他愛のないことばかり

本当は抱きしめたいんだ
本当は傍にいたいんだ
それができないから
今日も電話の向こうにいる君に
他愛のない言葉を投げかける


Entry19
私に触るな。
須藤あき

みみに あしおと。

うしろ ながく とおく みじかく ちかく

ずっと ずっと ずっと ずっと ずっと

はやく あしどり。

まえに だんだん いっきに まだまだ もっと

ひかりへ ひかりへ ひかりへ ひかりへ ひかりへ

あ、とまる。

めのまえ あかく あかく。

とおりゃんせ とおりゃんせ

“私に触るな”


Entry20
鬱向きに満天
木葉一刀(コバカズト)

不甲斐無い
不甲斐無い不甲斐無い

左手の平が赤くなるほど
右手の拳を打ち付ける

些細なミスが呼んだ
戒めの叱咤
今後のミスが無いように
言葉の裏の意味を知りつつも
今の言葉は胸に突き刺さることは無い

心に届くものは
自分自身への後悔でしかない
なぜだ?
なぜこんなことで!
不甲斐無い
愚か過ぎる自身への叱咤
届く言葉は自分自身のものだけなのだ

打ち付ける右手の拳
叱咤された痛みでも
ましてや拳の痛みでもなく
内側の自身の声に
悔しさに涙が溢れそうになる

帰り道
まだ枯れぬ心が
不意に瞼から溢れてくる
我慢ができなかったことが
更に後悔を煽る

堪えようと上を向き……
そのとき見えた雲の間から
ひとつの星
都会で見えた偶然のひとつ……?

違う
一つではない
目に浮かぶ涙が一つを幾つもに
それは満天の星となり
ただそれだけの事に涙が引く思いがする

嬉しさが苦より膨らんだとき
明日こそはと思えてくる
明日がだめなら明後日だ
でも先ずは明日から

そう
明日から


Entry21
見えないもの。
ティリス

肝心なこと・・・・

必ずしも目に見えるわけではない。

人の気持ち、絆、愛。

それらは、見えないかもしれないけれど、

見えないところで通じ合っている。

そして、ある日「嗚呼、こういうことだったんだ」って

分かる日が来るかもしれない。

不思議なことだけれど・・・。

だから、思い込みなんてしないで欲しいんだ。

なにせ、肝心なことは見えないもの。

言葉に隠れたメッセージ、探してみよう。


Entry22
時の鎖と己の道と・・・
河野夏実

時間に追われる毎日を
嫌う私が1番
時間に追われてた。
それが堪らなく苦痛だった。
時間に縛られる私は、とてつもなく醜い物だ、と思う。
「時間」と言う名の鎖を外して
今、飛び出したい。
「自由」を手にするために。
時間の流れは確実に
流れすぎる「今」と共に
それがたまらなく嫌だった。
今日も明日も明後日も
何も無ければ良いのに。
「時間」と言う名の鎖外して
今、飛び出そう。
例え、それが「孤独」でも。
「不安」と言う名を背負って
今、飛びたて。
自分のために生きるように。
「時間」の鎖外して
己の道を突き進め。


Entry23
心のアルバムを手に...
みや

タンスの奥から出てきた冊子
引っ張り出して パラリとめくる

記憶の底へと沈んだ想い
ぽっかりぽかり 浮んじゃ沈む

あぁ そうか
そうなのだ

幾年月の時の中
私は成長したのだな

何時年食うたか思いも出せぬが
私は成長したのだな

きっと私の顔は今
微笑んでるに違いない


Entry24
存在価値
三浦智恵

人間の存在価値なんて、あるようでないようなものだから、消えてしまってもいいと思った。けれどそれは君を苦しめる事だから、僕は君のためにイバラの道を進むよ。いつかこんな事を考えた。もしも僕が消えてしまったら、いったい何人泣いてくれるだろう?もしも君が泣いてくれるなら、それが僕の存在価値になる。
だから僕は、自然に消えるその日まで、君を大切にしようと思う。君が僕のためにたくさん泣いてくれるように。
今はまだ解らない僕の存在価値だけど、きっと消えるその日に思う。
イバラの道を選んでよかった。
だから君にお願いがある。僕より先に消えたりしないで!
僕をひとり残して逝かないで・・・


Entry25
自転車に賭けた冬。
月明かり

激しく駆け抜ける、京都鴨川沿いの道。
二つの影が、何かから逃れるように。
日常を追い越すように煌めいた。

いつでも、そういつでも。
彼らの前には偶然と言う名の必然。
ただ、それだけがあった。

あたかも思いつきの様に。
だが決してそうでない。
運命と行動と自我。
そこに、その身を委ねた。

そう、明日の自分を夢見るよりも。
今の自分を追い詰めるかのごとく。
追い詰められた自分を楽しむかのごとく。

ゆらゆらと儚く揺れる、祇園のネオンを目論んだ。

だが斬りつけるような風が彼らをさえぎる。
彼らの強靭な意識を根こそぎ削ぎ落とすかのように。
しかし、その風をさらに鋭い刃で切り裂くかのように。
彼らは、スピ−ドを上げ続けた。

そうまるで、彼らの瞳そのものだ。

もし、この状況下において。
彼らが、楽しみを見出すことが出来ないのなら。
彼らは、きっとたどり着くことなど出来はしないだろう。
彼らの魅せられている領域に、きっと手は届かないだろう。。。

・・・突然、この古都に似つかわしくない違和感のある音色。
もっと言えば、滑稽かつ大胆な音色が鮮やかに鳴り響いた。

『ガラガラ、ガッシャ−−−−ンッッ!!』

僕は、すぐさま振り向いた。

そう、僕の無二の親友がガッチリと路上に。
京都の路上に横たわっていた。
つい先ほどレンタルしたばかりのピカピカの自転車が。
頭から丸ごと歩道脇の植栽に突き刺さり、カラカラと鳴いていた。

朋友は、お腹を天に突き出し静かに横たわっていた。
キリストに許しを乞う、敬虔な信者のように。
自分の弱い部分をさらけ出し、降伏を誓う兵士のように。
更にいえば、トイザラスでおもちゃを買ってもらえずに。
駄々をこねる、彼の姪のように。。。

だが 、僕は何一つ心配などしていなかった。
心配する必要など無かった。

何故なら、奴が僕の友だからだ。

だからこそ、僕はあえてさらに激しくペダルを踏み込んだ。
少しだけ、微笑みながら。。。


Entry26
髪を切った訳
小松知世

「やっぱり友達でいよう」
私に対しての彼の答えがそれだった
私はその足で髪を切りに行った
それは別に彼への「あてつけ」でもなく
失恋したショックからでもない
彼が好きだと言ったから伸ばしてた髪を
バッサリと切ったのは
ただ単に自分自身にケジメをつけたかったからで
ただそれだけの事だった

しばらくして
復縁を望んできた彼に
既にケジメをつけていた私は未練を殺して
はっきり「NO」と答えた
すると彼は翌日に
ずっと伸ばしてた長髪をバッサリ切って現れた
そして私にニヤリと笑ってこう言った
「相手に髪を切られた時の気持ちがこれで分かっただろう?」

私があの時髪を切ったのは私自身の気持ちのため
彼がこの日髪を切ったのは私に対する復讐のため
私は自分の選択が間違ってなかったと強く思った

髪を切る事にそんなに大きな意味なんてなかった
でももしあったとするならば
この結末を迎えるためのプロローグだったのだ
彼の本当の姿を知った今
私はようやくこの恋に終止符を打った


Entry27
距離
芽萌里

君と離れること
僕はすごく怖いんだ
もう 会えなくなるような気がして

君がいなくなること
僕はとても不安なんだ
僕が僕でなくなるような気がして

距離が離れたら心まで離れてしまいそうで
心配で仕方がないんだ

でも、「どこにもいかないで」
なんてわがまま言わないよ

君を困らせるだけだから

だけど、だけど
もう少しだけ そばにいて

どんなに離れたって
「忘れたりしない」って約束して


Entry28
ノラ
日向さち

寒い冬です
体毛の貧弱なわたしたちは
こんな夜には
温かいお風呂に入って
温かい布団で眠るのが一番なのです

外で
ニャーという声がします
いつものノラです
こげ茶の縞です

寒いですか?
霜のついた勝手口を開けて わたしは尋ねました
当たり前だという顔をして ノラは背中を丸めています

灯油のタンクを抱えて小屋へ行くと
ノラも一緒についてきます
わたしは追い出します
ノラは黙ります

外は寒い冬です
わたしはヒーターを消して
温かい布団へ入り
背中を伸ばして眠りにつきます


Entry30
冬の一駅
加賀 椿

いつもこの時間 この場所で
私は父親とすれ違う
もう何年も話していない父親と
同じくらいの背の高さで
同じ鞄を持っている父親と

揺れる電車
重い大きな鞄を足下に置くと
扉のガラスの 白いくもりが目に入る
位置は 私の腰辺り
夜遅い時間に 子供が乗っていたわけでもない

次の駅が近付いて来る
私が下りる その駅に
だんだん薄くなっていく 白いくもり

扉が開く前に 鞄に手をのばす
ちょうど目の前にくるのは あの白いくもり
新たに息を吹き掛け 体を起こす

私だけが知っている
冬の間だけの繋がり


Entry31
月の出に
満月うさぎ

月の出に君の言葉一つ 響くは雨のごとく

本当はそれほど重要ではないから
あまり泣かないようにしている
言葉にすると結構軽いから
あまり言わないようにしている

これを不幸と誰かが言ったけど
そうでもない という直感

月の出に君の言葉一つ
たわいないと思える言葉一つ
あとからなら笑えるだろう言葉一つ

でも私泣くかもしれない
私 泣くかもしれない

好きという感情
好きという感情
好きという激情
好きという 多分絶望も少し

月の出に君の言葉一つ 響くは風のごとく
強く 強く

私は強くなりたい


Entry32
千字と君の文隠し
さと

好きなんや。
大切とまではいわん、けれど、楽しいやん。

大っきなもんは太陽や
光りがいっぱい、いっぱいや。

大っきなもんは月や
明かりがいっぱい、いっぱいや。

大っきなもんは星や
煌きがいっぱい、いっぱいや。

大っきなもんは海や
輝きがいっぱい、いっぱいや。

街のネオンも、電信柱の外灯も
やっぱりそれより、大っきんよ。

でもな、でもや。

オイラはそこに隠れた君が好きなんや。
小さく揺れる光りが好きなんや。
小さく揺れる明かりが好きなんや。
小さく揺れる煌きが好きなんや。
小さく揺れる輝きが好きなんや。

そんな蝋燭みたいな千字が可愛いんや。
そこに隠れた温かみが愛しいんや。
だから書くんや。
蝋燭の火でもかまわんから。
消えそうになってもかまわんから。
蝋燭の火ならオイラでも守ってあげられるやん。

好きなんや。
大切とまではいわん、けれど、けれど、嬉しいやん。


Entry33
ほろほろ
佐藤yuupopic

靴が
急いでしまう
足 もつれる程
電車とホームの隙間に、注意

南瓜を、
煮付けたと云う
少し皮を焦がしてしまったのだと
電話口から
香ばしい匂いが
ほろほろ
漂うようだ と
思う

いままで、
あんなに欲しかった
ずっと
あんなに、欲しかった
ものが
今夜から

灯りを点けて
俺を、
待っている


Entry34
おわりかた
大覚アキラ

これでいいんだ
そんな科白を吐きながら
雨の降る薄汚れた路地裏で
血塗れになってくたばりたい

最後に血塗れのおれを抱き締めるのは
彼女ではなく
恋人でもなく
愛人でもなく
ましてや
妻でも
母でも
娘でもない
それは絶対に
美しい情婦でなければならない

音もなく降りしきる
硝子玉のような雨に打たれながら
最愛の情婦のやわらかな腕のなかで
おれは片頬だけに微笑を浮かべて
ゆっくりと瞼を閉じるのだ


Entry35
歌?
下圭

レンガが熱い真っ赤な砂になって、私の手からすり抜けていく。

私は受け止めきれずに懐かしさを海に求める。

生き物たちは私に何をくれただろう。

手にぶら下がった鞄には何も入ってないと言う。

暗いくらい建物にはきっと切れかけた蛍光灯だけがあって

手の触れる壁の冷たさ。

足音のような私。

ママがくれたプレゼントは糸くずになってしまった。

手にぶら下がった鞄には何も入ってないと言う。

拙いことは多すぎた。今では眩しすぎて赤すぎて何も見えない私がそこにいた。

希望はぐるっと回って戻ってきた。悲しみも苦しみもぐるっと回って戻ってきた。

私は愛を感じる暇をいただき、それに没頭することで今を忘れた。
私は愛を感じる暇をいただき、それに没頭することで今を忘れた。

生き物たちは私に何をくれただろう。

私は愛を感じる暇をいただき、それに没頭することで今を忘れた。

私は愛を感じる暇をいただき、それに没頭することで今を忘れた。

至らないことは多すぎた。今では痛くて泣けてきて目も開かない私がそこにいた。

私は同じことを繰り返しているのだろうか。

手にぶら下がった鞄には何も入ってないと言う。

ママがくれたプレゼントは私自身だったのだ。

暗いくらいトンネルにはきっと届かない希望への道しるべだけがあって
気を保つ故の不安。

糸のような私。

ママがくれたプレゼントは糸くずになってしまった。

困りきった私は最大限のお願いをした。

そうして、私は愛を感じる暇をいただき、それに没頭することで今を忘れた。

レンガが熱い真っ赤な砂になって、私の手からすり抜けていった。

私は受け止めきれずに懐かしさを海に求めた。

気持ちは糸のようにいつかプツンと切れた。

困りきった私は卑怯な道を見た。

そうして、私は愛を感じる暇をいただき、それに没頭することで今を忘れた。

そうして、私は愛を感じる暇をいただき、それに没頭することで今を忘れた。


Entry36
稜線
植木

男達の
体から

湯気が
立上る

雨の朝


Entry37
欲しいもの
瑞松花

 或る冬の朝、目を覚まし
 *雪の森を見に行こう*
 君が感動してたから。
 
 同じことをすれば、同じものが得られる。


Entry38
スカートの中


女子高生のスカート
できる限りの短さで
希望や明日を
振りまいてあげる

女子高生のスカート
みんな一緒だし恐くなんてないから
希望や明日を振りまいてあげる
タイトスカートのOLさんには
できやしないだろうから

女子高生のスカート
惹かれるのは
短いからじゃない

女子高生のスカートには
希望や明日が
詰まっている


Entry39
リアル
氷月そら

ふたりの指をからませ
触れた指先から 体温がとけていく
離れないよう ぎゅっ、とつかんで
今 ここにいるあなたを感じる

一歩近づく

あなたの匂いが鼻をくすぐる
思いきり 息をすいこんで
頭のてっぺんからつま先まで
まつげのいっぽんいっぽんまで
とにかく あたしの体の中ぜんぶを
あなたという空気で満たす

そうして
ここにいるあなたが現実だと感じる

そうして
あたしのいるこの世界が現実だと感じる


Entry40
丸みを失い、消えないように
空人

寝ても覚めても彼女のことを考えている
食事をするときも 眠る前も トイレに立つときも
しかし道ばたで 進入禁止の 丸い標識を見ると
赤と白のサイレンが交互に鳴り響き その前に立ちすくむしかないのだ
彼女をまっすぐ見つめているのに 彼女はうつむいている
彼女をまっすぐ見つめているのに 彼女はうつむいている
彼女をまっすぐ見つめているのに 彼女はうつむいて 涙を流す

寝ても覚めても彼のことを考えている
電車に乗るときも シャワーを浴びるときも 鏡を見るときも
でも道ばたで 駐車禁止の 丸い標識を見ると
彼の心に少しも留まれないのだと 手の内にあるアパートの鍵を握りしめる
彼をまっすぐ見つめているのに 彼は足下を見つめている
彼をまっすぐ見つめているのに 彼は足下を見つめている
彼をまっすぐ見つめているのに 彼は足下を見つめて 風のように笑うのだ

届かない想いは いったいどこへ消えていく
届かない想いはいったい どこへ消えていくの

たとえばそれは 食器に当たったフォークの カチャカチャと鳴る 音のように
たとえばそれは 夕暮れを渡る冬鳥の キューキューと啼く 声のように
色鮮やかに咲いては すぐに消えてしまうのだ 残り香のような 未練も なく

雨が降っているのを 喫茶店の窓から見つめている
丸い波紋が 花のように開いては 消えていく

雨が降っているのを 車窓から見ている
窓についた水滴が 移動するたびに丸みを失い 細い筋になっては 消えていく

届かない想いは いったいどこへ消えていく
届かない想いはいったい どこへ消えていくの

行き先がわかったとして それが何になろう
届かない想いを追いかけて それが何になろう
しかし でも しかし でも

いまはそれしかできない 消えないように 行かないように
そっと胸の内に抱いて そっと 胸の内に 抱い て

丸みを失い 消えないように


Entry41
2000年後にこんな悲喜こもごもな狂想曲を引き起こすなんて、バレンタイン氏も罪な お人だなー(^^;A
春九千

一年で一番チョコが豊富な日
男一人ぢゃ買いにくいけど(;.;)


Entry42
『ねこ in the darkness』
橘内 潤

ねこは箱へと入れられた
そして気づいた

――いまボクが
  生きているのか 死んでいるのか 
  知っているのは このボクただ一匹――!

――ボクはこの箱のにゃかで
  ボク自身の支配者にゃのだ
  ボクはボクを決定するのにゃ――!

シュレディンガーが箱を開けると ねこは消滅していた
遠くでユークリッドが ぎゃふんと吠えた


Entry43
頭は西向き尾は東向き、右手と左手は南北へそれぞれ引き裂かれるように伸ばされている
ぶるぶる☆どっぐちゃん

色々なことを忘れてしまったのと
色々なことを忘れられないのは
どちらが不幸でしょうか

なんてことを自動販売機が聞いてきて
だから、ああ、どちらも不幸だろうな
とは思ったけれど
そのようなことを解ったような顔をして
その顔は何せ二十三種類のコールドドリンクとホットドリンクが完備で
いったい自動販売機などにこんな顔をさせている奴は誰だろうとか
自動販売機にこんなことを聞かせる奴は誰だろうとか
第一質問の内容が気に入らないとか
とにかく腹が立って
だからぶん殴ったら
がらがらと二十三種類のホットドリンクとコールドドリンクが
出てくる出てくる出てくる

もしかしたら、当たりを引いたのかも知れない
生まれて一度も当たりを引いたことは無かったけれど
やっと当たりを引いたのかも知れない

色々なことを忘れてしまったのと
色々なことを忘れられないのは
どちらが幸福ですか

自動販売機はばちばちと火花を散らし
がらがらとジュースを吐き出しながら
そのようなことを言っていた

まだ聞き方が気に入らなかったが
がらがらと吐き出されたジュース達が
東と西と南と北を綺麗に向いていたから
良しとする

缶コーヒーを一本だけ拾い
駆け出す

今日もまた雨だ


Entry44
迷いの森
フウソウアカネ

萌える緑は 残酷ね
私を苦しませ 嘲笑うかのように 私を惑わせるから

ふら ふら と 足取り重く

それでも尚 未だ見ぬ人の優しい手の温もりを夢見る

私の手のひらに残るものは何?

はらり ひらり と 舞う蝶よ
私を どうか導いておくれ
ここは私には広すぎて
求めた筈のものは何処な2燒ウい

忘れられぬ残像だけが 記憶から再び産まれるだけ

これが夢ならば お願いよ 早く眠りから覚まして頂戴

まるで迷路に立たされたようで
私の頭の中は 霧

ああ 私の生きる意味は
ああ 愛すべき人の意味は

探すけれど 見つからない
ひらうけれど 落としてしまう

奈落の底へ落とされたようで
私の心の中は 霧

ああ 私の赤い血は
ああ 何処から巡るのでしょうか

涙は未だ暖かい

私は生きているのですね
涙が一雫 大地に落ちゆく
そして 森は風と共に唸り

赤い実を私に落とす