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Entry1
消去願望成れの果て
要らないと思ってた
知らないと思ってた
存在自体が意味不明で
存在理由が理解不能で
生きることが怖くて
死ぬことが怖くて
「わたし」が
初めからいなければ
全て丸く収まるのにと
闇に混ざろうとして
白く浮かび上がる腕を
明らかにそこにある脚を
消してしまいたかった
それなのに
誰かを好きになり
誰かを嫌いになり
嫌われることを怖がって
好かれることを喜んで
消えないようにと
いつも願っている
五月原華弥
http://www7.ocn.ne.jp/~kakuu/
サイト名■華空羽 -Imagenary Poet-
文字数177
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Entry2
経験値
ふう、なんとか昨日は醜態を晒さずに乗り切った
ふう、なんとか昨日は誰も傷つけずに生きのびた
ふう、なんとか昨日は選択を間違えずにやり遂げた
人生はいつもいつも綱渡り
気を抜いたら僕は僕の目指す者になれなくなる
ちょっとまて
こんなことをもうずっと前から繰り返しているじゃないか
僕はちっとも前に進んでいないんじゃないのか
ああ、僕達がロールプレイングゲームの主人公のように
経験を積めば積むだけ着実にレベルアップしていけたなら
僕は今頃、大魔王を倒してお姫様と結ばれていたかなあ
有機機械
http://www,d2,dion.ne.jp/~syuki
サイト名■ORGANIC MACHINE
文字数11
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Entry3
風
風が泣く
すべての悲しみと愛しさと憎しみを抱いて泣く
笑っているけれど
きっと 悲しい
泣いているけれど
きっと 愛しい
風はすさむ
乾いた大地をさっ、と駆け抜けてゆく
後には何も残らない
木はいくつの涙を流しただろう
けれどそれは人に聞かれる事なく消える
もっと大きなものが消える前に気づいてほしくて
風は唸る。吼える。そして泣く。
Entry4
葡萄
『葡萄』
口の中で甘酸っぱい果肉がプチッと弾けた。
今年初めての葡萄は口にいれた瞬間「すっぱい顔」をしてしまうような味で、
葡萄には申し訳ないが全部は食べられなかった。
母が買ってきたものらしく、私が食べた数日後びっくりするくらい甘く変身を遂げたらしい。
私はタイミングが悪い。
二度目の葡萄は甘く、ほろほろと顔がほどけていくような味がした。
お皿に積もっていく紫の花びら。
夜中に一人口にする甘美な瞬間。
満たされていくのは、お腹なのかこころなのか。
弾ける果肉。
降り積もる紫の花びら。
うっとりと眺め、
そして最後には葡萄の骨が残る。
残酷な気がして、ありがとうと思う。
夜風が気持ちいい。
また葡萄がひとつ死んだ。
そして
私が、また少し生きた。
Entry5
瞳に映るあの日の追憶
あの夏の日を覚えていますか
眩しすぎた太陽に思わず目を逸らしたことを
波の上を滑るように吹いてきた風と潮の香りを
あなたは覚えていますか
私でない誰かの夢を見ているあなたの寝顔
あの夏の日に見せた笑顔よりも愛らしいから
あなたの唇が誰かの唇を求めていることもわかるから
あなたはきっと偽りではないと言うでしょう
あなたはきっとこの愛は間違いなく確かなものだと言うでしょう
でもね、私にはわかるの
あなたの心の中に私がいないことが
わかってしまったの
だからせめてこの一晩だけでも
あなたの腕に抱かれて眠りたい
Entry6
白昼夢
切ない夕暮れの
ビルの狭間で
幼い少女が見た白昼夢は
刹那にも似たその鋭い瞳で
マイルドセブンをくゆらす
あなた
真夏の光の中の
トライポッドの上で
幼い少年が見た白昼夢は
真っ赤な紅を刺して
生温かい手錠に縛られた
私
幼い少女と幼い少年が
出会った時に見た白昼夢は
吐き気を催す熱気と
マイルドセブンの香りが残る部屋で
戯れる
私とあなた
Entry7
街
せわしなく動く時間
誰も止まってなんかいやしない
季節の変わり目すらあるようでない
こんな世界に憧れはあるのか?
ただむやみに生きているようで
この世界が嫌いなんだ
当たり前のようにみんなは歩き
僕は追いつくことすらできない
「無理することはないんだよ。」
騒々しい非透水性面の隙間から
その声は僕にだけ聞こえたようだった
(そうだ、この現実が僕の理想なんかでは決してない)
「大丈夫。安っぽい言葉に聞こえるかもしれないけど、
君が君自身を見失わなければ大丈夫なんだ。」
力強いその言葉に僕は小さくうなずいて
窮屈そうな空を見上げた
Entry8
木の下、落葉
はらはらと
薄桃色の花びらは
この手を抜けて秋風に
ひゅウと飛びゆく
見上げれば
衣を捨てた木が一つ
灰の曇天寒さ染む
彼方の花の桃色眩し
相川拓也
http://hp.vector.co.jp/authors/VA018368/
サイト名■iKawa's Telescope
文字数62
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Entry9
雨に濡れる君の肩
あの日見た雨は
君への想いと一緒に
スベテを洗い流してくれると
思っていた
アタシはあの日
急いで自転車を走らせていた
手にも肩にも雨が
手加減なく降ってくる
制服も髪も既に濡れていた
雨が強くて強くて
前がよく見えなかった
だけど
それだけは見えた
君と彼女が仲良く歩いているのを
君が傘を持ちながら
彼女を傘の中へちゃんと入れてあげて
何か楽しそうに話ながら歩いているのを
アタシはすぐに視線を外した
見たくなかった
アタシは君が好きすぎて
好きすぎて
君以外なんて見えなかった
ずっとずっとそうだった
だからあんなところ見たくなかった
これを誰かに話したら
「すぐいい人見つかるよ」
と言われるだろう
だけどそうじゃない
今はあいつしか見れなくなっているのだから
そんなに簡単に
アタシの気持ちは変われない
あの日見た雨は
アタシの脳裏に強く焼き付いて
離れない
いつかまた降る雨の日も
楽しそうに彼女と笑う君の姿を
アタシは見るのだろうか?
Entry11
DEAD END
一人、in部屋
べっつにいつもと一緒だねえ
点いたテレビ さーびしそう
んん? 寂しいのはテレビかな?
どうでもいいんだけど
ブンブンエアーコンディショナー
部屋をキンキンにしようと
頑張って give up
負けて唸ってカビ
撒き散らしちゃったり
きったねーな、そこ
埃ほこる隅 灰色
本重ねて雪崩れる日
sun set
moon
暗くなる くらくなる
雨? 降り始めたのか
cold cold cold
エアコンいんないし
ぷつ、put off だっけ
ゆれるポスター 止まるのに
視界 ゆれて クーラクラ
ぺちゃんこの布団に パタン
バイバイ 今日の日よ
今日も今日とて dead end
つけっぱなしテレビ バラエティ
ああ、そこからはもう
嘲笑しか聞こえない
明かり 消して
テレビ 消して
もぐり もぐる 夢
途切る繋がり 今日と明日は別物
dead end は今日
明日は きっと
Entry12
夢の葉
この世界で暮らしていれば
おのずと答えは見えてくるものだ
彼女と暮らした日々も
今でも夢ではないかと思うときがある
あの時話した映画の内容や
あの日二人で選んだ青いカーテンも
今でも消えていく
泡のように
この世界で過ぎ行く人々も
いずれは最期が来るものだ
このアンティークの時計も
いずれは動きを止める
あの時歩いた小さな石橋も
あの日二人で遊んだ遊園地も
今でも思い返すことは出来ない
流れの速い河の水に乗って
夢を見るのは自由だ
だが現実を見なければならない
この青い空に浮かぶ雲も
この小さく路上に咲く花も
いずれは動きを止める
このセカイの中で
終わる
そして 生まれる
Entry13
縁側にて
途切れ途切れに浮かんでくる
風景の欠片
あのとき
空は何色だったでしょうか
積み重なる思い出たちを
掘り返してみたら
貴方の姿が浮かんできました
でも
どうしても思い出せないのです
貴方はあのとき
どんな表情をしていらっしゃいましたか
笑顔であったら良いな
断片的な世界の内で
心からそう思います
Entry14
胎児落下スル時
かくてわれ
白昼の女性器に
神無き論者の手、入り
不能の胎児掻き出すの見たり
<胎児落下する時>
淫雨すめり
また淫雨しとりしとり
降る降る
犬岡 七無(いぬおかななむ)は右手の指無し
幼少期さらわれ犯され
その日より指退化し
消えた
それから七無は口もきけぬ
あの世界中の雑多の光集めました白昼の暴力ハレイシオンの中に
声 落としましたのです
七無チゴクの中にいて
ホントのチゴクチゴクの中にいて
陰風ざらざら
また陰風ざわりざわり
吹く吹く
沙羅双樹のビル 林と林と(りんとりんと)
そしてこの町の風向き変えてしまい
七無に乾いた風届けぬ
アタラシイ百貨店
殺生石に見立て
玄翁で叩き壊そうと
しかし利き腕の指無いので
よく動かぬ左腕で
ティキンティキン
力弱く壁叩く
あっという間に人々駈け付け
七無走り逃げ逃げて
涙しろり
また涙そわりそわり
流る流る
殺生石の頂きに立ち
ついに胎児 飛び下りる
割れ割れたスピーカーから出る
やはり安らぎの無い叫喚の風の音
最後ニ聞イタ
落下し壊れたそれを
覗き込む人達の顔顔
七無と同じように光無く
同じように貧しく
同じように憔悴し
同じように哀れで
同じように同じように
涙しろり そわそわり
壊れたそれに誰かが
いや、神が
輪廻のリンネル そっとかけました
ヨケマキル
http://www5.ocn.ne.jp/~yoke/
サイト名■hAsAmi
文字数504
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Entry15
必要なヒト
あなたがいいとおもうモノコトをぜんぶ
わたしもいいとおもうことができたら
どんなにすばらしくてつまらないだろう。
必要な女(ヒト)になりたいの。
必要な男(ヒト)になってほしいの。
Entry16
君の僕
君が生まれた時に 僕も生まれた
君のために 僕は生まれた
ママにいっぱい 愛情をもらって 君は育った
僕もそうやって 君と一緒に育った
君がいじめられる時に 僕は傍にいた
君が泣いている時にも 僕はいた
君が大きくなって 僕も大きくなる
海が荒れ狂う時も 月が沈む夜も
僕はずっと君の傍にいた
ガラス窓を砕き 心の叫びをあげる
赤く人を傷つけ 黒く自分を殺し
あてどもなく歩き続けた
信じることを拒み 空っぽが一番いいって
人を欺き 太陽に背を向ける
どんなに君が 涙を拒んでも
どんなに君の手の震えが 真実を拒んでも
拒む心が無くなっても 僕はずっと君の傍にいる
君が悪に染められて 僕も悪に染められる
だけど 悪の色に染められても 決して僕は変らない
君が望んだ道であろうとも 僕は変らず
ずっと君の傍にいる
君が淋しくて 死んでしまいたいなんて思っても
君が年老いて 死んでしまいたいなんて思っても
僕がいるよ ほら 僕が連れていってあげる
人を信じて裏切られても 僕は君を救ってあげられる
君が生まれた時に 僕も生まれた
君のために 僕は生まれた
ママにいっぱい 愛情をもらって 君は育った
僕もそうやって 君と一緒に育った
君が空を仰ぐ時に 僕は傍にいる
君が雨に濡れる時にも 僕はいる
君が大きくなって 僕も大きくなる
海が荒れ狂う時も 月が沈む夜も
僕はずっと君の傍にいる
そうさ僕は君の愛
さと
http://members.goo.ne.jp/home/kei5yns
サイト名■光のトンネル
文字数585
↑TOP
Entry17
グルグル
グルグル回って
いつの間にやら元通り
ピンクと緑のストライプ
グルグル回って
薄気味悪い茶色になって
食べてみたら
結構イケるぞオイ
と思ったら腹がグルグル
地獄の一週間が始まるのである
月曜日は耳鳴り地獄
火曜日は歯磨き地獄
水曜日はヘソから蟲がわいてきて
木曜日に人面瘡ができて
金曜日はチェーンソーを買いに
土曜日はハルシオンを買いに
日曜日は●●●を買いに
愛とか恋とか
そんな定食メニューみたいな言葉
豚の餌にもならない
そんな言葉で詩を書くヤツには
おれが呪いをかけてやる
そしてまたグルグル回って
贖罪の一週間が訪れるのである
おそらく
雨は夜通し降り続いたのだろう
砂浜は湿って重く
遠い記憶の中の接吻を思わせる
季節外れの海辺には
あたりまえのように誰も居る筈もなく
打ち寄せては消え
消えてはまた打ち寄せる波だけを
ただ眺めていた月曜日
魔除けのお札をプリンターで出力し続けた火曜日
それをフリマに売りに行った水曜日
それを海辺で泣きながら燃やした木曜日
それで大火傷した金曜日
それぞれの土曜日
ソ連邦に行ってみたくなった日曜日
気が触れたフリなんか止めるよ
ゴメン
おれが悪かった
昨日の夜中
酔っ払った勢いで
ライフ・イズ・ビューティフル観ちまった
泣いちまった
大泣きしちまった
泣いた後で気付いたんだけど
グルグル回ってたのは
おれじゃなくって
オマエだったんだな
Entry18
音のない旅
病院ゆこう、なんて
ゆわないで
わたし、病気じゃない
なンも見えなくなるつまんないだるい薬、
もう、
飲みたくない
見せたいとは思わない
あなたに
この景色、
たぶん、きっと、分け合えないと、
思う、から
気が散るのと、違うの
視点、
乗り移って、瞬間、
無音、
それから
何処までも、旅
また、ゆくの
あなたの顔ばっか、見てらんなくなる
ごめんね
急上昇
すっごい高いとこまで、
鳥と違うトび方
ビュん、と
越えて、
タワーの天辺まで、
高層作業員青年のアタマん中、銀色、ベビーピンク、かなりロマンチック、
高架くぐって
一番ホーム、電車、パンタグラフ、ダイヤ型、ごと通過
喫茶店、
紅茶にほどける角砂糖の、泡、
は、金色
目抜き通り
誰の、か、わかんない
肩越し
褪せたグリン
バス、のタイヤ、
水たまり、踏み越えて、跳ねる、飛沫
路地、
誰かの庭、
蓮の葉にでっかいしずく、
きらきらり、
再上昇、
俯瞰
開発跡地
ビルの欠片
更地に落ちる、影
乾いた風、
砂埃
わたし、ずっと昔の
今日
生まれたの、て
不意に、
思い出す
途端、
急降下、
二階の窓、
五センチの
隙間
から、滑り込む
柔軟剤、かおる、シーツの皺に、
光みたく
ふんわり
着地
ああ、
意識
やっと、
あなたの指先に、
ゆうべのチョコミントアイス
味の、くちびるに、
ただいま
も、いちど
声に出さず、ちっちゃく、
ただいま
わたしの、こ、ゆうとこ、きらい、だったら、
全部、きらい、なのと
いっしょ
そんなかなしい顔
よけい
かなしくなるから
しないで、
なおんないし
なおす気ないの
どうしていいか、わかんない、
ごめんね
Entry19
今宵の雨と
落ちてくる雨に
心通わせ
ぽつりと濡れる
元気がない時は
無理に笑う事はない
降り始める雨に
耳を澄まして
ひっそりと呼吸する
泣けない夜は
無理に笑う事はない
泣くのも笑うのも怒るのも
心の準備が万端じゃないと出来ない
だから今宵はただゆっくりと
この雨と共にあればいい
Entry20
手遅れの恋
ある日 あなたを街で見かけました
あなたは幸せそうに男の人と歩いていました
ある日 あなたを街で見かけました
あなたは花嫁姿で街の中を走っていました
僕はあなたを追いかけました
近くの教会へあなたは向かっているようでした
教会へ着くと手遅れでした
これが僕の恋というものでした
Entry21
をどる木偶
満身の愛をも
受けとってくれぬをまへ
プラステックの部品が
抜けているのと思ウ。
迷いナイ目付きで
鬨(とき)のナイ満ち潮
ありふれた感触、だなんて
心にもナイコト、を。
千年で一人
(接点は一つ)
塩田でひらり
(喧伝のワゴン)
接辺はABD
(決戦は他人事)
をどる木偶だ君は。
ながしろばんり
http://www5a.biglobe.ne.jp/~banric/equinox/
サイト名■Equinox.
文字数127
↑TOP
Entry22
マーブル模様に溶けても 〜French Blue Walking
昼近くまで寝てしまって
さして慌てるでもなく
会社に電話をかけた
寝起きの声は調子が悪そうで
課長は「大事にしろよ」とぶっきらぼう
まぶたが腫れて くまもある
ひどい顔
仮病なんかじゃない
ほんとうに頭が痛くて 少し 気持ち悪くて
何より 傷ついた
ひどい言われようだ
化粧もせずに プーマのジャージを着て
アラン・ミクリの メガネをかけて
インディゴブルーの 帽子をかぶって
お気に入りの パトリックのスニーカーをはいて
何も持たずに 散歩
ドアを開けると
ビュッ と乾いた風が吹いて
世界は キラキラと輝いていた
マンションの駐車場には
あたしのキャトルしか停まってない
堤防には 犬を3匹つれたおじいさんが歩く
しばらく 光に慣れるまで じっとする
今日 やらなきゃいけない報告書
誰がやるんだろ いっぱいあるのに
あたしは
堤防を
歩く
歩く
少し
早足で
歩く
歩く
課長の
あたしだけに
見せる
笑顔
と
指輪
を
振り切って
歩く
歩く
オッと
石につまづく
でも
おじさんみたいに
文句なんて言わない
つまづいたきっかけで
あたしは
走る 走る
意味もなく走る 走る
営業二課の 佐々木くんを浮かべて 走る
佐々木くんが好きな 入社1年目の宮沢さんの
初々しい はにかみ という演技 を浮かべて 走る
宮沢さんの後ろにいる 皮の表紙でできた 重いバインダーを9冊分
両手いっぱい抱えて あたふたしている 入社10年目の あたしを
思い浮かべて
走る走る走る
踏切が鳴らす警告音
キツキツキツ と跳ぶバッタ
赤より紅い彼岸花
クモに抱きしめられたアゲハチョウ
その向こうの 青い空
はあはあ と息を切らす あたし
あんまり全力で走ったものだから
眼が乾いてしまって その乾きを潤すために 仕方なく
奥のほうから 涙が出てしまったわ
いつからそんなに理屈っぽくなった って?
佐々木くん もういいよ
あたしは初めから
初々しく はにかめないもの
ああ 目の前がマーブル模様に溶けていく
くやしさとあせりと劣等感といっしょに
ああ 目の前がマーブル模様に溶けても
あたしは しつこく生きてやるんだ
空人
http://www.geocities.co.jp/Bookend-Shikibu/6650/top.html
サイト名■白夜のカフェ。
文字数828
↑TOP
Entry23
70km/h超えの黄昏
赤信号が遠ざかる
落ちて来そうな積乱雲
黄昏の色が侵食し始めた逢魔が刻
間隙から覗く
飛行機雲だけがやけに白い
横目に過ぎる
遊園地の観覧車に灯が燈る
遠くだけは良く見える
何故か涙が滲む
私の世界だけの大洪水
愛車は箱舟にもならず
水没してゆく
前を往く
横を過ぎる
後に去る他の車たちは
風景でしかない
赤信号が遠ざかる
車内に
車外に警報が鳴り響く
滲んだ世界の中で
唯一覚醒した事は
何から逃げているのか分からない
それだけだった
でもスピードで逃げられたら
何にも縛られず
一瞬で年を取り
そのまま眠りに付けるかもしれない
アクセルはもう踏み込めない
赤信号が遠ざかる
周りが赤く点滅する
車外に警報が鳴り響く
ああ
私は束縛されてしまうのか
ならばいっそ……
Entry24
『リヴァイアさん』
万人の万人のための闘争はよくないので
国家の国家のための戦争をしよう
テロを許すなw
Entry25
逢いたい
久しぶりに顔を見たら
心臓が心臓じゃなくなっちゃいそうなくらいに
一気に湧いてくる
感情
今度逢えば
全てが始まってしまいそうだから
尻込みしてしまう
けれど
寝ても覚めても
脳みそを占領されたままで
引き返すことは
できない
Entry26
アンモナイト
雨戸の外で
月は燃え尽きてしまった
私は棚からアンモナイトをとって
小さな金槌と釘とをもって
一つ叩く
削れた欠片の断面から
やわらかい雨音がきこえる
乳白色の感触と
暗雲のこもった匂いとが
産毛の裏に入りこんでくる
それがあんまり甘い
黄色い蝶々のように
草と空をまぜながら飛んで
私はガラス玉のうちにいることに気付く
また一つ叩く
黄色いアンモナイトから
つめたい悲鳴が流れて
太古の海女の
羊水が流れだして
私の腹を濡らしていく
きっと
雨戸の外に
夜明けが忍び寄っている
私は涙をこぼして
全身に育てるのだ
ひしゃげた花の
身震いが
鼓膜の寸前できこえる
Entry27
スロウ ランナー
また、走ろうかと思うんだ。
今度は競技じゃなくて、
かと言って健康のためでもなくて。
本当に大した事じゃないんだ。
近所を少し回って帰って来るだけだよ。
すぐそこの並木道とか、
向こうの川沿いとか。
秋の気配を感じたら、
急にそんな気分になったのさ。
何て言うか、
ふと思い出したような、
そんな感じ。
風がもうこんなに冷たくなっていたなんて、
全然気が付かなかったよ。
雲だって、もう夏とは違う。
そう、さっき、虫の声を聞いたよ。
こんな都会にもちゃんと居るんだね。
驚いた。
そんな訳で、
夕暮れ時を目掛けてのんびり走ろうかと思うんだ。
それからね、変なんだけどさ、
走る事にちょっとワクワクしてるんだ。
ホント、どうしたんだろうな、俺。
押入れを開けてみてよ。
昔のマラソンシューズ、
まだ取ってあるかい?
8148(略)ソラン
http://www.geocities.co.jp/Bookend-Kenji/8364/toppage.html
サイト名■四畳半シネマ
文字数331
↑TOP
Entry28
月と群雲
爪のように薄く透ける月が、若い犬の死体を照らす。犬の名を群雲。群雲と呼ばれた
ACD (オーストラリアン・キャトル・ドッグ)。オーストラリアの牛追い犬、の意。
ちぎれ飛ぶ夜の雲に似た青灰色の毛並みを持ち、気が向くと、主人のふくらはぎに
冷たく湿った鼻をぬうっと押しつけて喜んだ。
乳光色の牙。斑な舌。広すぎる額。美しくはなく。醜くもなく。
馬鹿で頑固で頑丈で、疲れと恐れを知らず、しばしばドブに落ち、女児をつけ回した。
ゴミ箱を蹴飛ばし、屋根の上へ駆け上がっては、月に唸り、月に祈った。
ちっとも甘くない甘噛み。泥だらけにされたスカート。穴の空いたパンプス。
デートの日は財布を隠された。
追ってきて体当たりされた軽自動車のドアは、まだへこんでいる。
壁の穴のひとつやふたつ修理していっても、罰はあたらないと思うぞ。
さらば、オーストラリアの牛追い犬。群雲と呼ばれた犬。天国では牛を追え。
Entry29
冬の日
トランプのカードを一枚買ってくる
ピアノの譜面台に載せ
それを見ながら
一曲作る
とても悲しい曲が出来てしまう
とてもお客の前には立てそうもない
「どうしよう」
「仕方が無いね。ほら、あたしの横にきて泣きなさい」
「ごめんね。ありがとうね。ああ、またクラブのボスに、怒られっちまうね」
「仕方が無いね」
散々泣き腫らした後の真夜中、あたし達は出掛ける
大きなビルの壁には吹き飛ばされてきたゴミ袋が沢山並んでいて
まるで白い仏像のようだ
それをあたし達はコーラを飲みながら
全てを虚構化してしまうようなキラキラとした冬の光が照らし出すまで
見上げる
Entry30
豊穣
肩越しに眺めていたのは
一面の秋桜
蜻蛉の交わり
たなびく箒雲
嘘。
貴方なんて居なかった
Entry31
夕焼け小焼け
緑葉落つる紅の 川面眺めて 波描く
生命の息吹 紅に
染まる世界は 鎖のやう
僕 空 大地 鳥 川 虫
全ては紅 命は紅 世界は紅
僕も紅とともに 生きている
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