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第6回中高生3000字小説バトル Entry4

純白の羽根

真っ白な蝶が、わたしを誘うかのように飛んでいた。
なんで・・・・こんなところにまで来ちゃったんだろう?
辺りは、森。木々がどこまでも続いている。
地面には、ところどころイバラがはえていて、いちいちそこをよけなければいけなかった。
しかも、ゴツゴツした岩もあるし、枯れて倒れた大木もころがっている。
こういうのを、ホントの山道というのだろうか。
わたしが、あの純白な蝶を見つけて、ここまで追いかけてきて、どれくらいたったんだろう?
まだ五分くらいしか走っていないかも。
だけど、三十分も走っていた感覚にも思えた。

私は、三日ほど前からお母さんの実家の、この田舎へきていた。
そして、なんとなく、田舎の道を歩いてみたくなって、外にでた。
そしたら、あの真っ白い、純白の羽根の蝶を見つけたんだ。
その蝶は、わたしの周りを一周フワリと舞うと、ガラスの欠片のような、きれいな銀色のりんぷんがあたりに散った。
そして、ほんの一瞬だけ。
ホントに一瞬だけ、その白い羽根が、雨上がりの虹の色になった気がした。
それになぜか惹かれて、自然と蝶の方へ体が行ってしまった。
そして、こんなところにまで。

「待って・・・・ちょっとくらい止まってよっ」
わたしは、走りながら声をはりあげる。
そんな私の言葉が、分かるはずないけれど、蝶は一回転しながらフワリと舞って、銀色のりんぷんを散らせながらまた森の奥へと飛んでいった。
つられて、わたしの足も速くなる。
「待って・・・・待ってよ・・・・・」
息もきれてきた。スピードが落ちていく。
我慢できなくなって、とうとう、ゼーゼーとすわりこんだ。
当然のことながら、蝶は、またフワリと舞うと森の向こうへ消えていった。銀のりんぷんをのこして。
「あ、ちょっと待って!」
わたしは腰をおこすと、今度はゆっくりと歩いていった。
もう走る気力もあまりなかったし、歩いていれば、もしかしたらあの蝶が葉っぱにとまっているのを見つけられるかもしれない。
しばらく歩いたけれど、蝶は姿を見せなかった。
「あんまり奥へ行くと、帰れなくなるかもしれないし・・・。でも、どうやって戻ればいいんだろう?一直線に走ってきたような気もするんだけど・・・・」
わたしは後ろをふりかえった。
ダメだ。森が広がるばかりで、あの田舎の町は全然見えない。
薄暗くて、樹のほんの少しの隙間からはいってくる日光だけがあかりなのだ。
その時だった。
フワッと、春風のような風が頬をなでた。
「なに・・・・?」
思わず、前を向く。
そこには、木製の椅子に座っている、女の人がいた。すごく美人だ。
銀色の髪の毛に、純白のドレスを身にまとった人。
真っ白なドレスが目をひいた。純白のウェディング・ドレスを思わせるような服だった。
「あの・・・・あなたは、誰・・・ですか?」
思わずそんな言葉が口から出た。
あまりにも唐突な質問にも関わらず、その女の人はニコリと笑い、こちらへ近づいてきた。
そして、あなたは?と聞いているように、手でしめした。
「わたしは・・・・サツキです。ここは・・・どこなんですか?」
質問を変えてみた。
それでも、女の人はニコリと笑うだけで、何も言おうとしない。
優しそうな微笑み。
その微笑みに向かって、わたしはオズオズと、また違う質問をしてみた。
「どうしたら、この森から出れるんですか?どうしたら・・・帰れるんですか?」
すると、女の人は、すこしだけ驚いた表情を見せると、また、すぐニコリと笑って、わたしの頬に手をふれた。
さっきみたいに、春風が頬をなでたようだった。
そして、その女の人の真っ白なドレスが、あの真っ白な蝶のように、ほんの一瞬。
ホントに一瞬だけ、雨上がりの虹のような色になったかと思うと、わたしの体を、暖かい風がつつんだ。

―――――・・・・・

わたしは、田舎の町の道にいた。
ほんの何分か前、ううん、何時間だったかもしれないけれど、歩いていた場所に。
何も変わっていない。何も変化はない。
わたしも、森のなかを走ったにもかかわらず、泥よごれ一つない。
ただ、なにか銀色の欠片のような粉が、パラパラと体についていた。
「なんだったの?あれは・・・あの人は――――」
わたしの頬には、まだ、あの春風のような感覚が残っているような気がした。

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