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第5回中高生500字小説バトル

エントリ 作品 作者 文字数
ゴースト・ハート ゑみりぃ 496
おばあちゃん 今 紀仁 435
峠の手前のバス停で やまなか たつや 499
かっこいい店員と主婦との会話 篠崎かんな 500
1/60の奇跡 ユタ 668


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  • エントリ1 ゴースト・ハート  ゑみりぃ


    僕は幽霊になって3年になる。
    マンションの屋上で母さんと遊んでいたら、
    誤って落っこちて、あっけなく。
    あのとき僕は9歳だった。
    ということは今僕は12歳…のはずなのに、
    僕は相変わらず9歳のまま。
    明日も明後日も……きっと、いつまでも。
    僕がいるのは屋上のフェンスの隅っこ。
    これは僕が死んでから取り付けられた。
    当時は花とかお菓子とか線香とか、
    いっぱい積まれてあったけど、
    今はごくたまに、マンションの大家さんが花を置いていくだけ。
    別に気にしちゃいないけど。
    花に興味はないし、お菓子は食べれないし、
    特に線香の匂いは大嫌いだ。
    だから線香が置かれる度に、
    ちょっとだけフェンスを離れた。
    ……だから成仏できないのかも。
    別に気にしちゃいないけど、ホントに。
    幽霊になっても僕にはやることがない。何にも。
    いるだけ幽霊……こうゆうのをジバクレイっていうんだっけ?
    でもここから動こうとは思わない。
    ここが特に好きというわけじゃないけど、落ち着くんだ。
    生きてたころにはあんなに飽きっぽかったのに、
    ここから見る景色にはちっとも飽きない。
    不思議だな。

    でももっと不思議なのは、
    屋上から落ちる瞬間、
    背中に感じた、
    母さんの手のひらの感触。




    エントリ2 おばあちゃん  今 紀仁


     時間は戻ることはない。だから・・・・

     「おばあちゃんどこ行くの?」
    6歳の僕はきいた。
     「ちょっと、東京に行って来るのよ。そうだ、おみやげ何がいいんだ。」
     「うーん・・・ゲームがいいな。」
     「わかったよ。じゃー行って来るね・・。」
     
    数日後・・・

     おばあちゃんが帰ってきた。
     でも、頼んでいたゲームはおみやげの袋には無かった。
     「悪かったね・・おばあちゃん忘れてしまったよ。」
     「おばあちゃんの嘘つき!もう、おばあちゃんなんて嫌いだ!」
    それから数日間、口を聞いていなかった。そして、学校の授業中の僕に電話が入った。
     「おばあちゃんが死んだ」
    急いで家に戻った。そこには顔に白い布がかぶさったおばあちゃんの姿があった。 
     「うそでしょ!冗談だって言ってよ。お、おばあちゃーん!!!・・・・・・・・ごめん、ごめんね。」
    口を聞いていなかった事をとても後悔した。
     「本当にごめん。僕、おばあちゃんの事忘れないよ。」
     
     「少なかったけど沢山の思い出をありがとう・・・・」




    エントリ3 峠の手前のバス停で  やまなか たつや


     父とのツーショットなど中二に新幹線で行った鹿児島旅行以来、それに陽水のコンサートもかなり久し振りに行なわれた。
     北九州の実家を離れ宇部の高専に入学し、卒業の半年後所沢に移転し結婚した。中三以降父と話す機会は減った。犬猿していた訳ではない。冗談ばかり言う父の相手に飽きたのと勉強熱心に成ったからだ。そんな時でも陽水のCDが出ると父は二枚買って来て私にくれた。元来音楽好きな私にとって、陽水の世界は詩が多少意味不明でも素晴らしく映った。何と言っても楽器の使い方とサラウンドの用い方に押さないながら感動し、それこそベッドの上で魚に成るという意味などさっぱりの頃から聴き入っていた。
     高専時代も父はCDを送ってくれた。陽水は更に新たな世界を創造し、十七歳なりに私はそれを受け入れた。いつしか思いに陽水が住んでいた。
     あれからもう十年余り、女は三十からというけれど私の内面はそれ以上に更けている。四歳年上の夫からも時たま指摘される。私も父も陽水も時の経つだけ歳をとった、今日のコンサートでそう感じた。いつか私にも「人生が二度あれば」と心の底から歌いたく成る日が訪れる…そう遠くない将来に。そんな予感がする。

    作者付記:    ※ この文章の著作権は以下の者が有します。
             やまなか たつや
            11時22分05秒 2004年02月16日



    エントリ4 かっこいい店員と主婦との会話  篠崎かんな


    「いらっしゃいませ」

    「あの……私、昨日電話した者ですが」

    「はい、話は聞いています。奥で紅茶でも飲みながら話しましょう」

    「あっ、どうも」

    「当店では、実用段階の毒を売っています。ご主人のお好きな物は?」

    「焼酎をよく飲みますわ」

    「なら、それで。毒入り焼酎、検出はされません」

    「意外に安いんですね」

    「お客様第一ですから。それでは、よい殺人を」



    「いらっしゃいませ――その後どうです?」

    「無事、葬式も済みましたわ。いい弁護士さんが付いてくれて。今日はお話が……」

    「では、奥で――紅茶でも飲みながら」

    「結婚してください!!」

    「また唐突ですねぇ」

    「結婚してくれないのなら、警察ですべてを喋ります」

    「……」

    「私を殺そうとしても駄目ですよ。弁護士さんにすべてを書いた封筒を預けてあります」

    「……小説では、よくそんな手を使いますが、こんな物が本当に役に立つんですかね」

    「その封筒……なんで」

    「当店はアフターケアも万全ですので。紅茶……変な味しませんでしたか?」

    「あっ……」

    「勝手ながら生命保険を掛けさせてもらいました。おかげ様でお客様により一層、安い値段で提供出来ます。お客様第一。生まれ変わっても、当店をごひいきに……」




    エントリ5 1/60の奇跡  ユタ


     七夕なんて生ぬるい。一年に一回しか会えないだ? 俺たちが会える時間は、せいぜい一分だ。
     俺は物心つくまえから彼女と会っていた。会う、というよりは、すれ違う、にちかい。いつも、よう、と声をかける程度で、すぐに立ち去っていた。彼女は少しぽっちゃりしていて、歩くのが遅かった。だから俺たちが並んで歩く時間は、せいぜい一分だった。
     ある日俺は、彼女に恋をした。何度もすれ違うたびに、気がつけば彼女と歩幅を合わせようとする自分がいた。少しでも長く一緒に歩こうと、俺は歩みを緩めた。彼女は速めてくれた。それだけのことが、妙に嬉しかった。
     しかし俺たちは、運命という歯車にがっちりと囚われていた。
     俺たちがどんなにがんばっても、並んで歩ける時間は一分たらずだった。彼女は泣きながら謝った。ごめんなさい……あたしがとろいせいで……。違うよ、俺がもっとお前に合わせられたらいいんだ……。
     涙の味がするはじめてのキス。ただ至福の瞬間にも、時は無常で。ああ、また俺の体がぐんぐん進んで行く。俺は彼女を離すまいと、手を強く握る。彼女も強く握り返した。だがやはり、手の力は弱まっていき。
     いやだ、もうお前を離したくない。
     俺は目をつぶり、手に力を込めた。そのとき、どこかでなにかが切れるような音がした。
     俺の手はまだ彼女を握ったままだった。とうの昔に一分は過ぎていた。目を開けるとそこには彼女がいた。彼女は歩むことを止めていた。そして俺も。
     俺たちはしばし呆然とし、やがて喜びに満ち溢れ、ついにゆっくりと抱き合った。



    「つとむー、茶の間の時計、電池替えといてー」





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