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第6回中高生500字小説バトル

エントリ 作品 作者 文字数
冷たいファーストキスでした。 やまなか たつや 498
Question 芦野 前 500
ある観察記録 サユキアヤコ 500
BLUE yuki 500
ボクらのコトバ 494
ハツコイ 越冬楓 500
決意 471
赤黒い羽根を求めて。 唯那 589
金曜日 ユタ 544
10 拡がる海色 篠崎かんな 500


バトル開始後の訂正・修正は受け付けませんので覚悟してください。




エントリ1 冷たいファーストキスでした。  やまなか たつや


わたしは息を止めて、目を閉じる。
唇から頬にかけてレモンの感覚がする。
眠りの国に引き込まれそうに心がとろけ…、このまま向こうの世界でずっと暮らしたくなる。

絵本の中の国で暮らすこともわたしの夢なの。
ママにも打たれない、いつも傍にはパパと友達のいる世界。
きっとそこではわたしはわたしに成れる。
雲とおしゃべりして、海とおしゃべりする。
星の沢山散らばったお空を見ながら、隣には羊さんと熊さんがいるの。
そんな世界がこの先に続いてる…。

その人が哀れで、愛しく思えた。
一緒には向こうの世界で暮らせない運命と悟っていた。
わたしが向こうの世界で暮らすようになったら、その人は毎日ママに打たれて、パパに無視されて、お兄ちゃんに馬鹿にされなくちゃいけない。
だからわたしは大人になろうと心に決めた。
わたしはこの世界で人間に成って頑張って生きていくよ、だからあなたにはこれが最初で最後なの。

神様、怒ってたらごめんなさい。
「ママには内緒ね。」
わたしは優しく語りかけ、もう一度目を閉じて唇を近づける。
二人の唇が重なった時、ひんやりとした感覚が走ったのはどっちの心だったのか。

再び目を開けた時、鏡の中のわたしは大人に変わっていた。

作者付記:
    ※ この文章の著作権は以下の者が有します。
         やまなか たつや
        16時12分38秒 2004年03月03日



エントリ2 Question  芦野 前


「あの、ちょっとすみません」
 街の雑踏の中で声のした方を振り向くと、一人の冴えない若い男がいた。
 私の頭の中には即座に三つの選択肢が浮かぶ。
一.新手のキャッチセールス。
二.危ない宗教の勧誘。
三.勇気の込もったナンパ。
「別にあやしい者ではありませんが」
 こう言ってくる人間で、今まであやしくなかった者はいない。
「あの、」
 そもそもこの私に声をかけてくるのだから、相当変わっている。
 自慢にはならないが、私はここ数年キャッチにも宗教の勧誘にもあわないし、ナンパなんてかすりもしない。
 容姿もそこまでひどくはないし、スタイルだってまあ、二十を過ぎた今ではうまく維持できている方だろう。
 おそらく原因は、この影の薄さだ。
「えっと、聞いてます?」
 昔から自分が地味なのは充分承知だが、一度でいいから派手になってみたいと、近頃強く思うようになってきた。
 この出会いだって、もしかしたら何かのきっかけになってくれるかもしれない……
 ちょっとした期待を込めて男をよく見ると、手には厳かに数珠が握られている。
 あーあ、二に決定だな。
 少し嫌味の効いた笑みを向けると男が何か言った。
「なんであなた、成仏しないんですか?」




エントリ3 ある観察記録  サユキアヤコ


理科の授業で宿題が出された。

ある期間で変化していく物を観察し文を書く宿題。


僕は成績の事を考え、地球を観察する事に決めた。

4月
今年は桜が満開にならなかった。
つぼみのまま半分以上が落ちてしまったらしい。

月のほとんどが23度以上で夏みたいに毎日暑かった。
雨の量が例年より多かった。


書き始めた時からまずいなと思っていた。
変化が少ないから書く事がない。

このテーマにした事をかなり後悔した。


来月の内容を考えるのが憂鬱だ。


5月
4月とはまったく違って雨が一度も降らなかった。

米とかがあまりよく育たないらしい。

今年は世界全体で異常気象が報告されているらしい。

中国では洪水が何度も起こったりしているし、アメリカの小麦も今年は不作決定らしい。

今梅雨が来ない可能性もあるらしい。

5月は書く事が沢山あってよかった。
でも全然現実に感じない。

6月
東京は大型台風で廃墟となった。

死者は1000人近く。けが人や行方不明者は数え切れない程。

例年より真夏日が15日も多い。

気象災害の大発生。

低い土地の島々が一気に水没した。

僕の家も学校もなくなった。

全部流された。


だから宿題を出す事も

来月の内容を書く事も

もうないと思う。

多分このほしは終わる。

来月迄に。




エントリ4 BLUE  yuki


 生まれた時から目が見えへん人は、一体全体空は何色やと思ってはるんやろ

 彼は公園のベンチに座っていた。杖を持ってる。深い黒のサングラス。不謹慎ながら、興味を持ってしまう。ドキドキしながら見つめる。ふと、浮かぶ疑問。気が付けば、隣りに座っていた。

「いい天気ですねー」
「そうですね」
「空がこんなに青い」
 すこし遅れる返事
「申し訳ないんだが、私は目が不自由なもので――」
 しめた。と、思う。疑問の答えを聞こうと思ったその時
「青って、どんな色ですか?」
 はっ?青?えーっと
「海の色です」
「海の色って言うのは?」
「深い、琉球ガラスみたいな色」
「琉球ガラス?」
「透明で、サイダー味の飴みたいな」
「飴?」
「深海魚の魚みたいにきらきらしてて」
「へぇ、深海魚?」
「そう。不細工な深海魚。油を引いた後の虹色」
「油?」
「色んな色がマーブルされてて、シャボン玉と同じ」
「シャボン玉?」
「シャボン玉は、丸く空を映して、青く青くなるのよ」
「青って、どんな色?」
「空」
「空の色?」
「そう、綺麗なの」

 沈黙の後、彼は笑って言った。
「成る程。少し判ったような気がするよ」

 あたしは、それだけで嬉しくなってしまって、綺麗色の空を仰いだ。

作者付記:日常の疑問を書き表しただけなので、障害者への冒涜だー!とかは、無しでさらっと読んでいただけると幸いです。



エントリ5 ボクらのコトバ  暁



()
        ある朝でした。

  ママがパパと出会ったとき、ママは死んだの。
 と、ママは言いました。それは、ボクがママについて聞いたときでした、なにかを。
  この海に溺れ、沈み込んだの。  
 と、
 ママはハキッリと。 でも、モノ哀しく そう付け加えました。
 けれども  どうしてパパと出会ったの? とボクは聞きました。
 解っていたのヨ  昔は。  でも 覚えてないの。 ママは微笑みながら答えます。
 もう、あの人のコト思い出せないのよ。
 きっと、 ね、 記憶から零れ墜ちていったのよ。 あの人のコトだもの。
 ママは、そう、言いました。ママは少し楽しそうでした。
 歪んだ微笑みの失望を、弄んでいました。

 もう、ママにはパパの記憶は亡いのです。 ママは 一人一人 また愛人の名前を挙げてゆきます。
 「竹内さん、田中さん、盛岡さん、高橋くん、山下くん、平沼さん、… …
 ねこが一つ 鳴き、夕方は 暗めです。
 
 パパの名前は「山辺さん」で、ボクは ママがそれを言うのを、
 言わない と 知っていながら、待っているのです。
 ボクはママを愛してます。


 遠くへ行った、記憶も在ります。朝は要りません。

作者付記:今回は、結構話書いてる時間が短かったです。
あの、変な空白とか、話の矛盾は意図的なモノです……
あわわ、;



エントリ6 ハツコイ  越冬楓


今日ものんびりと目が覚める。ここは私の城だから、他のものはあまり来ない。
向こうで寝ているご主人様以外は……。
私の名前は桃。齢10歳の猫だ。
この年になると、言葉も喋れるし、その気になれば尻尾だって5本になる。
おっと、ご主人様が起きたらしい。そろそろお腹もすいてきたところなので、
ご飯を食べた。
ご主人様はあわただしく出て行った。ガッコウに行くそうな。

ご主人様は帰ってくるなりベットにうつぶせになり、泣いている。
最近では珍しくない。言葉をかけてやりたいのだが、
それはできない。
だから黙ってそばにいるのが精一杯なんだ。
ご主人様はケイタイという機械をカチカチ打って、笑ったり、怒ったり。
噂ではコイをしているらしい。
コイとは、あんなに感情的になるものなんだ。
次の日、ご主人様は男の人を連れて来た。
二人でなかよくずっとくっついていた。
あれもコイなのか。
昨日はこいつの事で、あんなに泣いていたことを思い出す。

何だか、黒いものが全身を支配していく。
気が付くと私は男に襲いかかっていた。

こんな事があって、私は今野良猫となった。
自由気ままに生きている。
だが、ご主人様を忘れる事がどうしても出来ない。
そうか。これがコイか……。




エントリ7 決意  波


普通の人は中学卒業後、高校へ行くのが多いのだが、私は普通の人の進路とは違う道へ歩んでみようと思う。これはもう決めたことだ。誰に何を言われようともこの決意を変えることはない。

この決意を私の一番大切な人に話してみた。きっとアナタなら私のことを分かってくれると思ったから…。アナタの返事はこうだった。

「そうか…むずかしいよね。自分の好きなことをやりたいと思ってもできない人はたくさんいる。それでもどうしてもやりたいならやればいい。僕は応援するよ。でも一つだけ言っておきたいことがある。普通の人と違う道を歩むってことはそれなりに大変なんだ。すごいキツイと思うし、もう嫌だ!って思うこともあるかもしれない。でも絶対に諦めないで欲しい。生き残って欲しい。苦しい世界で。そうしたらきっと眩しい光が見えてくるよ。」

私は彼の言葉に感動し、涙した。
泣かずにはいられなかった。それが私の決意の証であり、これからはもう泣かないという決心もあった。

負けない。絶対。くじけない。決めたことは最後までやりきりたい。きっと大丈夫。彼がくれた言葉を忘れずに…

私は今、飛び立つ




エントリ8 赤黒い羽根を求めて。  唯那


町外れの公園にて。片目に眼帯をつけた、いかにも悪そうな兄ちゃんが私の方に歩み寄ってきた。

「それ捨てちゃダメだろ」
「は?なんだテメー?」
「まだ火ついてる…。」

捨てたのは煙草。こんな奴にそんなこと言われるなんて全くの予想外で腹が立つ。少しため息をついたそいつは、かがんで煙草を拾うと手の平をぱっ、と広げた。
「え、ちょっと…!?」
まだ火はついていて先の方は赤黒く不気味に燃えている。
「あの…っ」
泣き笑いしているような表情。なんだか恐くてゾッ、と鳥肌が立った。そして予想通りその煙草を自分の手のひらへ持って行った。
「おいってば!!」

じゅっ。

全く理解できなかった。  瞬きした瞬間に右目に衝撃が走る。
「うっ…?うぅ…」
上手く声にならない。
「また…な。」
何かを残念がっているかのように、そいつは去って行った。

それからの私はオカシイ。

人通りの多い街の一角にて。眼帯をつけて街を歩いていると、大人っぽい女の人がポイ捨てをしていた。コンクリートに擦りつけられるソレを見て思わず言ってしまった。
「それ、捨てちゃ駄目ですよ。」
「何、アンタ?」
睨まれたにもかかわらず全く気にならなかった。

(羽根?)

「火ついてますよ?」
「え? あっ、ちょっと…!!」

自分でも信じられなかった。
はっ、と気が付くと、手には煙草を握っていた。

(違う…)

「また、会いましょう」
倒れこんだお姉さんを横目にそう言って、また歩き始めた。




エントリ9 金曜日  ユタ


「明日学校が?」
 僕はまたかと思うと、わざと聞こえるように大きなため息をはいた。
「何回も言わせんなや。ばがでねえ。人の話し聞いてんなが」
 おばあちゃんは、だっでと言う。
「私もう八〇もなるさけ。お前も八〇なってみっちゃ」
 僕は見下すような視線をそのままテレビに向ける。八〇歳の僕なんて、水平線に浮かぶ小さな島ぐらいに遠く感じて、目を凝らしてもおぼろげにしか見えなかった。
「これでも昔は学校内、一番だったもんだ。それが今はぼげで」
 僕は曖昧にうなずくだけ。
「昔よがった人は、だめなんあんがもの」
 おばあちゃんは、昔の自分を誇示するように言った。
「じゃあ僕もぼげんあんね」
 僕は、今のおばあちゃんに向かって言った。おばあちゃんは、はっはと笑い、つられて僕も笑った。
 笑うことをやめると、おばあちゃんはテレビ(しかし見ているのは画面ではなく、それを通したずっと奥)を見つめながら、ぼそっと、年季の入った声で言った。
「でももういづ死んでもいい」
 僕はさっきとは一八〇度異なるため息をはいた。
「何言っでんな。やっぱりばがでね」
 テレビの音が、忙しなくかけまわる。
「明日学校あっが?」
「休みだよ」僕はそっと言う。「土曜日は毎週休みだな」
「あら、んだが」
 おばあちゃんは初耳だと言わんばかりにつぶやいた。




エントリ10 拡がる海色  篠崎かんな


 波の音、磯の香り、湿った風……でも、目に映るのは白い天井。マリンブルーは窓の外、ベットの上に波は来ない。
……今日は遅いなぁ
 風が一層濡れる。ツンとした爽やかな香り、雨の香りだ。
……早く来てよ、雨が降ってくるよ
 屋根に一つ落ちた。とたんに、いく万にも増える雨音が、世界をぼんやりと包み込む。
……ほら、振ってきた。大丈夫かなぁ
 薄暗さが襲う。苦しくて寂しくて目を見開いたけど、ほかの色は入ってこない。
……怖いよ、早く
「きゃー、急に降り出すんだもん、濡れちゃった」
 待ちわびた声が体中に暖かく染み渡る。
「待った? ごめんね、これでも走ったのよ」
 視界いっぱいに拡がるお母さんに、動かないはずの顔を必死に笑顔にしてみせる。
「今日、海に三つ子が来たの。みんな女の子。そっくりで可愛くて、波打ち際ではしゃいでね、トウモロコシ焼いたら『みっちゅに切ってください』て言われたわ……」
 話は終わらない、ずっと続くんだ。
 頭の中で三つ子の女の子が短いトウモロコシにかぶりついている。背景には波立つ海が、無数の光を反射させて、たしかに存在している。
 波の音。磯の香り。湿った風……そして母さんがいるから、ここに海がある。





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