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第13回中高生500字小説バトル

エントリ 作品 作者 文字数
1生命の赤い海ゼロ海。484
2箱庭回想香月614
3月が燃ゆる花村彩邪507


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エントリ1  生命の赤い海     ゼロ海。



「君が産まれた病院の窓からは
 海も頬を赤く染めて海も赤ちゃんを産んでいた。

 母体に君をかかげてみせた。
 それが初めての出逢い。
 君は女の子 赤子と名付けた。
 明け方の海が太陽を産むように
 真っ赤な心で生き抜いて欲しいと願った。」


十歳になった日食の夜。赤子の母体は死んだ。
お父さんの魔法の言葉のように
私はいつも真っ赤に染まる。

けれど月の光は私を初めて真っ青にした。
私は恋をした。その月の青年に。
瞳の中から離れてゆきそうな恋を
追い掛けて 追い掛けて
次の満月の日 私は海にたどりついた。

海の上でも一夜を戯れた。
うっとりしあう赤子と月の青年。
だがやがて月は帰らなければいけなかった。
夜を照らすため光の母体へと。

私には母体がいない。
私は体ごと嘆いては海に祈っていた。
お母さんが還ってくるような気がしていたからだ。
そして数秒か数時間。

それは数秒か数時間。

天が揺さぶられる 明けた雲の隙間から
何かが海に落ちる音がした。

風にのった 赤子が顔をあげれば
大きな瞳と紫の唇で海の赤子が笑っていた。
私は思わず抱いた。泣きじゃくりながら
乳を与え キスをした。

そうだ。

赤子はもう母体になったのだ。
 






エントリ2  箱庭回想     香月


いつもそう、ここは真っ暗なの。
「ねぇ、どうしてリビングの床にフライパンが転がっているの?」
「知らないわよ。それより階段はどこへいったの?」
「知らないわよ」

いつもそう、パパは家にいるの。
「ねぇ、パパのお仕事は一体なんなの?」
「音楽家だよ」
「だから毎日おうちにいるの?」
「そうだよ」

いつもそう、みんな私の家にいるの。
「ねぇ、どうしてみんないつも私の家にいるの?」
「友達だからじゃない」
「でも、だからってみんなはおうちに帰らなくていいの?」
「私達に家はないもの」
「そうなの」

いつもそう、あたしはぼろぼろのワンピースを着ているの。
「ねぇママ、新しいお洋服がほしいわ。」
「二階にでもあるんじゃないかしら?」
「でも階段がないじゃない。外にお買い物にいきたいわ。」
「外には出られないのよ」
「どうして?」
「大家さんが開けてくれなきゃ」

大家さんとは有紗ちゃんのこと。私達家族のお友達なの。一日に一度、私達は必ず外に出たわ。有紗ちゃんと遊ぶために。その時は、なんでもできるの。料理だって、お買い物だって、空を飛ぶ事だって。
でも、いつからかしら。有紗ちゃんと遊ぶのは、三日に一度になり、週に一度になり、一月に、半月に、もう、いったいいつから遊んでいないのかしら。
ガタガタ。家が揺れたわ。きっと、お引越しなのね。有紗ちゃんのママが、怪訝そうな顔をしながら私を見たわ。だけど、私は悲しくなんてないの。有紗ちゃんと遊んだ日々、幸せだったから。
私の名前はリカ。






エントリ3  月が燃ゆる     花村彩邪


 一人、海岸へと出かけた。村の外れにあって少し歩けば着く距離だった。その近くに小さな祠があった。そこには昔から山神様が祭られていた。そこまで上っていくと小さな崖になり、下を見下ろす事が出来た。風が強くなり、深夜の風が冬入りを告げる。青白い月だけがあたしを照らしている、そんな陶酔にだって陥った。なにもあたしは山神様を信じてないわけじゃない。ただ恐かっただけ。
――ぐにゃっ
 pi-po-pi-po-その第2音がとてつもなくでかく聞こえた。近づいてくる様なそんな恐怖に駆られる。都会じゃこんな音さえ聞こえないんだろうな。波が大きく揺れる。激しく大地へと叩きつける。山神様のお怒りだ。あたしの前に救急車がとまり、そんなに高くない今のあたしの目線では月を見ても救急車のランプで遮られていた。チカチカと点滅する赤いランプはまるでその向こうの月を燃やしているかの様で。ごうごうと爆音をたて家を燃やしていくあの火の粉のように。あれは山神様の仕業だと聞いた。そんなこと言っては今に仕打ちが来るのにみんなは噂を止めない。
あぁ、私の月を燃やさないで。赤く焦がさないで。やっと見つけたのに。静かな青白い月を。誤って崖から落ちたあたしを月は嘲笑った。