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第14回中高生500字小説バトル

エントリ 作品 作者 文字数
1疑似恋愛。桜也乃601
2シツレンオンナ暇 唯人 (いとま ただひと)482
3死の授業香月606


バトル開始後の訂正・修正は受け付けません。

バトル結果








エントリ1  疑似恋愛。     桜也乃


「いやあ。参ったよ。」
電話越しに聞こえる、情けない声。
「なんで、傘持ってないの?朝から、雨降ってたじゃない。」
本当にこんな男と結婚して良いのだろうか。
情けない声を発しているのは、透子が初めて、結婚を考えた男だ。
何事にも真面目で、熱心で。仕事も出来るし、顔もいいし。
その上、何より透子のことを誰よりも愛してくれていた。
「いやあ。誰かに、間違えられて。」
「それなら、残っている傘何でもいいから、差して帰ってきなさいよ。」
「・・・・そうするよ。」
それでも、まだどうするか悩んでいる頃だろう。
同棲し始めて2ヶ月。
透子には彼の好きだったところが嫌になり始めていた。
でも、彼はいつも透子のことを、考えてくれた。
今まで、つきあった男達よりずっと・・・。
「ただいま。」
彼だ。透子が玄関に出迎えに行くと、そこにはびしょ濡れの
彼がいた。
「何してるの?傘、差して帰ってこなかったの?」
「俺が持っていったら、困る人がいるかなっておもって。」
「真面目なのはいいけど・・・。少しくらい自分のこと考えなさいよ。
壊れたら、どうするつもり?」
「はは。でも透子が作り直してくれるんじゃないの?」
「それはいいけど・・・。家族にあいに行くとき、性格が変わってたら変じゃない。こっちが困るんだからね。」
「以後。気を付けます。」
透子は彼が好きだ。だって誰よりも透子のことを分かってくれるから。
パソコンに光る、彼のデータが、いつもより輝いて見えた。






エントリ2  シツレンオンナ     暇 唯人 (いとま ただひと)


 「 あーぁ…… センパイに彼女がいたなんて…… 」
 ここはある夕闇が入り混じる教室の一角。
 イスに座って机に突っ伏している女の子、リサは失恋をしていた。
 先輩はサッカー部で、銀髪というスタイルでやっぱりファンも多い。
 その憬れていた先輩に彼女がいたのだ。 先輩は嬉しそうに笑っていた、かなり。
 先輩は私じゃあそこまで笑ってもらえないだろうな、きっと。
 「 ハァ……… 」
 ため息が漏れる。 悔しいのに、やるせないのに、哀しいのに、なぜか、涙はでない、 …でないはず。

 そう、私はまだこの気持ちを捨てきれてない。
 強い気持ちほど絶つのには強い意志がいるし、とてもつらい。
 今、私の心の中はいろいろな物が交錯している。
 センパイへの気持ち、彼女への嫉妬、自分の弱さへの嫌悪。
 複雑に交錯しすぎて、私の力では持ちきれそうにない、 

  誰か、助けて!!


 ……。 自分の名前を呼ばれた。
 突然、フッと持っていたものが軽くなった。
 顔を上げて、呼ばれた方向へと目を向けた。
 薄くなりつつある夕焼けに照らされた銀髪が、ゆっくりと、靡いていた。

 私を助けてくれた、男性(ひと)。






エントリ3  死の授業     香月


「死の授業」って、あるんだって。友達が教えてくれた。

「今日は『人類の誕生の神秘』についてのビデオを見たいと思います。」
総合の時間、テレビの画面に映された子供の笑顔。「命は尊いものです」先生は言う。「だから、決して自ら命を絶とうなどと考えないでください。真っ直ぐ生きるのです。」と。
だけれど、私達にはわからない。一人の女子が静かに手を挙げ、発言した。
「死を考えることはいけないことなのですか・?」
先生は怪訝そうに顔を歪め、「そうよ」と言った。とたんに、生徒達が騒ぎ出した。
どうして考えてはならないのですか?死ぬことは罪なのですか?だとすれば、いつかは私達は必ず死ぬ、私達の「生」も罪なのですか?死ぬとどこへいくのですか?どこかへいくのですか?記憶は消えるのですか?みんな死んだ人を忘れてしまうのですか?

ならば、死んでしまったあの子は犯罪者ですか?

先生は、教室を出て行った。先生にも、本当のことなどわからないのだろう。だって、死を知っている人は、もう死んでしまっていないのだから。ならば、なぜ「わからない」と言わないのですか?どうして、死を否定なさるのですか?
私達は静かに席に着き、ぽつんと空いてしまったクラスメイトの席を見た。

どこかで行われているという、「死の授業」。どうか、ここでも。
答えなど、いりませんから。答えは、私達で作りますから。ただ、「死」を否定しないで。死も生も、同じものだから。
死の授業を、どうか。