QBOOKSトップ

第15回中高生500字小説バトル

エントリ 作品 作者 文字数
01なきごえ香月500
02なくしもの芦野 前500
03puzzle暇 唯人 381
04この世で最も永遠に、近い。香坂 理衣612
05初詣おにぎり花村彩邪500
 
■バトル結果発表
※投票受付は終了しました。


バトル開始後の訂正・修正は受け付けません。

あなたが選ぶチャンピオン。お気に入りの1作品に感想票をプレゼントしましょう。

それぞれの作品の最後にある「感想箱へ」ボタンを押すと、
その作品への投票ページに進みます (Java-script機能使用) 。
ブラウザの種類や設定によっては、ボタンがお使いになれません。
その場合はこちらから投票ください→感想箱







エントリ01  なきごえ     香月


バタン、ドアが鳴いた。
ピー、やかんが鳴いた。
あたしは、鳴かずに泣いた。

別に、この性格をどうしようとかは思わないけれど。ただ、たまにはか弱くなってみたいときだってある。
たとえば、重い荷物を運ぶとき。男は必ず助けるものね。
たとえば、風邪をひいたとき。みんな心配してくれるものね。

たとえば、今日みたいな日。
あたしが泣いたら、あなたは足を止めたかもしれないものね。


鍵って、こんなに重たいものかしら。
床に落ちた鍵が、持ち上げられないの。
鍵って、こんなに鋭いものだったかしら。
あたしの指先が小さく、切れてしまった。

心が、切れてしまったの。

「つながっている」なんて信じていたの。
言葉にできないくらい不器用なの。
それでも、あなたはここに居ると思っていたの。
自惚れてた、あたし。

ただ、あなたから返された鍵の冷たさに、足が震えていたの。
あなたがいなくなる恐怖に、怯えていたの。

もしあたしが泣いていたら、あなたは振り返ったのかもしれない。
もしあたしがか弱い女だったら、こんな思いはしなかったのかもしれない。
なんて、もう遅いのだけれど。

ただ、もう二度と
あなたに開けられることのないドアが
キィィ・・と


小さく、泣いただけ

それだけ






エントリ02  なくしもの     芦野 前



 殺風景なキッチンに立ち、黙々と灰色の包丁を動かす。
 トントンとんとんとんとん……
 そのリズムは乱れることなく、生み出されては静かにループする。
 
(オレたち、そろそろ付き合おうか)
 私をいつも包んでくれた甘い目線はどこ。
(今日はもうちょっと側にいて)
 私に溶けるような言葉と柔らかい快楽を与えてくれたあの唇は、どこ。
(……なんか最近、お前の気持ち、重いかも)
 私がよく好んで口付けた、スッと通ったあなたの鼻はどこ。
(もう、終わりにしよう)
 
 どれも見つからないのよ。
 ずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっと探しているのに。
 
 そういえば、最初に探し始めたものは、何だったっけ……?
 
 時計が私に七時半を伝える。
 一つため息をついて、出来上がった二人分の料理を食卓に運ぶ。
 
 黒いアイマスクで目を、ガムテープで口と鼻を、他のすべてを黒い布でぐるぐる巻きに拘束されてリノリウムの上に転がるなにかよくわからない物体を見下ろし、ゆっくりと思案する。
 
 目の前には、からっぽの椅子。
 
 そう、私に向けて絶えることなく注がれていた、どこか温かくもう見えない何か。
 あれはいったいどこへきえてしまったのかしら。






エントリ03  puzzle     暇 唯人 


31835191

ミキが俺に出題した暗号だ。ミキが俺に言いたいことらしい。
勿論、何が言いたいのか気になるから、俺は解く事にした。
全部足すと………31。
さんじゅういち…さい…? サイ…? 祭? 全部違うな。
それじゃあ、数字を語呂にあわせて読むと……さいはさご……? みふやさ……?
意味がわからない。
ヒントは?と訊くと、ヒントなんかいらないよ、簡単だからね、と返答された。

結局、俺はギブアップしてミキに答えを訊いた。
「 答えは簡単なコトよ 」
と言い放った直後、ミキの右の掌が俺の頬を鋭い音とともに捕らえた。
ミキの方に振り返った直後、ミキはもう後ろを向き、遠ざかっていきつつあった。

その一発で悟った。

簡単な暗号だったのだ。50音の縦・横に当てはめるだけの。
31は、「さ」の段の一段目。だから「さ」
その要領でといていけば、ミキが言いたかったことが分かった。

 さ・よ・な・ら


※作者付記: 字数少ないですが、御気になさらず。







エントリ04  この世で最も永遠に、近い。     香坂 理衣


 今にも壊れそうな運命しか持たない私達は、永遠にそれだけをわずらわしく感じる。もうどうにも出来ない程に脆くてか細い悲鳴しか残さないような、響きだけはとても儚い恋をしているのに、私達はお互いにお互いだけがうっとうしくてもどかしい、視界にちらつくだけの存在なのだ。
「僕も君もきっとずっと一人だね。」と貴方にいつか言われた。それはあまりにもリアルな台詞で硬直してしまったのを覚えている。決して実質的に一人ではないのだけれど、私達は二人きりで居る時点でもう既に孤独なのだ。互いに干渉しないし、心が繋がっていない振りをしているから。前からずっと好きという気持ちだけはあったのにどうしても私達は拒絶し合った。どちらも強がりで、他人を必要としない人間だと思いたかったから。何もかもを否定してそれだけで私達は「愛」というものに偏見を持っていたのだ。
「寂しいだけだったわ。」
私はもしいつかこの人と別れる時があったら最後にこう言いたい。最後まで狂おしい程に「女」の振りをして、そう言いたい。しかしきっと彼は言うのだろう。
「それでも僕は楽しかった。」と。
彼は無理矢理許容してしまうから、私との事も良いように考えるだろう。しかし、別れたくないとは言わない。絶対に。何故なら彼は私にとって最低で、最も一生一番印象的であろうとするだろうから。私達はこれからも、不毛だと言われるような恋しかしない。
 それは唯一のお互いへの反抗で、永遠の執着の証だからだ。






エントリ05  初詣おにぎり     花村彩邪


 「俺さ、面白かった話して良い?」
どかっと隣に座り、今から話し始めようとしてるこいつがケンタ。親友だ。何だよ、と聞くとほくほくとした顔で話し始めた。
「この間さ、“ウナギリ屋”行ってきたんだけどよ〜」
こいつの言うウナギリ屋ってのは学校の近くにある個人経営のお店だ。特に手作りのおにぎりと焼きそばは絶品で、行列がたまに出来る。
「おにぎり買おうと思って並んでたら、中に“初詣おにぎり”ってのがあってさ〜、いくらだったと思う?」
「初詣おにぎり?初耳だな。300円くらいか?」
それを聞いてケンタがぷふっ、と笑う。
「それが2千円だったんだよ!!!だから俺、普通に焼きそばかったけどね」
そう言って、俺にピースしてみせる。
「えぇ?まじで?!」
素で驚いてしまった。あの低価格で良心的なウナギリ屋のおじちゃんとおばちゃんが?!そんなぼったくりを…俺のショックは隠しきれなかった。というより、だんだん腹が立ってきた。
「まぁ」ケンタが口を挟む。
「あぁ?何だよっ」思わず声を荒げる。
「ていう、初夢を見たんだけどね!」
そういってケンタが高らかに笑った。
俺はしばらく考え込んでやっと気づく。
「あ!…やられた〜!」
新年早々俺は悔しい気持ちでいっぱいになった。