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第16回中高生500字小説バトル

エントリ 作品 作者 文字数
01注目中毒香月545
02互いに侵食しあう僕達は。香坂 理衣556
03ノンシュガー夢物語瓜生 遼子 500
04マルボロ千希466
05プチーマウスとミーニンさん歌羽深空500
06 寂しくなんか無い。悲しいだけ。 影山影司 500
07 23:59 暇 唯人 474
 
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エントリ01  注目中毒     香月


今日あたしは、ついにアレを実行する。
狙うは五時間目、日本史の授業。初老の男性教師が発する言葉は、まるで睡眠薬のごとく生徒の中に滲入し、意識を奪う。この時間がアレには最適なり。

まず最初にすることは、机の上の配置。分厚く重い資料集と教科書は、あたしから見て左側に。ノートは「きちんとノートとってます」アピールのためにひろげておく。もちろんその上にはシャーペンを一本。そしてふでばこはノートの上の、あたしから一番遠い位置に。
次に準備することは、あたしの姿勢。クラスの六割ほどの意識不明の人々と同様に、机の上で両腕を組んだまま頭を下げる。本当はこのドキドキ感で眠気などまったくないのだけれど。

あとは、実行するのみ。
実はこれ、小学校のときから憧れだったりする。友達にはきっとバカにされるだろうから言えないけど。


あたしはそのままの姿勢で、一気に上半身を前へ倒した。





――――――ガシャン!!!!!!!





腕は自然とふでばこにあたり、その次の瞬間床とともに悲鳴をあげた。

のったらと黒板を書いていた教師の肩があがる。
真面目に授業を聞いていた女子が怪訝そうに振り返る。
意識不明の重体だったみなさんが飛び起きる。

あたしは腕の隙間からこっそりその様子を見て、笑いそうになるのを必死で堪えた。


やばい、やみつきになりそう。






エントリ02  互いに侵食しあう僕達は。     香坂 理衣


 今日の理科の時間に、何だかよく解らないが僕達は「食物連鎖」について学習させられた。教科書に描かれている整理されたその構図を見ながら、その仕組みについて教師は延々と説明を繰り返していた。食物連鎖のページには弱肉強食の順位でピラミッドが作られていた。僕は隣に居たとても気の弱い男子生徒に声を落として話しかけた。
「あのさ、弱いものが強いものに喰われる仕組みになってるなら、僕達もアイツに喰われるかもしれないって事かな。」
僕はクラスで一番強靭な男子生徒を指差しながら言った。
「嫌、生物の種類で分類されるんだから、それはないんじゃないかなあ。」
何となく怯えたような声で彼は言った。そして、「大体アイツがもしも変態で人を喰う趣味を持っていたとしても、捕まっちゃうだろ。」とも言った。
「そうかあ。」
適当に相づちをうちながら、何て人間は自然的じゃないんだ、と思う。動物達には共食いが存在するというのに。確かに、ルールなんてものがあるおかげで、それがある程度まで防がれているのも事実ではあるのだが。
 弱肉強食というものは、人間の世界にとってあくまでそのままの意味ではないのだと、そんな事を考えてみても、僕のなけなしの知的好奇心は収まらなかった。僕の興味は、大人の言う勉強とは近いようであまりにも遠いなと自分を精一杯嘲笑してみた。

※作者付記: ちょうど理科の授業を聞きながら考えてみました。





エントリ03  ノンシュガー夢物語   瓜生 遼子 


赤と白で彩られた夢の固まりは、いつも、最後には捨てられます。
そんなに現実は甘くないのだ、ということに気がついて。

「それ、捨てるの?」
「うん、いらないから」

夢はリサイクルできません。
夢は廃品回収には出されません。
せっかく見た夢なのだから、捨てないで欲しいのだけれど、そんな想いは届きません。
夢を売るほうも、いつか捨てられるのだ、と知っていて売っています。

「やっぱりそんなに上手くいくわけないよね……」

その言葉とともに。
結局いつかは捨てられてしまうのです。

いつか……いつまでも夢を捨てないでいてくれる人に出会えたならば、どんなにいいでしょうか。
でも哀しいかな、私たちの出会いは一度きり。たったの一度きり。
そして私たち、『夢の固まり』は、夢を見てくれる人を選ぶことが出来ません。

時には、ひっそりと倉庫の片隅に追いやられる仲間もいます。
そんな彼らは、現実の辛酸を嘗め尽くした、リストラされた中年親父のような顔になって、新入りの夢に現実を教えてくれます。

「それ、捨てるの?」

『人に夢』と書いて『儚い』。
『人に私たち』と書いて『空しい』。

「うん。いらないから。この福袋」

どうか、捨てないでください。
私たちは福袋。






エントリ04  マルボロ  千希


1本の煙草。
友達から貰った1本の煙草。
「お前もいっかいぐらい吸っとけ」
断わり切れなくて、しぶしぶポケットの底に
落とした1本。
友達のジーンズのポケットから出てきた、
幾分ひしゃげた赤と白の紙のケース。
そこから取り出された白い紙巻煙草は、
見慣れた吸い殻じゃなくて。
すごく新鮮だった。
今この手の中にあるのも。
ポケットに入れたまま忘れてたけど、
でも今、むしょうに吸ってみたい。
匂いでばれてしまうから、
部屋では吸えない。
私は庭の物置きの陰でしゃがむ。
仏壇から持ってきたマッチ。
擦ると、赤い火が点る。
左手に持った煙草に火を移す。
一筋、
煙が上がった。
マッチを放り出し、私は
煙を上げる煙草を見つめた。
震える手で、見よう見まねの手付きで、
私は口元へそれを持っていくと、唇でくわえた。
息を、吸い込む。




咳き込んだ。
苦しいだけだった。
げほげほやっている間に
煙草は地面に落ちて、勝手に
消えていた。
落ち着いた私は、
なんだか悔しくなって、
その煙草の残骸を
むしった。
中から、燃えた葉と、
まだ燃えていなかった葉と、
白い綿が出てきた。
吸うより、そっちのほうが面白かった。





エントリ05  プチーマウスとミーニンさん   歌羽深空


私の大発見を君達に話そう。君達はミニカーという言葉を知っているかい?では、プチ整形という言葉を知っているかい?お、君は少しませた子のようだね。
これらの言葉には、ミニとプチという言葉が使用されている。意味はどちらも小さい物の事を指す。なら君達、プチとミニ、意味が同じである言葉はどのような区別で使われると思う?

実は、可愛さなのだよ。プチは可愛い物、その他にはミニを用いるのだ。例えばミニ四駆。あれは可愛くはないだろう、だからミニ。プチ家出、あれはなんだか可愛いだろう。プチ家出の意味?君は知らなくていい。ミニーマウスは確かに可愛いが、所詮鼠だから。あ、スマン。彼女のケースは、仕方無いんだ。彼女がもしプチーマウスになったら、世界が大変な事になる。グッズやビデオの声、全てを直す事になるから。プーチンさんも同様だ、成長して可愛くないからといって、ミーニンさんには変えられないだろう?ああそう、ミニトマトはプチトマトとも呼ぶが、あれはトマトを可愛く思う人とそうでない人の為に……


「プチはフランス語でミニは英語だって、言えば?」
「嫌よ、子供達に鼻高々に話す息子を止める親がいる?」
「でも彼今年で三十路よね。」





エントリ06  寂しくなんか無い。悲しいだけ。  影山影司


 私は思い出す。三ヶ月前のことだ。衣食住を充たすだけの物を抱えて、学生アパートに移り住んだ。歳は十六と三日。少し早い独立だけど不安なんて何も無かった。

「高校生にとって、一人暮らしとはガンダーラなのよ」
 クラスメートの香が言ってた。
「煩い親も居ない、騒ぐ弟も居ない、吠える犬も居ない、何をするも自由、邪魔するものは無し。あぁ、素晴らしい」
「えー、でも一人って寂しくなるでしょ? 面白い番組やってても、一人じゃつまんないじゃん」
 と、母親が美人の牧。
「うーん、それはあるかも」
 香が、どうなん、と視線で訴える。
 少し考えて、そうね、とだけ答えた。

 私は思い出す。四ヶ月前のことだ。淀んだ水が溜まった台所の流し。薄暗いリビング、頭痛を呼ぶ母の罵声。父が灰皿を投げつける。衝撃で頭から倒れ、血と一緒に奥歯を吐き出した。

 窓を開けて空を見上げる。曇り一つ無い青空。爽やかな春風が、甘い香りを運んでくる。
 舌先で奥歯を順に撫でると、一つ、ぽっかりと開いた穴。痛みはもう無い。
 両親の居ない一人暮らしはもう三ヶ月目。寂しいと思ったことは、一度も無い。

 花粉が春風に運ばれてきた。
 痒い涙目を擦れば、懐かしい、暗闇。






エントリ07  23:59   暇 唯人




唯、急に外に出たいと思っただけだった。
コンビニへ行こうかとかや、友人の家に押しかけようとかそんなことは一切頭の中に無かった。
外に出ると、凛とした冬の空気があった。 しかし、その冷たさに臆することなく足は動いた。

冬の空気は自分が自分であることを教えてくれる。

自分と世界との境界がいつも以上にはっきりし、自分という存在が明確になる。 くっきりと自分の輪郭が見えるのだ。
悩みや迷った時に触れると、行くべき方向を導いてくれる。 

空を見上げる。 今夜は雲一つなく、星々がそれぞれの輝きを出している。
上空にある大気の境界線せいか、少々ばかり霞んで見える。
もし、あの境界線が無かったら、星々の本当の輝きをみることが出来るであろうか?
僕はまだ、見たことが無い。

どれくらい外に居たのかわからなかったが、急に帰り始めた。
1分のようだったかもしれないし、1時間以上居たかもしれない。
ただ、酷く手先とつま先の感覚が無くなりつつあった。

中に入り、また自分の輪郭を少し見失う。
ふと、時計を見た、時間は午後11時59分。

そう。 1日と1日の境界。 そして1年と1年の境界でもあった。