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第18回中高生500字小説バトル

エントリ 作品 作者 文字数
01小さな世界瓜生遼子500
02夢に走る歌羽深空500
03薔薇千希 500
 
■バトル結果発表
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エントリ01  小さな世界     瓜生遼子


ぼくと彼女はずっとこの家にて
外に出たこともなく
外に出なくても飢えることもなかったから
自分たちが 変 なことを知らなかった

それに気がついたのは
洗面所の鏡 がキッカケ

ぼくと彼女が一緒に鏡にうつったとき
鏡の中に
ぼくはいなかった

彼女だけがそこにいた

急に怖くなった

彼女は目の前にいる
彼女はぼくに話しかけ、笑う
彼女はぼくのために食事を作る

ぼくは彼女の目の前にいて
彼女のために食器を洗う
彼女のためにお風呂を沸かす

二人が同じ場所に
同じときに
存在するのなら

何故

ぼくと彼女は
一緒の鏡に映らないの?

鏡を壊した
もう二度と
そんな謎を抱かないようにするために

謎を忘れたある日
彼女が言った

私、小さなナイフが欲しいの
大きな包丁ではなくて
もっと小さなナイフが欲しいの

ぼくは探した
部屋の中を一生懸命

そして見つけた
折れそうなほど薄い柄のナイフ
小さなナイフ
でも切れ味の鋭いナイフ

彼女に渡した

彼女はそれを受け取って
ぼくを刺した

ずぶずぶと音がした

「退屈なんだもの」

彼女は哂った

痛い痛い悔しい悲しい

鏡を思い出す

あぁ、そうか と
答えがわかる

彼女はそれを欲していた
だからぼくを刺した

ゆっくりと眼を閉じた
最後に聞いた彼女の声は

嬉しそうな

倖せそうな

叫び声






エントリ02  夢に走る     歌羽深空


恋人がサンタクロースなのは歌の中だけだから良いのであって、自分の望んだものをくれて、同時にわたしもさらってゆくの、なんて思えるのだと思う。
私はこの歌を聞いた瞬間にこれは良いわ、と思い、実際フィンランドまで押しかけ(何度か雪男に遭遇しつつもやっと)サンタクロースを見つけてフィンランド語なんだか何語なんだか(とにかく英語と中国語と日本語でなかったのは確かだったの)を駆使して驚く彼に日本語で「結婚して」と怒鳴って、迫力で日本に連れてゆき、無理やり帰化させて、三田クロースにして婚姻届に判を押させた……までは良い。良かったけれども。毎夜毎夜コンビニに行ってお菓子は買うし、10月になるとプレゼントの梱包を手伝わなくちゃあいけないし、なにより8匹のトナカイの餌代がかかってかかってしょうがない。……私、離婚するわ。

「ねえ、離婚して」
「?」
「離婚して」
「ホッホウ」
「だーかーらー!コロッケ食べながらはやめてって!とにかく、あなた、ハンコ押しなさい!」

こうして無理矢理ハンコを押させて、チケットを渡して強制的にフィンランドへ帰した私は、今、ふんだくった慰謝料でハワイに来ています。
さあ、ハメハメハ大王はどこ!?





エントリ03  薔薇   千希 


わたしが今、思い出すその人は、
いつも前を見つめた横顔。
その白い顔に浮かぶ唇のルージュ、
その鮮烈な赤を、わたしは今も覚えている。

見上げるわたしを、その人は抱きしめてはくれなかった。
いつも真直ぐに前を見ていた。
自分の望む場所を、その大きな瞳で射止めるように。
見上げるわたしを、その目に映してはくれなかった。

それでもわたしは、美しいあなたが好きだった。
いつかは抱きしめてもらえると。
少しの希望を胸にあなたを見上げていたのだ。

そして、その時は来ずに。
美しい人は、気高く強いままに、
いってしまったのだ。


最後の時、あなたは、
わたしを見て何かを言おうとしたように思えました。
わたしに、何かを。
でもあなたは、
何も言わずに目を閉じてしまいましたね。
最後まで、強く気高い人でした。

今は亡き母へ。
わたしは今も、あなたの面影を胸に生きています。
あなたの子として恥じぬよう、一生懸命生きています。
けれど、最近思うのです。
美しく孤高だったあなたは、
わたしを見なかったあなたは、
結局のところ私の母ではなく、
薔薇の一輪だったのではないかと。

わたしはそう思っては、
あなたのいる空の上かあるいは、
花屋の軒先、紅い薔薇に目を止めるのです。