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第19回中高生500字小説バトル

エントリ 作品 作者 文字数
01別離千希500
02かいしゃのちょうれい歌羽深空500
03彼氏彼女の情報影山影司 500
 
■バトル結果発表
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エントリ01  別離     千希


駅のホーム――いつも通り過ぎていたそこが、私たちの記憶に一生残る場所になった。
私たちの別れの場所。
かけがえのない恋の、終わりの場所。
別れよう、と言ったのは私。
そうだね、と受け入れたのは彼。
それでも、聞いた瞬間に涙がじわりと滲んだ。
私はまだどこかで期待していたのだ。彼がもう一度やり直そう、と言ってくれるのを。
もう一度、が何度重なっただろう。
それは重なり過ぎて、崩れて、風に攫われてしまったのだ。
私に会うために彼が乗ってきた電車、いつも迎えに来て、見送ったホーム。
いつも会う場所で、いつも別れる場所で。
嬉しさも淋しさも入り交じったその場所が別れの場所。

どうしようもなく、涙が溢れる。

「俺さ、お前の事大好きだった」
……うん。
「大好きだった」
うん。
「また、会おうな。絶対会おうな」
うん、また会おうね。
嘘かもしれないその言葉が少し私を慰めた。

彼を乗せて、電車が行ってしまった。
いつも通り、時間通りに動く電車が行ってしまって、
そのつもりがなくとも私たちの間に、確かに一筋の線を引いた。
その確かな終わりの標を残して、電車は行ってしまった。
後に残った私は、もう一度だけ振り返った。

そこは私たちの終わりの場所だった。






エントリ02  かいしゃのちょうれい     歌羽深空


 えー、社長もいらっしゃったようですので、朝礼を始めます。皆さんおはようございます。えー、先月の業績ですが、初めて他社を抜きました。はい、これは大変予想外の出来事です。皆さん、新年度に入ってから少したるんでいます。特に営業部分針課の皆さん!……はい、そこ寝ない!睡眠運転、時差の元!……話を戻します。いいですかー、分針課の皆さん。あなた方は秒針課が動いて初めて成り立つ課です。秒針課の皆さんが来る前になぜ動かしてしまうんですか。あなたがたの失敗が、時針課の皆さんにどのくらいの迷惑をかけているか!以後、気をつけて下さい。分針課一丸となって、頑張るように。さてー、えー、ここからは業務連絡ですが、今月は先月と2ヶ月連続で行われる、春の新入生キャンペーン以外にも、ゴールデンウィークゆうゆうキャンペーン、お母さんありがとうキャンペーンとして、各針に桜の香り、カーネーションの香り、新緑の香りを塗っています。これはお客様のリラックス効果を図ると共に皆さんを癒す効果もあります。あ、カーネーションは母の日限定なので、皆さん気をつけるように。さあ、皆さん今月も仕事を頑張って下さい。それでは、朝礼を終わります。





エントリ03  彼氏彼女の情報   影山影司 


 甘撫睦美/十人中九人が変な子と言う。
 曰く。国語の時間、顔を紅くして辞書を読んでいる。
 決して、初恋というコトバを引いている訳ではない。
 曰く。英語の時間、顔を紅くして辞書を読んでいる。
 決して、SEXというコトバにアンダーラインを引いている訳ではない。

 甘撫睦美の好きな人/十人中九人が知っている。
 甘撫睦美の斜め前の席に座っている、仕草桂一。
 頬を赤らめ視線を彷徨わせ譫言に登場させりゃ当然か。

 甘撫睦美/桂一に恋文を書こうと、奮闘中。一字の誤字も許さぬ構え。
 仕草桂一の嫌いなモノ/サッカーに邪魔な、ファンの女。

 甘撫睦美は知っている。桂一が、女嫌いだってコトを。サッカーに一生懸命で、サッカー熱中中毒で、数学の時間もサッカーボールの絵を描いている桂一にとって、女は邪魔でしかない。
 でも
 甘撫睦美のウィークポイント/仕草桂一。
 だからしょうがない。カノジョは真っ直ぐ矛盾の道を選ぶ。嫌われてでも好きと言おうとしている。

 僕/甘撫睦美の真後ろの席に居る男。
 僕のウィークポイント/甘撫睦美。
 僕は今日もこうして、カノジョが手紙を書くのを眺め続けている。
 カノジョが僕を好きだという情報は、まだ、来ない。