第7回1000字小説バトル
Entry6
誕生日のプレゼントに娘を飼わせてもらった。3ヶ月という年の 割に身体の大きい沖縄産だった。名前は「カナ」にした。 カナは良く食っては寝ていた。 おかげで1ヶ月のうちに5センチ も身長が伸びて、120センチになった。 カナは品種改良されてい て、最初の1年で思春期にまで行くようにできていた。おまけに飼 い主には従順で、サービスが良かった。友人のTの娘は放って置く とすぐデブになると聞いていたので、少し心配していたが、胃下垂 だから大丈夫みたいだった。 最初の1年で、 僕はかなりカナに惚れ込んだ。これは成功だと思 った。白く透けた肌に長い掌脚、西洋を感じさせる淡い表情。これ なら学校の奴等に見せても十分自慢になると意気揚々としていた。 ところが、 カナが1歳半になって、大人としての魅力を見せはじ めてきたある日、反抗期が始まった。薄汚い焼け肌、ドリフコント 爆発パーマ。お決まりのレスラーメークで口調は語尾に「だすうぇ い〜〜〜ア゛ア゛ッ!」だった。完全にギャルってしまった。と言 うよりはちょっと間違っていた。僕はかなり落ち込んだ。RPGの データがすべて消えたときぐらいに落ち込んだ。小一時間落ち込ん で、仕方がないので、「娘ショップ」へ行って、カナの買い取りを お願いした。すると店長は、 「あのねえ、ギャルならともかくも、こんなギャルだかドリフだか 解らないようなの持ってこられても困るんだよねえ」 と渋い顔をしてみせた。とりあえずギャルとドリフとレスラー混 血だと言ったら、500円くれた。それで、新しい娘を買おうとした が、中古品のババアばかりなので、あきらめた。 2週間ぐらいしてか、隣町でカナを見つけた。学校の先生っぽか った。新しい買い手は、かなりのマニアだと推測できた。来年の正 月にもう一体買って、今度は慎重に育てようと攻略本を求め本屋へ 急いだ。
◆QBOOKSに掲載の記事・写真・作品・画像等の無断転載を禁止します。
◆投稿された各作品・画像等の著作権は、それぞれの作者に帰属します。出版権はQBOOKSのQ書房が優先するものとします。
◆リンク類は編集上予告なくはずす場合がありますのでご了承ください。