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1000字小説バトル

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1000字小説バトルstage3
第2回バトル 作品

参加作品一覧

(2009年 10月)
文字数
1
小笠原寿夫
1000
2
1000
3
ごんぱち
1000
4
アレシア・モード
1000

結果発表

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野力
小笠原寿夫

 Q.のぼるくんが野球のレギュラーになれなかったのは何故でしょう?
 A.のぼるくんをN,野球をY,レギュラーをRとすると、
さとるくんはS,アベックホームランはA,イレギュラーバウンドはIとなるので、けんたくんはKとなる。
野球のアベックホームランとかけてのぼるくん力さとるくん力と解く。
・Y×A≒S+N
その心は、昇り調子に里帰り。
レギュラーのけんたくんとかけてイレギュラーバウンドと解く。
・R×K≒I
その心は、たまにはこういうミスにも愛嬌があります。
ここで、おしゃまなジェシカが登場して、人情噺に花が咲きます。とかけてイレギュラーバウンドと解く。
・JTB=0
その心は、意外とヤじゃないトイレのひまわり。
イカがにゅるにゅるやって来た。十本足なので五本ずつ焙り焼きにして、客に差し出す。
・高さ÷2
新井鳥谷とかけて阪神重症と解く。
・AT×MT=L⇔R
その心は、右に左に飛ばすバットは。エコカーで有名になったプリウスの会社名は、
・TOYOTA
トヨタの父親となったのは、キッズリターンの北野武監督なので、映画俳優と野球選手に共通して必要なものやる気にさせなあかんなとかけてバッティングコーチと解く。その心は、
・YABAYABA
これにスクリュードライバーをかけてジュースを飲めば、
・YAZAWA
矢沢のタオルを首にかければ、
・YAWARA
柔道着に汗をかけるは部活の後の心得と解く。その心は、
・カレーライス
・熱い×辛い=HOTHOT
災い転じて福となす。今日この心得は、
・矢沢心
・やりすぎコージー
・靖国神社参拝
三点に共通する頭文字はヤ。ここにホタテを加えると、大きな貝柱のくりーむしちゅーの出来上がり♪ホタテをなめるなよ♪
くりーむしちゅーの有田哲平と言えば、昔、モスバーガーにいた鈴木さんにそっくりなので、いいきっぽんの出来上がり。北海道から大阪に電話をかけて、Vシネマを見ていることを伝えられる。僕のお父さんの出身は、大分県日田市。ヒトシオガサワラ。路上でキスをすると、人だかりが出来るので、阪神タイガースの応援団は、鳴り物を鳴らす。鳴り物を鳴らす大阪の風物詩と言えば、甲子園球場と難波の帝王。
難波の帝王7に主演している萬田恵介と言えば、
・安岡力也
安岡力也は改名して、
・RIKIYA
となる。ここで、ギョーカイ用語を使うことにより、
・YARIKI
したがって、のぼるくんが野球のレギュラーになれないのは野力のせい。
A.野力
野力 小笠原寿夫

空色の朝顔

 今年も朝顔が咲き出した。この朝顔は立秋を過ぎた頃からたくさん花を咲かせる。小さめの明るい空色の花。
 今年で4年目。
 この『原坊の朝顔』の種を分けた友人の中にはもう母親になっている人もいる。でも、くやしいとは思わない。自分のように、子どもが欲しいと思う人が願って、その願いが叶ったんだもの。
 私は病院へ行く仕度を始める。今朝は8時半までに通院しなければならない。その時間のホルモン値を計測するため、血液検査の時間が指定されている。

 血液検査は苦手。
 初めて泣かないで採血できたのは小学校4年生の時だった。
 小さい頃からたくさん血液検査をしてきたためか、左腕の血管は刺しても血が採れないことがある。なので、右腕を差し出す。
 右腕からも採血できなくなったらと思いつつも。
 
 注射針が刺さるところはいまだに見られない。
 腕だけじゃない。
 私は卵巣にも針を刺す。

 体の中に針を刺されるなんて、とても恐ろしいので静脈麻酔にしてもらった。
 前麻酔の筋肉注射が腰にされる。粘性が高い注射液のため異常に痛い。今まで4回打ったことがあるが、3回目の注射は一ヶ月たってもそこに触れるとしこりがあって痛かった。
 そして点滴。静脈の中に針が入る時、ぶちっと音がする。血管壁が破られ、針が引き抜かれると同時にチューブが挿入される。

 この痛い過程のおかげで、手術中は記憶をなくしていられるわけ。
 痛い思いをしないために、他の痛い思いを我慢するわけだ。

 3回目は止血がうまくいかず、止血処置の最中に麻酔が切れてきてしまった。ボーとしているのだが、痛いことはわかる。手術台に固定されているので身体は動かない。
「いたい、いたい」という自分の声が遠くから聞こえるのだが……。

 そんな思いをして採卵した卵も赤ちゃんになることはなかった。

 でも、治療をやめることはできない。
 次は質のよい卵が取れる周期かもしれない……。
 今度は違う治療法が……。
 
 そして、私は結果に一喜一憂しなくなった。
 だめなこと前提、少しでもうまくいけばラッキーぐらいの淡々とした気持ちで過ごすようになった。

 毎日、卵を育てるための筋肉注射を打つ。
 腕だけでは足りず、腰にも。
 腕も腰も注射痕の痣だらけ。

 注射が終わる頃、採卵中止が伝えられる。
「今回は卵が複数育ちませんでした」
「はい」
「次は生理2日目にきてください」
「わかりました」

 今日も空色の朝顔が咲いている。
空色の朝顔 百

祝・竹久夢二サイダー発売
ごんぱち

 昼休み、自分のデスクで四谷京作はパソコンの画面を眺める。
「ふうむ、なかなか面白そうだな、へー」
「どした、四谷? 隣の垣根に野バラでも咲いたか?」
 マグカップでコーヒーを飲んでいた蒲田雅弘が尋ねる。
「どう返せばいーんだ、それ」
「質問に質問で答えるなと、学校で習わなかったか?」
「いや……別に習ってない」
「だよなー。あれって、フルメタルジャケット辺りから発祥した、極めて偏った教官による横暴なルールのような気もするな。実際、質問の意味がよく分からん事ってあるし」
「うむ。教えることは教わる事とも言うし、質問者が聞き返されるリスクを覚悟しないのはむしろ甘えと言えなくもない」
「だろう」
 蒲田は、空いたマグカップを手の中で転がす。
「何見てたんだ、四谷?」
「いや、ニュースをな」
 マウスを操作しながら、四谷は答える。
「お前が?」
「凄いだろう、世界情勢の事を知りたくてな」
 自慢気に四谷は胸を張る。
「……凄くはねえよ、社会人なんだからニュースぐらい見るだろ」
 蒲田は画面を覗き込む。
「金沢の観光協会が、竹久夢二サイダーを発売? へー」
「村おこしの一環らしいな」
「金沢は村じゃねーよ。もう少し都会だよ、多分。行った事ねーけど」
 横からキーボードに手を出し、蒲田は記事をスクロールさせる。
「ふむ、ラベルは竹久夢二の絵から取る、と」
「そうらしい。言われてみると、何となく竹久夢二の絵はサイダーのラベルには合いそうな感じがしないか?」
「うむ。大正浪漫、モボとモガが小粋なカフェで飲む-ダヰサって感じだな」
「然り然り、浪漫浪漫」
 二人は頷く。
「思うんだけどさ」
 四谷が形にならないものを掴むような手の構え方で言う。
「なんだ?」
「竹久夢二の絵って、こう、いかにも竹久夢二、って感じするよな。ぬるっとしてるっていうかなんていうか。まあ、夢二成分の方が支配的なんだけどな」
「あー、分かる。ギーガーがギーガーな感じとかな」
「そうそう、それからパブロ・ピカソがやっぱりピカソな感じとか」
「横山大観とかな!」
「雪舟も雪舟っぽくね?」
「でも、レオナルド・ダ・ヴィンチはちょっと違う感じだよな」
「ゴッホも、ゴッホかというとなんか違うな」
「ジャコメッティは、あんまり細い感じしないよな」
「ああ、ムキムキの方がむしろ名前には合ってそうだな」
 二人の様子を向かいのデスクからじぃっと近藤千早が眺める。
「……あんたら、もー、結婚とかしちゃえよ」
祝・竹久夢二サイダー発売 ごんぱち

颱風おんな
アレシア・モード

「高校生のころの事です。

 夏休みも最後の日、大型台風が直撃で、朝から雨が轟々で。接近するとむしろ雨は弱まったんですが風が凄くって。
 夕方でした。僕は部屋から、黒雲のどうどうと流れる空を眺めてましたが、なぜだか急にワクワクしてきて……低気圧で頭が変だったのかな、窓を開けてベランダに出てみたんです。

 開けた途端、もう顔の歪むような風、僕は掴まりながら外へ出ました。シャツが鳴り、雨粒が顔を打ちます。その中で僕は雲の流れに見入ってました。ベランダの西の空、東の空、流れる黒雲の方向が微妙に違うんですよ。今まさに台風の渦に入るとこだったんです。ね、ね、凄いでしょアレシアさん!

 いや、まあ……ともかく僕は空を見てたわけですが。
 そのとき彼方に何か、白い布みたいのが風に乗って横切ったんです。すぐ飛び去りました。洗濯物のようでもあったけど、まあ違ったのだけど。

 何だったかと思ううち、暫くして、また飛んだんです、白いの。
 さっきより近くです。すぐ飛び去りました。割と大きいなぁと感じたけど何かは分かりません。でもまた来る予感がしました。ええ来ましたね。だいぶ近くでした。確かに白い布で。

 そこで気付いたんですね。あれは同じ一つの白い布が、風の渦に乗って何度も旋回して近づいているんだと。それから、あの白い布、何か……黒い毛の塊が前に付いているって事に。
 嫌な感じがしました。僕は部屋に戻ろうとしたけど風が強くて、そうこうするうち、あれが、今度はほんの十メートルほどの先を通過したんです。
 見ちゃいました。女でした。黒い髪の。口を開けて笑ってた。

 長い、一瞬でした。僕は夢中で部屋に戻り、窓を閉め、ベッドに潜りました。その直後ドーンと後ろで音がしてガラスが砕け、何かベランダに飛び込んでました。強風に飛ばされた大きな看板でした。
 ベランダはもう滅茶苦茶で。あそこに立ってたままなら、死んでたかも知れません――」


 テレビは台風情報を告げている。
「こんな話信じませんよね、アレシアさん」
 私――アレシアは静かに彼に尋ねる。
「その女、何かキミに言わなかった?」
「何かって?」
「そうね」私は唇を歪めた。「決して人に喋るなよ――とか」
 窓の外に風が鳴る。
「――言ったでしょう? あの時」

 彼は戸惑った顔で答えた。
「……さぁ?」
「え?」
「聞いてないです」
「よく思い出せ。言ったろ、ほら」
「僕、ヘッドホンしてたし」
「てめぇ」