ゴリラは免税特権を受けていたが、どうやって実現したかと言えば税務署に怒鳴り込んで、無理やりに特権を受けたのであった
しかし少し疾(やま)しい感情に悩まされたゴリラは、ゴミ置き場にせっせと通い、まだ利用出来そうなものを役所に届けて、これで帳消しにしてくれよと日参するようになった。
「これはこれはゴリラさん、毎日毎日、ご苦労な事で。この前の壊れかけのテレビ物が良かったのか10万円で売れましたよ」
「当然じゃわい。わしが作ったテレビだからな」
ゴリラは満足そうに高笑いした。ゴリラの言って居る事は十中八九嘘だろうが、口が裂けてもそんな事は言えなかった。ゴリラは怒りだすと手がつけられなくなるからだ。役所の部長もゴリラの応対には苦労したし、出来れば他の人と変わって欲しかった。
だがゴリラは自尊心が強いので課長や次長では、もっと偉いの出せとやはり暴れ出すし、いくらで売れたかも常に0を2つ足して報告するようにしていた。
ゴリラのこの行動は結局借金をするのも人に金を貸すのも、全部ゴリラの意志でやっているようなものなので、実質的な価値はごみよりもひどいものだが、ゴリラと言う事で許されて居た。
そのうちゴリラも恋をするようになり、ウサギさんをマイハニーとしたのだが3日ともたなかった。
ゴリラは飽きっぽさの点でもずばぬけており、自分の感情の赴くままに行動するので銭湯でも嫌われていた。
木を敷き詰めて湯を流してある所は野外でもあり、湯でのぼせたあとはそこで寝ていると冬なんか、外の寒さと背中の湯のぬくみで最高に気持ちがいいのである。
そこへゴリラがやって来て、仰向けに寝ている状態から体を起して両足を伸ばしていた老人のすぐ隣でわざとらしくタオルを絞ったものだから、臀部に湯がかかって何か気持ち悪い思いをその老人はした
「他の連中はちゃんと少し離れた所で絞っとると言うのに、このゴリラめ」
と、この老人も小声で言うのが精いっぱいだった。
そんな行動様式のゴリラは、ましてやウサギさんとうまく行く筈も無かった。
それでも役場への日参だけは続いていた。献血に協力してちょっとした人気者になったりした事もあった。
「免税特権を受けているんだからな」
と、ゴリラはその理由を説明した
でも口さがない噂で「あのゴリラが生活保護を・・」と言っているのを見かけると「まだ受け取らんわ」と口論になる事もあった。
あんまりうるさいのでゴリラは四国へ逃げる事にしたが、何処へ行っても基本的な事は同じなのであった。