花子と10年間付き合って来た。今よみがえる美しい思い出の数々。36階タワーの最上階の夜景を見ながらのディナーショー、沖縄の透き通るような海、北陸の荒々しい磯の海、二人で行った温泉旅行、二人で撮った無数のプリクラなどなど、数え上げたらきりが無い。
その10年間も全てパーになって仕舞ったのだが、別れるまでの経緯がすさまじかった。だてに10年間も付き合って来た訳じゃ無いのだなと感心して居る場合じゃ無いのだが妙に感心して仕舞って、俺も酔って居たのかなあと少しは反省して居る。
「やっぱり私の体が目的だったのね」
と、すごい剣幕の花子に俺は言葉が無かったね。散々問い詰められて、今までの悪行の数々と言っては大袈裟だが、花子は俺の悪行の数々をあげつらい、懺悔を迫った。俺がどんな悪行をして来たと言うのだよと思うが花子が言うとシャレにならない物を感じた。鬼気迫ると言うのかね、本当に俺ももう駄目だと思ったよ。
俺はあまりに窮したものだから言ってやったよ。
「いやー違うんだ、俺が本当に望んで居たのは、君の体じゃ無い。君の--------そう、君の金が目的だったんだ」
って思わず言って仕舞ったね。言った瞬間仕舞ったと思ったのだがもう遅かった。確かに彼女はばりばりの商社に勤めるキャリアウーマンで、商品管理課長で部下も30人いて、年収も高額だったから思わず言って仕舞ったんだ。でもやっぱりKYだよね。
「もっとひどいじゃないの!!」
花子はこんな男が居るぐらいならこの地球には居たくないと言わんばかりの勢いで、猛ダッシュで俺の元を去って行ったね。
花子と俺は清い付き合いだったんだ。そりゃ恋人同士だもの、性交渉は何度か行った事はあるが、1度だってふしだらな事は無かったよ。今となってはせっせと避妊器具を使ったおかげで、別れる時も後腐れ無く別れられたってもんだ、と言う慰めにならない慰めしか無いんだけど。
俺、サッカーやってるんだけど、花子はそんな俺にメロメロだったんだぜ。アマチュアの草サッカーだけどさ、俺キャプテンやってるし、ハットトリック決めた時なんか、もう花子の奴、失神せんばかりに喜んじゃって、あいつのおごりではしご酒よ。
もう何を言っても後の祭りって言うか、愚痴にしかならないんだけど、ほんと百年は続くと思って居たのに、早かったなあ。なんてあっさりしているんだろう。女は魔物、俺にはさっぱり分かんねえなあ。