スーパーの出入り口で急患が発生した。
出入り口に置いてあるカートで遊んで居たら、背中から落下して、背骨を複雑骨折した上に、持病の白血病を悪化させて仕舞った様だ。
カートで遊んで居たと言う事で、ちっちゃい男の子か女の子の事だと当初は思われたが、何と初老の男であった。
救急車を呼ぼうとしたら、こんな重体であるにもかかわらず、明確に本人によって拒絶された。
「わしには自分の寿命が分かる。呼んでも無駄じゃ。自分の事は自分が一番よく分かっとる」
すっかり困り果てて仕舞った、野次馬やスーパーの従業員たちであったが、野次馬の一人が、私は医者だと言う。
「私は無免許ですが、実は医者の実務経験があります。大きな声では言えませんが1000人以上の臨床経験があるのです。これ程の急患は初めてですが、こんな急患見過ごす訳には参りませんでしょう。私は警察にしょっぴかれるのを覚悟で名乗り出たのです」
そうだ、やつこそ伝説の名医、ホワイトジャックだ、やつに任せれば大丈夫だ、と言う声が野次馬の中から聞こえて来た。
「うんだうんだ、そうにちがいねえ。うちの所のかかあなんか、末期癌だったのに、やつのゴッドハンドで治ったべや」
「わしんところのかあちゃんもだ。原因不明の病気で50の病院から診療拒否に会っておきながら、やつ、ホワイトジャックのマジックセラピーで全快よ」
どうもホワイトジャックの名医伝説は嘘では無い様だ。成功例は2,3にとどまらず、野次馬の中だけでは無く、スーパーの従業員からも、難病治療の成功例が報告された。
「私には、治療の為の治療専用バスを既に近くに待機させてあります。そちらにこの人を移動させましょう」
なんと、ホワイトジャックは、急患が発生する前から、急患の発生を予知して治療バスまで用意して居た様だ。
この恐ろしい程の治療能力と、恐ろしいまでの予知能力を兼ね備えた、まさしく超人的なグレイトスーパードクターはどんな治療をしてくれるんだろうかと野次馬たちが固唾をのんで、バスの周囲に集まり始めると、彼の治療が始まった様だ。
「みなさん、決して治療が終わるまで、バスのカーテンを開けてはいけません。窓は厳重に施錠されて居ます。出入り口などをこじ開けようとしてはいけません。よござんすか」
「よござんす」
野次馬たちはこの名医の事を知り尽くして居た。
そしてこの話が次回へ続くかどうかはホワイトジャックにも分からないのだった。