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1000字小説バトル

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1000字小説バトルstage3
第29回バトル 作品

参加作品一覧

(2011年 12月)
文字数
1
小笠原寿夫
1000
2
ごんぱち
1000
3
(本作品は掲載を終了しました)
ウーティスさん
4
石川順一
918
5
蛮人S
1000

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クロスカップリング
小笠原寿夫

今までになかった蛋白質を結合させてやることで、新しい物質を作り出そうという発想。
蛋白質は、多くの食材に含まれており、その数は計り知れないが、殊「食」に関して言えば、必須アミノ酸というものが二十種類ほどある。人間の体内では、合成されないアミノ酸の事である。
アミノ酸がペプチド結合を連ねたものが蛋白質。その蛋白質を合成するのがアミノ酸。
では、20種の必須アミノ酸をひとつひとつ箇条書きにします。
・アラニン
・グリシン
・メチルアラニン
・セリン
・グルタミン
・ヒスタミン
・フェニルアラニン
・トリプトファン
・リシン
・ロイシン
・イソロイシン
・グルタミン酸
・ヒスタミン酸
・アミノアラニン
・チオール
・システイン
・セロトニン
・メチオニン
・バリン
・ヒスチジン
ただ羅列するだけでは、面白くないので、これを異色の組み合わせによって、新しい栄養価を作り出そうという発想の理論。これがクロスカップリングである。
「やぁやぁ、ご機嫌さん。毎度のこってはございますけれども、この度、エレキテルを作りたい、とこうなっておる始末。云うなれば、小さな竹を用意して頂きたい。」
「源内さん、あんたまだそんな夢みてぇなこといってんのかい。いいかい?あんたの発明は、みんな認めてるよ。だけど、発明だけが全てじゃねぇだろってんだい。町人連中、みんな、寄り集まって、あんたのひそひそ話をしてるの知ってんだろ?」
「いやはや、忝い。拙僧、相そうなれば、町人連中に電気を分けてやりてぇんだ。囲炉裏がねぇってのに冬が越せねぇ世の中ってんじゃ、寒くてろくに風呂にも入れねぇじゃねぇか、流石にこの冬だけは、エレキテルに電気を通してやりてぇんだ。」
「するってぇとなにかい?あんた、エレキじかけで年を越せるようなそんな大事なもんを作ろうってな算段かい?」
「エレキほど面白れぇもんはねぇよ。エレキは食いもんの中にだって入ぇってるし、人間だってエレキで出来てんだい。」
「正気かよ、お前さん。人がエレキで出来てりゃ、あの雷雲はどうなんだい。あんなもんを近場で起こせば、お上の首が飛んじゃうよ?わかってんのかい、あんさん。」
「言いかい、一回だけ言うからよぉ~く聞いてなよ。エレキは人の手で操れるんだい。」
これから、エレキテルが発明されたのは、言うまでもないが、星を作り出す核融合を玩具にするのは、大倉喜八郎という大財閥の社長である。
「餅が食いたい。」
これが、90歳の偉人が遺した明言である。
クロスカップリング 小笠原寿夫

ラーメン屋
ごんぱち

「いらっしゃいませ」
「こんにちは……ここ、どんなラーメンあるの?」
「はい、高級風ラーメン、職人風ラーメン、こだわり風ラーメン、非ラーメン、マズい系ラーメン、等々取り揃えておりますが」
「んー、オススメとかあるか?」
「そうですね、高級風ラーメンというのがありますが」
「どんなのだ?」
「味はともかく、一万円します」
「ともかくって!」
「ともかくはともかくです。一万円のラーメンを食べた事が重要なので。一応、フカヒレとか使いますけど。お急ぎの方の為に、レシートのみの販売も受け付けております。あ、領収書は忙しいんで勘弁して下さい」
「売りもしないのかよ! ラーメン喰いに来たんだよ、無駄遣い自慢しに来たんじゃねーよ」
「職人風ラーメンは如何でしょう」
「どんなんだ?」
「タオルでハチマキをしてTシャツを着た男が作ります。ヒマがあれば、腕組みをしてお客さんを睨みます。食べるのを休むと文句を言います。味は普通です」
「何のバツゲームだよ」
「でしたら、こだわり風ラーメンがよろしいでしょうかね。こちらは、腕組みしていません」
「なんでしてるのがデフォみたいな言い方なんだよ」
「ラーメンの他に、高菜漬け、紅しょうが、ニンニク、キムチ、ナムル、ザーサイが付いて来ます」
「へえ、ご飯が欲しくなるな」
「それらを決まった順番と量食べればクリアです」
「クリアって何だよ!」
「不用意に最初に高菜を食べたりすると『高菜、食べちゃったんですか!』って怒鳴られて、店から追い出されます」
「別にオレはゲームしに来たんじゃねーよ。ラーメン喰いたいんだよ」
「でしたら、非ラーメンはどうです」
「非つってる! 非って!」
「これはラーメンではありません。二郎という食べ物です。大量の肉と野菜と麺と化学調味料が味わえます」
「ラーメン喰いたいんだよ!」
「じゃあマズい――」
「まともなラーメンだよ。わざとマズいの出すなよ!」
「困りましたね」
「困る程の事かよ、普通のラーメン出してくれよ、普通の! ごく一般的なのを!」
「分かりました、三分間お待ち下さい」
「ゴルァアアア! お前、アレ出そうとしてるだろ!」
「ですが、世界で一番食べられていて、間違いなく一般的です。これが一般的でなかったら、他の何も一般的ではないです」
「……もう良い、分かった。休み時間終わっちまう。カップヌードルで良いから持って来てくれ」
「お待たせ、六五〇円でーす」
「値段は普通のラーメン並かよ!」
ラーメン屋 ごんぱち

(本作品は掲載を終了しました)

旅行
石川順一

10時59分家を出る。香嵐渓へ行くと言う父の希望。車を出す父。ミッション車のカローラを運転する父。ギアがいきなり3に入って居て、車がブーブルブロロと停止しそうな前つんのめりな様な状態になる。元小島金物店が前にあった丁字路で、父は工員の南進を許可するかのように手招きで工員の直進を許可するかのように、先へ行きなさいと言う合図をする。工員も手振りなどで先進行の礼を示すが、私らの車が進行し始めた所で資材らしきものをがしゃんと落としたのか落ちて仕舞ったのか、結構大きな音がする。ここの丁字路の角地にある水回りの設備会社は以前幼児が最上階から落下したが植え込みがクッションになって助かったと言う奇跡の逸話が伝わる地でもあった。その後我々の車は国道41号線を通って小牧インターチェンジから東名高速道路豊田方面に入り名古屋インターで料金精算する(700円)(名古屋市内)。直に長久手町内に入る。長久手古戦場駅が見えて来ると、警備員が煙草を吸って居る。そう言えば昨年10月の市内体育大会が開催された時にスーパーのバイトからの帰る時にも企業の看板持ちのアルバイトをやっていた男が看板を持ちながら漫画を読みながら笑って居たのを私は思い出したのだが。11時47分猿投(さなげ)グリーンロード料金所300円を精算。それまでに三好カントリークラブ、名古屋芸術大学、県立大学などの看板を見かける。母は気持ち悪がって自動車の窓は仮令僅かでも開けておかねばならぬと言う。11時58分猿投(さなげ)グリーンロードの2番目の料金所。今度は100円。しばらく行くと野口雨情の看板が民家らしきところに。ここは豊田市内だが(足助町は豊田市と合併した)、12時15分に達する。巴川で鴉が2羽水浴びをしている。しばらく眺めるが、ほどなくして飛び去った。駐車場を求めてさまよう。豊田市役所足助支所は1000円で満員だ。(車専用)が浜松市ナンバーのバイクが6台ほど1台300円で止めてあった。ちょっと先に行くと1000円で民家の駐車場勧誘がある。民間も公的機関も観光客相手(紅葉狩りの季節)のパーキングビジネスをやっている。12時30分目的地の香嵐渓(飯盛山、香積寺含む)に到着した。
旅行 石川順一

サンタが来た
蛮人S

 ノックの音がした。
「メリークリスマス、サンタクロースじゃ。いや決して怪しい者じゃなくて、その、プレゼントを配ろうと思ったんじゃが、煙突が無いもんで、開けてもらえますかな」
 家のドアが勢いよく開かれた。満面の笑みで家族らが叫ぶ。
「サンタ、サンタだ!」
「わあ本物だ。どうぞお入りください」
「……かたじけない!」
 サンタも嬉しかった。これがもし星新一の小説なら、泥棒として銃を向けたり向けられたりという展開にもなりかねない導入部である。
「はいプレゼント。はいキミにも。それじゃ来年も良い子にしてるんじゃよ。さらばじゃ」
「ちょっと待って」
 父親がサンタの袖を掴んだ。
「まだ子供がいるんで。もっとプレゼントください」
「ああ、赤ちゃんとか」
「いや、本国に十八人ほど」
「はあ?」
 サンタでさえ初耳の妙な名前の国に残した愛児について父親は熱弁し、母親はただ微笑んだ。そしてサンタはやむなく定形句を読みあげるのだった。
「プレゼントの対象は同居で生計を共にする無所得のご子息に限定し」
「訳あって部屋から出ないけどFXで大損した32歳の息子がいます。プレゼントを」
「さよなら」
 父親はキレた。家族がキレた。
「いいからプレゼント出せ」
「聖人のくせに屁理屈こねるな」
「わあ」
 サンタは堪らず家から飛び出した。だが無料の匂いを嗅ぎつけた近隣の貧民たちが続々現れた。
「サンタだあ」
「全員プレゼントだって?」
「とにかく何でも貰え」
 サンタは叫ぶ。
「全員とか無理じゃ! プレゼントだって金かかるんじゃ。その予算をどこから」
「金持ちから盗れよ! それでも義賊か」
「誰が泥棒じゃ!」
「結局金持ちの味方か。もう投票せんぞ!」
「サンタだってば!」
 サンタはトナカイを呼ぶ通信機を出した。
「こちらサンタ。オーロラ号応答せよ、すぐに来い」
 オーロラ号は来なかった。不吉な予感と共に自ら走ったサンタが見たのは、解体され焚火にされたソリと、その上に煮えるトナカイ鍋を囲む住民達の笑顔であった。
「もるすぁ――!」
 恐慌の中でサンタは逃げた。泣きながら誓った。愚劣低俗の野蛮人め、関わったワシが悪かった。これからは文化的な上流家庭だけ相手にするわい……


「今晩は、サンタですじゃ。煙突から突然すみません」
「動くな。動くとうつぞ。泥棒だな」
 迎えたのは猟銃を構えた父親と息子だった。
「パパ、まず足に一発ぶちこんで、逃げないようにしたほうがいいかもしれないよ」