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1000字小説バトル

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1000字小説バトルstage3
第31回バトル 作品

参加作品一覧

(2012年 2月)
文字数
1
小笠原寿夫
1000
2
ごんぱち
1000
3
(本作品は掲載を終了しました)
ウーティスさん
4
石川順一
1000

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猫よ
小笠原寿夫

今朝、猫が一匹死にました。
父が死に水を取ってくれました。
家族から愛され続けた猫です。猫の命は、小さなものなれど、家族の悲しみは、幾ばくもないものでした。
私は、猫を抱いてあげました。
冷たくなって、硬くなった猫に、言ってあげました。
「お前は、賢かったんだよ。わかってるのか?」
猫は勿論、返事をしませんでした。ポケットの中に収まるころから可愛がっていたのに。
足が悪くて、いつもヨロヨロ歩いていたのに。
気が向いた時しか、鳴き声をあげなかったのに。
今は、何も言えない骸となっていました。去勢手術をされ、天涯、子供を産めない猫の本当の幸せは、何だったのでしょうか。本当にこの猫にとって、天寿を全うできたと言えるのでしょうか。
哀しみに暮れる私達を最期の最期まで猫は、可愛かったのです。愛すべき猫は、私の32歳の誕生日に亡くなりました。まるで、それを待っていたかのように。

生き物は、いずれ死ぬ。

当たり前のことながら、それを目の当たりにすると、為す術なく、行き場のない哀しみに包まれます。胸の奥底にしこりができたように。途轍もない断崖絶壁が、目の前に立ちはだかったかのように。
私は、彼の頭を撫でれば、撫でるほど、幸せな気分になり、餌を食う仕草を見れば、安心し、にゃあにゃあ鳴く声を聞けば、優しい気持ちになれました。

生きてこそ。

その言葉通り、猫は、19年生きました。ペットの死。そう言ってしまうのは、簡単です。
ですが、永遠の別れは辛いもの。
弟が、小学校五年生の時に拾ってきた猫。母が厳しく躾けをした猫。私が、心から甘やかした猫。そして、父とともに生活し看取られた猫。
死を以って、人を幸せにさせられる。
そんな猫でした。
思えば、飼っちゃダメだと言われ、弟が連れてきた猫を、母は、見た瞬間、その愛くるしさに翻弄され、飼う事に決めたのです。
猫よ。ミャーコよ。お前の餌と糞の始末は、私の日課だったんだよ。
お前は、その存在自体が我が家にとって、重要だったんだよ。

あんまりじゃないか。

寝ている猫や、餌をねだる猫をみては、癒されていた我々は、どうしたらいい?
寿命がきた猫に訊ねても答えは出ません。

天寿を全うされた、我が家のアイドルは、獣から天使になりました。
私は、彼の晩年に立川天使師匠と名付けました。

天使師匠、お疲れ様でした。
ご冥福をお祈り致します。
天国で、沢山の幸せを堪能して下さい。
貴方が、この世に生きた証は我々の心に残っています。
猫よ 小笠原寿夫

妖怪出没注意
ごんぱち

「この先の芦霧峠を越えなさるのか」
 ドライブインの食堂の主人は、うつむいた顔から目だけを四谷京作に向ける。
「そりゃ一本道だからな」
 四谷はうどんをすする。
「悪い事は言わん、泊まって行きなされ」
「はは、商売上手だな」
 主人の言葉には、切迫感が混じっている。笑い飛ばそうとした四谷の表情に、笑い飛ばし切れない固さが浮かぶ。
「冗談を言っているのではありません、こんな晩、芦霧峠には……出るんじゃ」
「はいはい」
 四谷はうどんに唐辛子をかける。
「あっ」
 その時、唐辛子の内蓋が外れ、唐辛子が丼の上に広がった。
「ただの人でも危ないのに、お客さんのようにツキのない方では格好の餌食……」
「誰がツキがないだ! ラッキーじゃん、すっごいラッキーじゃん!」
 四谷はうどんを一気にすすりこみ、つゆを飲み干す。
「オレは、辛いの好きな、げほっ、えほっ、んだよ! げほっ!」

 四谷の運転するカローラが暗い林道を走る。
 カーラジオから流れる深夜放送の音楽が、不意に止まった。
 四谷は左手でスイッチを探るが、音は鳴らない。
「……電波状況でも悪いのか」
 ハンドルに手を戻し、四谷はフロントガラス越しに前方を見つめる。
「まさか……い、いや、そんなワケあるか」
 木々の茂った山越えの林道の脇には、道路灯が立つ。
 広い間隔で立てられているせいで、光と闇が交互に繰り返され、むしろ視界を狭めていた。
 スピードメーターは、時速八〇キロを超えていた。
「あ、スピード……は、まあいいや、道路空いてるし、空いてるからだぞ」
 四谷はアクセルを弛めようとして、やはり踏み続ける。
 それからきっかり一分後、緩やかなカーブに差し掛かった時。
 激しい衝撃と音が鳴り響いた。
「な!?」
 四谷はびくりと肩を震わせる。
 何かが硬いもの衝突したような、金属の混じった音。
「ひっ、ひぃぃいいいい! な、な、なな、まさか、出たっ!?」
 四谷は思い切りアクセルを踏み込んだ。
 直後。
 再び衝撃が車体を揺すった。

 翌朝、食堂の主人の軽トラックが、峠へ続く林道に来ていた。
「やはり……出おったか」
 ヒビだらけの林道の路肩には、高速で衝突し、見る影もなくなった残骸が転がっていた。
「妖怪、ホイールキャップ外しが……」
 ホイールキャップの残骸が。
 悪路で揺さぶられ車輪から外れ、周囲の岩に衝突してひしゃげた四つのホイールキャップは、木々の間から射し込む朝陽に紅く染め上げられていた。
妖怪出没注意 ごんぱち

(本作品は掲載を終了しました)

歴史小説
石川順一

 去年末から今年初めにかけてカラオケへ3回行った。私は昨年度11月と12月に試験を4回受けてまだ全部発表になって居ないが1回合格で後は全部滑ったのがほぼ確実な情勢なので、カラオケの3回はきっちり3回分の残念会と言う事になって仕舞った。(実は残りの1つも合否通知が来てないだけで公式には発表になって居る。私が確認してないだけだ)
 五木ひろしの「終着駅」の「勇気のない俺を笑ってよ」の部分が残響する。その前に「死ぬ気で来たのに」とさらっと歌うのだが、本気かしらと言う疑念に捉われて中途半端な歌い方になる。
 去年末から今年初めにかけてと行っても、最初の1回目は12月初めで、まあ年末と言えるかどうか、クリスマスイブやクリスマス、大晦日などを考えるとまだやっと師走と行った所で年末とは言えないだろう。
 例えばミスチルの「マシンガンをぶっ放せ」などはその後の伯父貴の死に強く結び付いて居る様で感慨深い。あと横浜関連の唄もよくその3回のうちの1番初めに行ったカラオケで歌って居た様な気がする。
 ソフトドリンク飲み放題で、ソフトクリームも食べ放題。(これは今まで気付かなかった。ドリンクのみと思って居たのだ)。自分で歌を入れて、その曲の歌詞が始まる前に慌てて注ぎに行った事もある。ほぼ私一人で歌って居るのでそうせざるを得なかった。
 カラオケに着く前に「牧野伸顕伯爵」が車に乗って居るのを見た様な気がした。気のせいか。しっかり運転席に座り。ハンドルを回して居た。
 私は猛烈に歴史小説を書きたくなった。超国家主義者に付け狙われた牧野。第1次世界大戦では全権の西園寺に代わって次席全権と言っても実質彼が全てを取り仕切ったと言う。クレマンソーとも、フランス留学中の下宿が同じだったので旧交を温めたと言う。宮内大臣、内大臣を務め陛下の信認絶大にして自由主義的な英米派。戦後政治でも娘婿の吉田茂の良きアドヴァイザーだっと言う。
 私はアフリカンホームダイレクトのCMを見てから市役所へ行った。夜姉が帰って来て母らが風呂へ入る前に、妙に睾丸が急激に痛む。私は襖を開閉したり、簾式のアコーディオンドアを鋭く閉めたりして、ガイストの調和をたもとうとするのだが、母は風呂から風呂桶を鋭く風呂床にこすらして何とも言えない鋭い音を発生させて、こちらの不安定さを助長させるのだった。
 私は歴史小説はまず天皇を中心に書くべきではないかと思った。特に明治以降の。