「今日から夏休みです」
その一言に歓喜するクラスメイト達。その中にはボクの好きなあの子もいる。
でも、ボクには今年の夏休みは喜べませんでした。
今月、7月の30日に、好きなあの子は死ぬことになりました。
ボクは天使、とでも言うのでしょうか。
寿命は15才で尽きます。しかし、気付けば10才の姿で生き返っています。
なぜか、生き返るまでの空白の10年間の記憶はあります。
生き返る前の記憶もあります。
死ぬ痛みも何十回と経験しました。
そして、人の魂を覗いて、消す事ができます。
人口が増えすぎると、夢の中で誰かがボクにくじを引かせ、出てきた人の魂が消え、それを確認しなければいけません。
そしてボクは、あの子のくじを引きました。
いつ死ぬか知っている僕にとって、世の中はつまらないものでした。
でも、そんな時、恋という感情を抱きました。
結局、天使だろうが、寿命が決まっていようが、感情を持っていれば後悔するんだと今知りました。
命日に近づくにつれ、ボクは迷いました。
ボクは、あの子の死ぬ瞬間を見届けなければなりません。
そして、決心しました。
あの子の命日。
あの子は道路に信号無視して飛び出してくる車に轢かれ轢死します。
目の前で、あの子が横断歩道を渡っていきます。
僕は声をかけました。
「行っちゃだめだ!」
あの子の寿命が少し延びました。
「どうして?」
あと少しで、信号無視をする車は通り過ぎます。
「どうしてって・・・」
言葉に詰まったとき、あの子は驚きの言葉を発しました。
「私が死ぬからでしょう?」
どうして?
「どうして知っているの?」
声が震えました。
あの子は機械のような冷たい声で言いました。
「簡単な推理をしてあげる。
ほかの天使に、天使が寿命を消されそうになったら、夢でだれかに告げられるの。
天使は死を見届けないといけない。だから私を消すクジを引いた天使が近くにいると考えた。
案の定、貴方だけ寿命は15才までだった。だから私は貴方を天使だと思った」
あの子は天使だった。そして僕が天使だと知っている。
呆然とするボクにあの子は続ける。
「知ってる?天使に殺された天使は、生き返れないんだって」
そう言って、ボクを横断歩道に突き飛ばしました。
「私に項意を抱いていた貴方なら止めに来ると思ったわ。でも、冷静に私の正確な寿命を一度でも見ていたら、天使だと気付けたのにね」
そう吐き捨てるようにあの子が言うと、ボクの横から大きなクラクションが鳴り響きました。