私は過去を回想する癖がある。
2006年8月11日(金)今日も暑い。と日記に書いてある。既に「立秋」を迎えている訳だが「残暑」「残る暑さ」「秋暑し」「秋暑」な訳だ。「暑し」は夏の季語なので私には実感はともかく「暑し」の季語はこの時の事を思うと俳句を詠む時には使えないと反射的に思って仕舞う。
「暑し」・・・夏の気温の高い事。他に「暑気」「暑苦し」「蒸暑い」。「寒し」は冬の季語。
「熱し」・・・真夏の盛りのはげしい炎えるような暑さの事。他に「灼くる」「熱砂」「熱風」「灼岩(やけいわ)」「炎ゆる」など。
立読みで残暑をしばし忘れけり
焼肉を食べて秋暑を凌ぎけり
最もな理屈も萎び残暑かな
肉の種が曖昧なまま秋暑かな
私はきままに過去の思い出に浸りながら益々句作に磨きをかけたいと思った。以前の俳句の先生に
オレンジの色の携帯電話、かな
と詠んだら季語がありませんねえ、勿論有季定型を強制するつもりはありませんが、最初の内は有季定型で修業してから自由律や無季俳句に挑戦しても遅くはありませんよと教えさとされた事があった。なので
懐手工場内は禁止なり
懐手おまえの腕はよく伸びる
工場で懐手して触らるる
などと詠んで師匠との一体感を確保しようと努めた。
「いいですねえ。そんな調子で詠み続ければあなたの句作の程度もグレイドがアップするでしょう。波多野爽波先生が仰って居られましたが多作多捨と言うのですかね、初学の内はあまり巧拙に拘らずに多作多捨の精神でじゃんじゃん作っては捨ててを繰り返して居れば何とか光明が見出せるものですよ」
と優しく教えさとされた事があった。そうか俄然やる気が湧いて来た。
十二月オレンジ色のセルフォンよ
梅雨曇(つゆぐもり)洗濯物を出すなよな
梅雨曇(つゆぐもり)しこたま吐いてロトシックス
小晦日(こつごもり)卵爆弾破裂する
師匠は俳句の初心者でもよく分かる様に赤で季語にルビを入れてくれた。
「最後の4句目がよく分かりませんね。「卵爆弾」が実在するにしても、「卵爆弾」が「破裂する」と言うのは言葉が勿体ない気がします。爆弾が破裂するのは当たり前の事なのでその時の印象などを詠んだ方がよくは無いでしょうか」
そう言われて私は自句を自ら添削した。
小晦日(こつごもり)卵爆弾膝痛め
「だいぶ良くなりましたね。因みにこつごもりと言うのは新暦では12月30日の事でして・・・」
自信を得た。