道のり、速さ、時間。
小学校一年生で習う概念である。この数式に凡ての金の要素が含まれる。
「ジパングには、それはそれは黄金の建物が、建っているらしいぞ。」
スペイン人のマルコポーロは、それを聞いて、いざ、ジパングに向かった。東方見聞録を書いたのは、それから、ずっと後のこと。
シルクロードを抜け、モンゴルの遊牧民族を見て、船でジパングへと渡った。
「木造の家や、茅葺き屋根ばかりで、一向に黄金の建物が、見えないじゃないか!?どうなっているんだ。」
これが、十四世紀前半の事だと言われている。足利義満が、金閣寺を建立する、少し前のことだったらしい。
「私、マルコポーロと申しますが、この辺りに、金の建物は、ございませんか。」
村人は、言う。
「馬鹿言っちゃあいかん。金の建物は、都に建てられるってぇ話だ。こっから歩くのは無茶だ。やめとけ。」
それでも、彼は諦めなかった。
「やめとけ。やめとけ。ここは、種子島じゃ。歩いていける道のりじゃあねぇ。」
やはり、彼は、諦めなかった。
「その足で行くと、まず、足の方が駄目になる。無茶はお良しよ、旅人さん。」
まだまだ彼は、諦めなかった。
「そこまで踏ん張るんなら、仕方が無い。教えてやろう。この度、将軍様が、都に金箔を貼ったお屋敷を作るそうじゃ。何でも茶室にするそうよ。歩いていくには、暇がかかるが、金を使えば、籠に乗っけて連れてってくれる人が、あるかもしれない。気をつけて行くんだよ。」
マルコポーロの顔が、少し綻んだ。彼は、自分の財布を覗いた。金貨が一枚と銀貨が二枚。
「これじゃあ、何処へも行けない。」
とぼとぼと、歩いて行くと、わらしべを持った男が歩いている。
「なあ、あんさん、このわらしべ、何かと交換してくれねぇかい。持ってるものなら何でもいい。」
わらしべには、虻が、付いて飛んでいる。いかにも面白そうなおもちゃに、思えてきた。
「やあ」
彼に、日本語は通じなかった。
「わかった。じゃあ、その金貨と変えてくんろ。」
わらしべ長者は、ごり押しで、金貨を手に入れた。
「やあぱん、いず、べりー、いんぽしぶる!」
エクセレントなアンサーが、ベリーハッピーにシャウトした。
果たして、わらしべ長者は、悠々自適な生活をし、マルコポーロは、泣きながら、ジパングを後にした。
東方見聞録。
「ジパングで、私が見たもの。それは、それは、見事な算盤だった。敢えて、註釈をすれば、それは、黄金の国である、と付記しよう。」