第2回1000字小説バトル
Entry13
佳香が東京に行ってAV男優とやったそうだ。 かっこいい男であったとかテクニックがすごかったとか言うけれ ど、そんなこと私には興味ない。高校へ向かう田圃の道は高架橋と 交差しており、上に新幹線が走っている、乗れば二時間ほどで東京 に着く、そこには雅也以外の男がたくさんいるかもしれない、けれ ど私にはきっと何も関係ない。 春の訪れを否定するような小雪混じりの風が吹いた日、自転車を 押して佳香と帰った。彼女が尋ねる。 「雅也一人で満足なわけ?」 他の男とすることなど、全く想像できない。私はそう答えた。 「でも、飽きちゃったりしない?(笑)」 その後彼女は、男というのはちょっとしたプレイで興奮するもの だと、単純なものなのだと私に説明してくれた。雅也と会う日だっ たので、私は彼女のアドバイスを信じることにした。彼は測量専門 学校の勤勉な学生なので、私は彼が一人暮らしをしている木造モル タルアパートの部屋で彼の帰りを待つことになる。その時にいつも の私服姿ではなく制服を着ていれば、必ずや彼は興奮するに違いな い、佳香はそう言ったのだ。 彼の部屋で制服に着替え、鏡を見た。野暮ったいセーラーが写っ ている、東京で同じ歳の子らはもっと可愛い制服を着て援交とやら をしているらしい、しかし私には関係ない。前に雅也は言ったこと がある、本当に僕なんかで満足なのかと。どうしてそんなことを言 うか今でもわからない、私たちは付き合っているのだ。来年の春に は二人とも卒業を迎える、その時思い切って結婚してしまうのも悪 くない、二人で住みたいねと雅也は言っていたのだ。 彼が帰ってくるにはまだ間があったので、私は持ってきた雑誌を 広げた。薄い生地の服が特集されている、見るからに寒そうだった。 別のページではOLさんが上司の悪口を言っている、これも私には 関係ない。雑貨のページ。そうだ、東急ハンズには行ってみたい、 あと大きい本屋が近くにあるのもいい、でも、そんなことは別にい い、ここで今まで苦労なく生きてきたのだから。 ドアが開く音がする、私は玄関に向かった。驚いた顔をしている 雅也とスーツを着た女の人がいた。一生懸命考え、私が来ることを 忘れていた雅也が女を部屋に連れ込んだと認識した。月九のドラマ でこんなシーンは何度も見ているし、佳香だったら制服が武器だよ と言うだろう。だが「私」はどうしたらよいのだろう? 私の靴を 囲んで三人は微動だにしなかった。
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