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第2回1000字小説バトル
Entry15

ストーカー

作者 : 東京りんご
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「いい加減にしてほしいねえ。なんで彼女につきまとうわけ?」
 警官がつまらなそうにボールペンを振りながら尋ねた。
 ぼくは白紙のままの調書を見下ろしながらいった。
「つきまとわないでくれ、といいたかっただけなんです。
 はじめ声をかけた時には、聞いてもらえなかったので、仕方なく
 後をつけたんだ。」
  
 夢の中でぼくは彼女に追われていた。
 名前も知らない。どこの誰かも知らない。
 それでいて、どこかで会ったことがあるような懐かしい顔が、追
いつき、かがみこんで、唇を重ねようとした。
「ほっといてくれ、たのむから!」
 ぼくはそう叫んで目を覚ました。
 快い余韻とともに、痛切な寂しさが押し寄せた。
 
 はじめは恋人と別れたショックのせいだと思っていた。
 精神的疲労からくる一時的な症状だと。
 別れた理由は特になかった。自分でもしばらく納得のいくような
答えは見つからなかった。
 あの夢を見て、はじめて知った。
 他人の存在は重荷なだけ……ぼくは誰かと一緒に生きていけるほ
ど、強くはなかったんだ。
 彼女が現れなければ、知らずにすんだのに。

 ある日ぼくは意外に身近な場所、駅のホームで彼女を見つけた。
 普通のOLの顔をして、ぼんやり時刻表を見上げていた。
 その時ようやく、あることに気がついた。
 ぼくたちは前にも会っている。ただ何気なくすれちがい、忘れて
しまっただけで……。
「まってくれ!」
 目があったとたん、彼女は声を無視してホームを横切り、気味悪
そうに振り返りながら、改札の向こうに消えようとした。
 ぼくは見失わないよう走り出した。
「きみだろ、きみなんだ。ぼくにつきまとっているのは。まって!
 逃げないで、話を聞いてくれ!」

 警官がまた退屈そうに聞いた。
「で、まだやるつもり? 次は注意だけじゃあ済まないよ。」
 ぼくは目を伏せた。
「いえ、もうしません。もっといい方法を思いついたんです。
 ……………これから帰って試してみるつもりです。」
 ぼくは自分が追われているんじゃなくて、逃げているだけだと気
づいた。だから立ち止まって、彼女を受け止めた。
 唇と唇が触れ合い、一つになった瞬間、何かをやり遂げたような、
まぶしい気分の中で目を覚ました。
 以来もう二度と、あの夢は見なかった。    






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