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第2回1000字小説バトル
Entry17

因果

作者 : 渡会 悠
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 戦争の原因は誰も知らない。俺が生まれた時にはもちろん、親父
やじいさんが生まれるずっと前から、戦争は日常だった。目的も分
からない。敵が隣村であることしか分からない。
 俺が10才の時だった。隣村のヤツらが夜襲をかけてきた。当時
戦況は落ち着いていて、このまま終結するかと思われていた矢先の
出来事だった。ふいをつかれた両親は、俺を戸棚の中へ隠すだけで
精一杯だった。隙間からこぼれる部屋のあかり。両親は……俺の目
の前で射殺された。暗がりの中、俺は体が動かなかった。唇を噛み
しめ、涙を流し、ただ見つめていた。目をそむけるな。この悲しみ、
憎しみ、怒りを体に刻み込むんだ。忘れるな、あいつの顔を。両親
を殺したあの男の顔だけは、絶対に忘れるな。
 この夜、村は一度滅んだ。
 それから15年。生き延びた俺たちは村を復興しながら、密かに
戦力を蓄え、隣村の様子をじっと窺ってきた。そして新月の夜、俺
たちは隣村を襲撃した。平和ボケしたヤツらは抵抗することもなく、
あっけないほど簡単に死んでいった。
 何軒目の家だっただろうか。この15年、一時も忘れたことのない
顔があった。穏やかな表情になってはいるが、見間違えるものか。
あいつだ。
 「この家は俺一人でやる。誰も手を出すな!」
 俺の家族を皆殺しにしておいて、自分は幸せな暮らしを送ってい
たのか!あの日、お前さえ来なければ、俺たちは幸せだったんだ。
畜生。この野郎。
 俺は、あの日以来体の中で育ててきた15年分の憎しみを機関銃
に乗せ、一気に吐き出した。
 長い夜が明けた。隣村は焼かれ、しばらくは黒煙が立ち上ってい
たが、やがて消えた。
 俺は結婚し、家庭を持った。長年憧れた平和で温かい理想の暮ら
し。幸せだった。
 しかしその幸せも長くは続かなかった。子供の10才の誕生日を
祝っていた時だった。隣村の襲撃を受けた。油断していた。俺は慌
てて子供を戸棚に隠した。扉を蹴飛ばして入ってくる青年の一団。
中の青年の一人が俺をじろりと睨みつける。
 「この家は俺一人でやる。誰も手を出すな!」
 ああそうか。そうだったんだ。この青年は、あの日の俺なんだ。
 憎しみの銃弾を全身に浴び、薄れてゆく意識の中、俺はこの戦争
が終わらない理由をはっきりと理解した。 






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