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第2回1000字小説バトル
Entry20

DOREI

作者 : よしよし
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 美しいものに目がないのは女の性。靴にバックにアクセサリー欲
しくなったら我慢できない、買って買って買い捲る。お金は男をだ
まして貢がせる。それが当たり前だった。そう、昨日までは。

 上気した頬を男とは思えないほど細くてしなやかな指がたどる。
今日逢ったばかりだけど、この高級マンションも彼の小奇麗な顔も
気に入った。でも、ちょっとだけ気になるのは、バスルームで見つ
けた長い髪と、ベットに落ちてた片方だけのイヤリング・・・。
「付き合ってる女とは全部別れるよ」
 そんな私の心を察したような甘い囁き。
「いつでも遊びに来るといい」
 口付けと一緒に、そっと渡された部屋の鍵。

 その後、彼は付き合ってた女達と別れた。そう、確かに付き合っ
てた女達とはね。

「新しい女を作らないとは言わなかったはずだ。文句があるなら出
ていけよ」
 凄艶な笑みををたたえて、彼がドアを差す。
「あんたに捨てられるくらいなら死ぬわ」
 捨て身のセリフで落ちた一瞬の沈黙。やがて彼は眉一つ動かさず
無言のまま、こちらに何か投げてよこす。床に刺さったそれはテー
ブルナイフだった。
「死ぬんだろ?」
 跪いてナイフを引き抜き、青ざめる私の手を取って握らせる。
 彼はもう一度だけ華やかに微笑むと、もうこちらを見ようとさえ
しない。ソファーでゆったり足を組み、煙草に火をつける。

 知らぬうちに涙が頬を伝っていた。記憶にある限り人前で泣いた
のは初めてだった。もう頭の中が真っ白で、私は静かに仰のくと目
を閉じ、鳴咽で上下する喉にナイフの刃先を向けた。
 ピッ。ピッ。ピッ。
 広い部屋に小さな電子音が響く。息を呑む私の目に映ったのは携
帯を手にした彼の姿だった。
「あ、もしもしユミ? 俺。今ヒマ?」
 ヒィッと喉が鳴る。気が付くと彼の手から携帯を奪い、その頭上
にナイフをかざしていた。
 しかし彼は動じる様子もなく、静かに私を見詰め返してくる。
 なんでなの? なんでそんなに優しく見詰めるの? 私に死ねって
言ったのに。
 なぜ? なぜ、髪に触れるの?
 やめて! お願いよ、そんなに優しく髪を撫でないで。
 震える手からナイフが落ち、求められるままに口付けを交わす。
その時になって初めて彼から奪った携帯が何処にも繋がっていない
こと気づいた。
 なんだか自分が可笑しくて悲しい。
 それでも私はこの男に縋るしかない。お願い捨てないでと、あな
たのためならナンデモするからと。泣きながら縋るしか。






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