第2回1000字小説バトル
Entry5
午後11時半。君は留守番電話に向かって、帰ったら電話をくれ、 と告げる。ベッドに横になり、本を開く。 深夜0時。君は本を閉じて枕元の明かりを消す。それまで気にと めていなかったはずの、通りを走る車のエンジン音を、君は意識し はじめる。 午前1時。車の音は途絶えたが、君はまだ寝返りをうっている。 暗闇に時計の音が、やけに大きく響く。 2時。君は枕元の明かりをつける。読みかけの本を開き、十分後 には閉じて、明かりを消す。時計はすぐ耳元にあるように思える。 3時。君は台所に向かう。冷蔵庫から缶ビールを取り出し、ベッ ドに戻って一息で飲み干す。口の中にビールの味が残り、君は渋々 歯を磨きなおしに行く。動いているときには気にならなかった時計 の音が、横になった途端に襲いかかる。君は耳を塞ぎたい衝動にか られる。 3時半。秒針が鼓膜に突き刺さる。君は時計を掴み上げ、床に投 げ捨てる。時計は沈黙し、君は安心して目を閉じる。 午前4時。カーテンの向こうが微かに明るい。君はこれで何千回 めかの寝返りをうち――不眠の原因が、時計の音などではないこと に気づく。
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