第2回1000字小説バトル
Entry6
とても遠いところにふしぎな森があるんだ。一年中みどりで、一年 中花が咲いている。そしていつもきれいな七色の虹が、森にかかって いた。それはとても大きく森のどこからでも見ることができる。夜中 でも見ることができるんだ。 夜の虹。想像してごらん。 月明かりと無数の星に見守られて虹は森の全体をだまって見渡してい るんだ。 フクロウのフク子婆さんは毎晩、その虹を眺めて、 「フホーッ、フホーッ。」 と、感嘆の声をもらしている。 森と虹のちょうどまん中には、たてにまっすぐ、ゆっくりと川が流 れている。 この虹には他にもいくつか特徴があるんだ。 まず、キツネでも、魚でも、小鳥でも、だれでも虹にのぼることが できるということだ。そして、みんなで楽しく、おしゃべりをするこ とができるんだ。 虹にのぼれる、どんな気持ちなんだろうね。キツネさんは、どんな 声でおしゃべりをするのだろう。ナマズさんは空を見て何を思うんだ ろうね。 タヌキのタヌ吉は虹に腰掛けて遠くを眺めていた。風に乗って真白 い雲がふわふわと進んでいる。その雲のまわりをトンビのトンゾウが 大きな円を描くようにのんびりと飛んでいる。それをのんびりと眺め ているタヌ吉。 「おーいっ、タヌ吉ーっ。」 虹の下でキツネのゴン太が大きく手を横に振っていた。 「おーいっ、タヌ吉ーっ。こっち、こっち。」 ゴン太は横に振っていた手を縦に振りはじめた。タヌ吉は負けずに 大きな声で言った。 「お前がこっちへ来ーいっ。」 タヌ吉は下から上へ、前から後ろへと大きく右手を仰いだ。 「バカヤロー、急いでいるんだ。早く降りて来ーい。」 ゴン太は両足をばたつかせた。それを見たタヌ吉はつぶやいた。 「ったく、いつもおいらがここでのんびりしていると、あいつは邪魔 をするんだ。そりゃあね。おいらも、この虹は登るよりね、降りる方 が楽だということは分かっているんだよ。でもね、こののんびりとし た気分は誰にも邪魔されたくないね。」 タヌ吉は、立ち上がって二、三歩、進んで、足を前にぴょんと突っ 張った。そのまま虹の上に軽くしりもちをついて二、三回バウンドし た。そしてそのまま虹を滑りはじめたんだ。両足を前に伸ばし、両手 を上に挙げ声を出した。 「ヤホーッ。」 これがお気に入りのようだ。 と、このようにすべり台として使うこともできるんだね。
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