第3回1000字小説バトル
Entry12
「ヒーッヒッヒッ」 異様な笑い声が階段から這い寄ってくる。私は階段を上りきると、 屋上のドアへ走った。 開いて……いた。間一発のところで、屋上に転がり出る。 (あー、あんな化け物にまとわりつかれるなんて、ついてない) ドアの開く音で後ろも見ずに、慌てて手すりを乗り越えていた。 眼下は霞んで見えない。手すりを掴んでいる手が、汗で滑って思 わずしゃがみ込んでしまう。 後ろを見ると、あいつは追ってきていた。にやけ笑いの目が病的 に輝いている。 私はやっと立ち上がると、事情を説明していた警察に通報した。 (あぁ、手すりまでもうちょっとだ。あいつが近づいてくる…) 「イヤーッ」 身体中のアドレナリンが恐怖心を薄めていくのだろう。見えない 地上に、ひょいと飛び降りられそうな気がした。 「キャーッ」 あいつの手が触りそうになって、私は飛んでいた。霞んだ景色で は、どの位で地上に激突するのか判らない。風圧が顔を変形させる。 スカートで無くて良かったなんて、どうでもいい様な事が頭をよぎ った。 「キャーッ。ウアーッ」 気絶でもするかと思ってたけど、私は大声を出して恐怖心と闘っ ていた。 霞んでいた地上が見えた時には、第三者の目になっていた。 地上20メートル程の高さになった私の周りには、胸から這い出 した私のストークが、落下の衝撃に耐えるのであろう姿に変形を始 めた。必要となる構成要素達を無数に集め、私の身体を包み込んで いく。 地上1ミリの所で落下速度はゼロになる。当然の事ながら停止し た時の衝撃は一切感じられない。 ストークの構成要素達が身体から離れると、それ(彼)はまた私 の身体に這い戻った。いつもの事ながら身体に入る時には、ちょっ と気持ちがいい。 (ふーぅ。今回はストーカーになるのに時間がかかったわよ。高い 場所だったからいいけど…。精密検査の予約入れといてね) 私が爽快になった身体で、ストークに無言で指示していると、屋 上では、警察があいつを逮捕していた。 ストーカー: @忍びよるもの A性的精神異常者の一行動 B身体に付帯(内蔵)する最低限必要な制御装置(ナノマシン)の 指示で、各所に存在する共有の構成要素(部品:ナノマシン)を使 用し、生命維持処置を行う医療機器の俗称。変形可能。種類により 事前の保護を目的とするタイプもある。内蔵タイプが胎児をイメー ジさせる事から、【こうのとり】から派生した言葉とも言われる。
![]()
◆QBOOKSに掲載の記事・写真・作品・画像等の無断転載を禁止します。
◆投稿された各作品・画像等の著作権は、それぞれの作者に帰属します。出版権はQBOOKSのQ書房が優先するものとします。
◆リンク類は編集上予告なくはずす場合がありますのでご了承ください。