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第3回1000字小説バトル
Entry22

変化を伴う由来

作者 : ヒモロギ
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Website : http://home4.highway.ne.jp/deadsoul/
文字数 :
「はい、先生のやった通り石に石を打ちつけなさいガンガンガン」
 石器作りは猿人に進化した者にとって必修科目であり、これがで
きねば原人にはなれない。同級生が先生に提出した打製石器は一様
にギラギラと危うく輝いているというのに、カンジの石器だけでこ
ぼこに崩れていて、案の定先生の評価は一点だった。周口店上洞人
の先生はゼロの概念を解せず、つまりこれは事実上の零点なのであ
る。洞穴へ帰るカンジの足取りは重く、いつしか歩き方も四足歩行
となってしまう。

「なんで石器の一つもロクに作れないかねぇ」
「だけど母ちゃん、指が上手く動かないんだ」
「アンタちゃんと進化してんの? 今年の身体検査の脳容積は?」
「470cc」
「アンタそりゃ少ないわぁ、もっとキチンと進化なさい!」
「だけど母ちゃん、進化進化って、そんなに進化が大切なの? 僕
べつに今のままでいいよ」
 母親はこの進化嫌いな息子にやる気を出させるために、クロマニ
ョン人まで進化した母の友人は現在ラスコーで画家として大成し金
持ちになったとか、近所に引っ越してきたジャワ原人の新婚さんは
火の使い方を知らないため食事はいつも生肉で、奥さんはとうとう
病気になってしまったとか、ホモ・ハビリスの親戚は埋葬の習慣を
知らず、妻が亡くなっても死体を放置したままで、それは無残な光
景だったとかいう話をして聞かせたが、カンジを進化に駆り立てる
ことはできなかった。
「だって、四足歩行のほうが速いじゃないか」

 風すさぶステップでカンジはヒトと出会った。毛の無いヒトの外
見は醜悪で少し恐ろしくもあったが、初めてヒトを見たカンジは好
奇心を押さえることができなかった。エリートのヒトにできないこ
とは何もないと母ちゃんが言っていたが本当か、なぜ毛がないのか、
ここで何をしていたのか、矢継ぎ早に質問したが、ヒトは質問には
答えず、街へ連れて行ってあげよう、とだけ優しく言った。

 カンジは立派な部屋をあてがわれた。
「進化なんて別にすることもないさ。ここで好きな事をして暮らせ
ばいい」
 洞穴とは比べ物にならない程清潔で明るい部屋、日に三度も出さ
れる美味しい食事、周りには終始にこやかな顔でカンジを見つめる
大勢のヒト。ヒトって素晴らしい、無償で他人にこんなにも優しく
できるなんて。僕もヒトになりたいな。そう考えたら何となく脳容
積も少し増えたような気がして、カンジはオリの外のヒトたちにホ
ッコリと微笑み返した。






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