第3回1000字小説バトル
Entry23
僕の家族について簡潔に述べていこう。 祖父はよく自分の昔話をする。聞くほうは当然苦痛だが、年寄り の数少ない楽しみだと思って我慢している。ちなみに彼の趣味は盆 栽だが、たぶん下手の横好きだと思う。 祖母は毎日我が家の食事を作っている。プライドを持っているの だろう、たまに母が料理を作ると「家風に合わない味」などと不快 感を示す。実を言うと僕は祖母の料理はあまりおいしいとは思わな いが、それを言うとショックでボケるかもしれないので黙っている。 父は会社員だ。具体的に何をやっているのかは知らないが、スト レスは溜まるだろうし僕たちを食わせるために働いているのだから、 夜中に泥酔して帰ってくるのはいい。だが寝ている僕を叩き起こし、 酔っ払い口調で「俺は父親だ」とわかきりったことを言ってからん でくるのは非常に迷惑だ。酒の勢いを借りて「俺を尊敬しろ」と言 っているのだろうが、安眠を妨害されて尊敬できるわけがない。 母は時々真顔で「そんな子に育てた覚えはない」などと理不尽な ことを言う。覚えがなくても、そんな育て方をしたからこんなふう に育ったのだ。それから「あんたのためを思って」と恩着せがまし いのも困る。そういうことは言葉で伝えるべき性質のものではなか ろう。愚痴や押し付けで子育てができれば苦労はしない。 姉はすぐ僕をぶつ。「ブス」と口で言ったのだから口で言い返せ ばいいのに、すぐ手が出るのは野蛮人の証拠だ。そして顔ブスで性 格ブスなのに、妙に色気づいている。ブスがいくら化粧や服で化け てもやっぱりブスなのに、無駄な努力であると言わざるをえない。 残酷なようだがそれが現実なのだ。 兄は何度も補導されている。その理由はいつも万引きだ。学習能 力がないらしい。半月前なんかエロ本を万引きし損ねた。こんな男 が兄だなんて恥辱としか言いようがない。 弟は僕よりテレビゲームが上手いと威張る。そんなくだらんこと で勝ったつもりか。中学一年にもなって分数の計算もできないくせ に。己の無能ぶりをもっと自覚しろ。 妹は僕を呼び捨てにする。生意気だ。いくら注意しても改めない。 腹が立って軽く小突くと、大袈裟に泣いて母を召喚する。母は問答 無用で「お兄ちゃんでしょ」などと言う。そんな理屈があるか。双 方の言い分を聞いて判断しろ。妹を無条件で正義とするな。その親 馬鹿のせいでこんな無分別な妹になるのだ。 幸か不幸か、家族内でまともなのは僕だけだ。
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