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第3回1000字小説バトル
Entry24

作者 : 高島朝也
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 かつて来たことがある、その場所に立っていた。つぶれたと聞い
た。オレとダチとで闇に紛れてそこに行ってみた。すでに使い物に
ならない門に立ち禁のロープが張ってあった。乗り越えて中に入っ
た。
 噂を聞いたのがトロかったのか、つぶれてだいぶたってるようだ
った。

 かつては馬の形をしていたはずだが今は首が取れてしまっている。
ダチの一人が後ろにまわっていきなり腰を振っていた。もう一人の
ツレはどこかに落ちていたのだろう、かつては井戸に住んでいたは
ずの、首の長い女の顔を股間にあてている。オレはオレでライトの
ないステージにのぼり、一人でショーをやってみた。

 タラタラと歩きながら、割れかけてあぶない鏡を粉々にしてやっ
た。景色が見やすいように窓は外してやった。いつ来ても乗れるよ
うにゲートは開けてやった。

 かつて来たことがある、その場所に立っていた。つぶれたと聞い
た。長い間放っておかれていたのが、やっと撤去されたとも聞いた。
バカなガキどもが闇に紛れて忍び込んで事故を起こしたためらしい。
 今では小さな塔が立っていた。三階くらいの高さ。小さいころに
は現実世界から遠く離れた真っ白に輝く場所だったここは、今では
鉄の柱と導線が支配している。塔の下では老人が手に持った太鼓を
叩きながら念仏を唱えいた。私はずっと後ろで見ていた。

 ホントにバカなガキどもだ。せっかく私が使いやすいように手入
れしてやったというのに。私は、私の力で、その場所を元に戻して
やったのだ。誰が来ても楽しめる場所にせっかく直してやったとい
うのに、またその場所をこわしてくれやがった。
 老人の叩く太鼓の音が私の体の中でこだまする。念仏が頭の中を
駆けめぐる。

 日が傾きかけるころ、私は塔とは反対側を見ていた。上まで行か
なくとも、壁がなければ景色のいいところだったことを初めて知っ
た。上から見たはずの景色と変わらない景色をそこから望むことが
できた。案外あのガキどももこの場所を輝く場所へと戻してくれた
のかもしれない。老人の叩く太鼓の音と念仏が止まっていた。振り
向くと、老人は塔を背にゆっくりと歩き始めていた。私はその背中
が見えなくなるまでじっと見送っていた。

 誰もいなくなった。遠くに見える景色と街は、影と光を放ちはじ
めていた。まわりにある木と草のざわめきだけが耳に届いた。
 私は振り返った。無骨な塊がそびえ立っている。私はその塊を、
ペンキで塗りたくっていった。






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