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第3回1000字小説バトル
Entry4

タイムカプセル

作者 : 大西圭祐
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 まさか、一人でクラス分のタイムカプセルを開けるとは思いもし
なかった。
 みんな大人になっていつのまにか忙しくなっていたんだ。でも、
それはわかっているし、しょうがないことだ。
 しかし、僕は仕事がないというわけではない。家も建ったし、女
房も、子供もいる。
 それに僕はあんまり同窓会などには出席しなかった方だ。

「先生。ごぶさたしてます。」
「いやあ、大きくなったなあ。久しぶり。元気してるか??」
「はい。私も、妻も子供も、とても元気です。」
「もう、結婚していたのか。おめでとう。
 ところで………他の奴らはどうした。」
「ボク一人です。」
「………みんな忙しくなっちまったもんだなあ。」
「はい。」
「タイムカプセルは右から数えて3番目の桜の木の下だったな。さ、
行こう。」

 このタイムカプセルは当時みんなで話し合って「30歳になったら
開けよう」ということになった。
でも、当時のボクらから見たら、30歳なんていう年齢は想像もつか
なかった。

「ここだな。」
「はい。先生はそこにいて下さい。ボク一人で掘りますから。」
「おお、そうしてくれるか。わしも、もう腰がいうことをきかなく
なっちまった。」

 当時、僕には死ぬ程好きな女の子がいた。
 いつもその女の子を見ていたような気がする。
 そして、タイムカプセルの話がでてきたとき、僕とその女の子は
席が隣だった。
「何書いてるの??」
 僕はなにげなく、その女の子に聞いてみた。
「だめ。30歳になってから。ね。」

 今思えばその時期が、僕の人生のなかで一番パワーがあふれ、輝
いていた時かも知れない。
 タイムカプセルを開けたら、その輝きを少し取り戻すことができ
るかもしれない。そう思って、今日ここに来たのだ。

「あっ、これかな??」
 バケツを見つけた。僕は迷うことなくそのバケツのふたを開けた。
 いろいろな奴の、いろいろな物が入っている。手紙に、折り紙、
コンパクトなんかもある。
 自分は当時かなり人気のあったヒーローの人形を入れていた。

「………」
 彼女の手紙があった。
 さっそく、開けてみる。
 中には可愛い字で、
「竹本君のおよめさんになれますように。」
 と書いてあった。
 竹本とは、当然僕のことである。
 何かが、込み上げてきた。
 ごめん。今僕にはちゃんと、優しい女房と、かわいい子供がいる
んだ。
 あのとき僕は君が好きだったのに、素直に言えなかった。
 僕は君を傷つけてしまったね。

 涙が頬をつたっていくのを感じた。
 僕は涙をぬぐい、その手紙をバケツしまってふたをした後、回れ
右をした。
「先生!!」
「なんだ?? どうかしたか??」
「僕、今、輝いてますか??」
 先生は不思議そうに首をかしげた。






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