第3回1000字小説バトル
Entry5
「俺すてられたんだ」「……そう」「もうじきしぬから」「どうし て?」「俺のびょうきはなおんないんだ」「だからって人が人を捨 てるの?」「自分のいのちでさえすてれるんだから。他人をすてる くらいどうってこと」「……おまえはそのひとのこと、」「わから ない。でもいつでもほしいものくれてた。いつだって、俺のこと、」 ――である日とつぜんその人は。もう俺にはおまえの欲するもの を与えてやれないと言い残しひとり。すがたを消したのだと彼は言 った。「俺いっしょうけんめいしたんだよいろんなこと。俺だって あのひとがほしがってたもの、あげたくて、いろんなこと考えてい ろんなこと言って話して、だけど……」「おまえはすてられたんだ。 もうわすれなよ。……これからは。おれがおまえになんだって」 ――結果青年も彼を捨てざるを得ず。おなじじゃないかとのらは 泣いた。かくして感染の勢いはとどまることを知らぬままにきょう ものらは街をさまよう。
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