第3回1000字小説バトル
Entry7
結婚を来月に控えた幸子は、未来の夫である幸男と家探しの真っ 最中だった。 「明るいキッチンに広いリビング。それと寝室は・・・いや〜ん」 と、絵に描いたよう幸せを満喫しているが、これでも結構忙しい。 結納に始まって式の準備に旅行の支度etc・・・。まぁそれでさえも 「し・あ・わ・せ」と指でクネクネ書いて、リボンをかけたいほど なのだから、愛の巣探しともなれば夢は膨らむ一方だ。 「お手洗いは和式にしましょうネ♪」 ピシ! 「・・・・・ネッ♪」 ビシッ!!! 幸子の言葉に反応して大気が音を立てる。それはポルターガイス トでもラップ音でもない。彼女の向かいでは幸男が顔を引き攣らせ ている。 「な、なにを言ってるんだい幸子。トイレは洋式だろ?」 バキバキバキー! 甘やかな空間に亀裂が走る。それは夫婦になろうとする2人が初め て聞く崩壊という名の序曲か。 幸子の話 そう、あれは忘れもしない20年と少し前のこと、その日親戚の家 に伺った私は、初めてお会いした従兄弟のお兄さまに恋してしまった のです。そう、それが私の初恋でした。 but! 美しい思い出となるはずのそれは、後に起きた悲劇によって 忌々しい過去となったのです。 私は伺った先でお手洗いを借りたました。見慣れぬ洋式に戸惑った けど、もう今年は幼稚園生、母を呼ぶのは見っとも無い! 私は勇気を出して洋式トイレに挑んだ・・・。 誰だぁ便座上げっぱなしのヤツは! おかげで便器に落ちたじゃね か! 便器に嵌まって泣いってるのを笑いやがった大人共、覚えてや がれ。従兄弟のアニキ! お前もだ! ・・・と、言うわけで洋式トイレ反対。 幸男の言い分 あれは旅先の民宿でのこと。そこは和式で汲み取りだったけど当時 それほど珍しいものじゃなかった。僕はいつものように便器をまたご うとした。ところが、その時にかぎって僕は片方のスリッパを便器の 中に落としてしまったんだ。困った僕は果敢にもスリッパを拾おうと したんだよ。 (今思えば、拾ったスリッパをどうするつもりだったのかなぁ) とにかく僕は便器の中に手を伸ばした。あと少しあと少し。ああ、 でも届かない。あともう少しだけ・・・ と、その時だった、僕がバランスを崩したのは。 「私の負けだわ。洋式にしましょう。」 沈黙を破ったのは幸子だった。 「わかってくれたんだね!」 がっしと手を取り合う2人。響け幸せの鐘。歌え愛の歌。 僕たちに恐いものはない。
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