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第4回1000字小説バトル
Entry10

アフリカ

作者 : 瓜生瑠璃
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Website : http://www.ky.xaxon.ne.jp/~k3654g12/
文字数 :
 アフリカの夜は漆黒よりも深い。黒光りする夜の向こうには何か
があるに違いない…・・。安雄が言い残したセリフだ。
 いつからかずっと部屋に閉じこもり孔雀の絵を描き続けている。
孔雀はメスよりもオスの方が美しい。だから完成したキャンパスに
唾を吐きかけ燃やすつもり。

 孔雀の羽根に色を塗る。パレットの上で、赤と黒を混ぜる。途端
に絵筆の先についた黒に赤が侵入し、やがては浸食する。しかし黒
は触媒の赤を飲み込むだけで黒世界に統一されていく。赤が消滅し
ていく。忌々しきは黒。

 安雄は私を置いてアフリカに消えた。黒人の後を追って行ったの
だ。安雄がアフリカに被れ出したり、髪を編んでみたり、黒人音楽
を聴き始めたのも何もかも、あの黒人の影響なのだ。

 私は今、HIVに感染している。妊娠も判明した。おそらくお腹
の子供も感染しているはずだ。私はある観念にとりつかれる。
−Go Africa…・・

 孔雀の絵が完成した夜、アフリカのサバンナにいる夢を見た。ゼ
ブラが草原を駆け抜ける。ゼブラの集団はまるでフーガの様に一つ
の真実という主題に向かって追走し、一体化する。そして、合体し
たゼブラは消滅し、後に、黒い汚点だけを残した。

 孔雀を燃やした後、安雄の後を追い南アフリカの大地に降り立っ
た。殖民地支配が残るこの町では、アパルトヘイトが根強く残って
いた。直後、私は黒人の鋭い視線を浴びた。カラードについては関
心がないと目で返した。すぐに邦人の旅行者が安雄の居場所を教え
てくれた。


 夜になるのを待って、礼拝堂に向った。アフリカの夜空は真の闇
というのは本当だった。
「ヨクイラシテクレタネ」
 神父が待ち侘びたように言った。賛美歌の中、安雄が姿を現した。
私を一瞥すると、神父と抱擁を交わした。
 安雄は私に言った。
「差別と戦っていくんだ」
(ゼブラの一体化…・・。)
「できたの…・。赤ちゃん…・・」
 私は言葉を待った。そして安雄は言った。
「ヘテロがホモを愛せば不幸になる」
「それでも私は構わない」
「じゃあ、一緒に死んでくれ」
「私は…・・生きる。でもあなたには…・・道はひらかれない」
 私は礼拝堂を後にした。ふと、返り見た礼拝堂は恐ろしいほど、
真っ赤に燃えていた。炎に包まれた礼拝堂はまもなく跡形もなくな
るだろう。

−私は焼け跡から出てきたロザリオを見つめている。神父のものだ。

 通りすがりの黒人が私をみてマリアと言った。見つめ返す先にあ
る瞳は黒く澱んでいる。






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