第4回1000字小説バトル
Entry16
『ここに一人の指揮者がいます。彼は地元のアマチュアオーケスト ラの常任指揮者をつとめていらっしゃいます。指揮者と聞くとかの ベートーベン大先生のように髪の毛はもじゃもじゃでライオンのよ うな鋭い目をしているような人をつい思い浮かべてしまいがちです が彼の場合はその正反対といってもいいでしょう。髪の毛はストレ ートでサラサラ、優しそうな目をしていて、性格は意外と怖がり。 カエルが大嫌いだそうです。それでは今日もみなさんに彼の悩みを 聞いてもらいましょう。 彼は、いままでオーケストラや楽器などいろいろなものを操ってき ました。しかしこのごろになって他に操りたいものが出てきたそう です。さてそれでは早速その操りたいものを彼に聞いてみましょう。』 「ふん、何が「女を操ってみたい」だ。お前一人の力でなんとかし てみろ。」 私はテレビに向かってそう呟いた。 そもそも、こんな番組に出る奴なんてただ気弱なだけの奴だ。自分 一人の力じゃ何もできない。 しかし、そいつらを見ながら大きな優越感を得ていた。 そう、この番組を見ている時が一番幸せな時だったのである。 しかし、そんな日々が続いていたある日、突然あの番組が最終回を 迎えてしまったのである。そう、これはその日から私が優越感を得 られなくなってしまうということだったのである。 番組が終わって、最初のうちはなんともなかったのだが、だんだん とストレスがたまり、だんだんとプライドが崩壊し、だんだんと自 分という恐怖に耐えられなくなってしまっていた。 そんなとき、ふとテレビをつけてみると、『お悩みの人、大募集!!』 というテロップが目についた。 それを見た瞬間、私は何かに吸い込まれるようにそのスタジオへと 足を運んだ。 そして、今、私はカメラの前で司会者の質問に真剣に答えている。 人生わからないものである。 急に立場が逆転したり、昔の強さを見失ったり。 私があの時、夢中になって見ていた、あの番組は、それらを教える ための、そのための、番組だったのだろうか。
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