第4回1000字小説バトル
Entry20
台風の次の日の夜だった。ひび割れたアスファルトの上にはトタ ンの切れ端やでっかい枝がばらばら落ちていた。 まだぬるぬるした風が吹いていた。おれたちはおれのアパートを 出て、くねくね曲がった細い道路を、大通りに向かって歩いていっ た。おまえを駅まで送る途中だった。 神社の赤い鳥居の前で、おまえが転んだ。それで、鳥居につかま って立ち上がろうとした。でも鳥居は濡れていて、おまえはまた転 んだ。その時に、頭を鳥居の台座のコンクリートに強くぶつけたん だ。 神社の木々がざわざわ揺れていた。通り沿いの家々はもう寝静ま っていて、電気がついているところもなかった。おれはおまえを抱 え起こした。そしたらおまえのきれいな顔は血まみれで、おまえが 目を閉じて顔をしかめているのが街灯の光でわかったよ。 おれはきょろきょろ周りの暗闇を見て、それからおまえの鼻と口 を掌で塞いだ。おまえが動かなくなるまで、力を込めて塞ぎ続けた。 それからおまえの体を抱き上げて、神社の軒下に持っていった。 あらかじめ穴を掘ってあったからね。スコップだって隠してあっ た。あとはおまえをその穴に入れて、土をかければよかった。おれ は泥だらけになりながらおまえを埋めた。 もちろん、こんな話はただの嘘だぜ。おまえは今、おれの横で穏 やかな寝息を立てて眠っているし、おれたちの間にはおれたちの息 子も眠っている。だけど、こんな眠れない夜には、おれは時々考え ちまうんだ。おれがあのアパートの近くの神社の軒下に掘ったあの 穴は、今でもまだあるんだろうかってね。
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