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第4回1000字小説バトル
Entry26

Episode01

作者 : rnem
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 「ここ」へ来るまでに、時間も手間もだいぶかかったという人は
多いと思う。振り返れば、実に多くの時間をわれわれはパソコンや
通信に割いているし、無理に振り返らなければ、日進月歩の分野だ
からその都度必要なことをしてきたまでだ。他人の手を借りなけれ
ば接続できなかった人もいるだろうし、聞くほどにもない、あっさ
りつながったよ、という場合もあるだろう。
 私がインターネットを始めたのはかなり以前、是非はともかく、
グローバル情報化社会はインターネットなしでは渡れないというま
ことしやかな噂が、にわかに実体化してきた頃だった。なにしろ
21世紀はまだうまい具合にちょっと先にあって、私が勤めている
会社の営業部に本格的にEメールが導入されたのも、ちょうどその
頃だったと記憶する。
 しかし、まあ赤ん坊だった頃の私の娘と同じようなもので、おも
ちゃというのはやはり使い始めがいちばん面白い。世界とアクセス
するというような謳い文句通りの感興は次第に醒めるものだし、会
社でメールを確認したり、家へ帰って自分の部屋でビールの残りを
空けながらネットサーフィンしたり、といったことが単なる習慣と
化すまでに、さして時間はかからなかった。
 そういえばアナログ最後の牙城であった副部長が、ついに「イン
ターネットを始める」と宣言するや、「太田くん、本には目次、物
事には概要というものがあるだろう。インターネットのそのページ
を最初に見せてくれ」と言い出し、食い下がられてひどく迷惑した
ことを思い出す。今ならなかなか面白い意見だぐらいには思うが、
副部長の常識を迎え撃とうにも、私にしたって習慣に過ぎないわけ
だから、常識と常識は睨み合ったまま、会話はロックしてしまった
のである。
 結局私の場合、当初の期待が大きかったぶん、物足りなさが強く
意識されたのだと思う。かれこれ4年も経つと、いつものようにア
クセスしながら「ここ」インターネットとは自分にとって何なのだ
ろうと、ふと思うようになった。手に入れたはずの装置は今や一般
的な道具だし、していることだって突き詰めれば情報の消費だ。つ
まり全部が、まるごとゴミなんじゃないかと、直感的に思う日もあっ
た。
 日曜日だった。手際よくマシンを立ち上げ、故郷の軽井沢の写真
を載せた自分のホームページに異常がないか確認し、あとは気まま
にリンクを追う。
 と、クリックした途端、「そこ」へのドアが開いていた。






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