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第4回1000字小説バトル
Entry28

罪多き者

作者 : 山口泰司
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 その教会は銀座四丁目から歩いてさほど遠くないビル街の中にあ
り、それを知らぬものはそれが教会だと気づかずに通り過ぎてしま
うに違いない。ある年の二月のなかばの日は朝から冷たい雨が降り
続いていた。
 天から落ちてくる主の涙はあまりにも、もの悲しく冷たくそして
激しかったので神父はメランコリーな気分を感じながら藤椅子に座
り窓の外を眺めていた。
 人間の愚かさと醜い欲望を他の誰よりも受け止めなければならな
い。苦しいけれどそれが神のエージェントとしての自分たちの使命
なのかも知れないと神父は感じとっていた。
 すると若い住み込みの伝道師が部屋のドアをノックした。
「神父様、教会の入り口で雨の中、懺悔を乞うている若者がおりま
す。いががいたしましょう。」
「こんな雨の日の、しかもこんな時間に。入れてあげなさい。よほ
ど悲しい事がおありなのでしょう。」
 しばらくして平静を取り戻した青年は着替えを与えられて教会の
懺悔室に案内された。
 懺悔台にひざまづいた青年に神父は話しかける。
「汝がいかなる過ちを犯したとしても、真実を神の前で告白するこ
とを約束できますか。」
「はい、神父様。お約束いたします。」とその青年は罪を悔い改め
ようと覚悟を決めたようだった。そして重い口を開きしゃべり始め
た。
「わ・わたしは今までたくさんの人を殺してきました。また普通の
人よりもはるかに多くの嘘をついて人を騙してきました。」神父は
驚き、声を振るわせながら続けた。
「ほ・ほ・ほかに過ちはないかね。」
「はい、他の男に盗みをやらせた上に、その家の女性をレイプさせ
ました。」と青年は目に涙を浮かべながら語ったのだった。
 祭壇にあるロウソクの火が急にはためいたかとおもうとその直後、
そのうちの何本かのロウソクは消えてしまった。
「なんとひどいことを。汝は一体何者なのか。」
「小説家です。」






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