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第4回1000字小説バトル
Entry29

少しだけ片思い

作者 : 渡会 悠
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 ちょっとした悪戯心だった。
 おしゃべりな私に無口な彼。どのぐらい私が沈黙していたら、彼
から話しかけてくれるんだろう。デートの帰り、電車の中で実験し
てみた。
 1駅2駅。会話がないことに気付いてないみたい。
 3駅4駅。ちらりと私の顔を盗み見る。いつもと違うって感じて
くれた?さあ、なにか話しかけて。どんな話題があるの?今、どん
なことに興味を持ってるの?
 5駅。適当な話題が見つからないのかなあ?沈黙が続く。
 6駅。違う。私の機嫌が悪いと思っているんだ、きっと。彼、怒
っているみたい。どうしよう。誤解を解かなきゃ。
 ちょっと待って。どうして怒るの?私はただ彼から話しかけても
らいたいって思っただけなのに。そうよ。私が怒られる筋合いじゃ
ないわ。怒るべきは、私の方よ。私が明るくおしゃべりしなきゃ気
まずくなるなんて関係、間違ってるわ。恋愛って2人でぶつかり合
って、譲り合って、成り立つものじゃない。どうして私だけが彼の
ゴキゲンをとらなきゃいけないの?
 こうなったら勝負だわ。絶対に私の方から口きいてあげないんだ
から!
 7駅8駅9駅。……どうしてこうなっちゃったんだろう。電車に
乗るまでは、本当に楽しいデートだったのに。こんな馬鹿馬鹿しい
実験、思いつかなきゃよかった。つまんない。彼はつまらなくない
のかなぁ。……平然としている。平気なんだ。私がこんなに悩んで
いるのに、彼にはどうでもいいことなんだ。なんか悲しい。
 ほんの少しワガママ言ってみただけなのに。あきれられちゃった
ね、きっと。ワガママって、愛されている自信がある人だけの特権
だったんだ。今でも十分幸せなのに、欲を出した罰かな。振られた
らどうしよう。
 私、そんなに気の弱い女の子じゃない。ううん、相当気が強いと
思う。なのに彼のことになると、どうして自信がなくなっちゃうん
だろう。
 私の降りる駅が近づいてきた。
 今日で私たち、終わりなのね。こんなつまらないデート、誰だっ
て二度としたくないと思うもん。ホント、馬鹿なコトしちゃったな
ぁ。
 私は泣き出さんばかりの表情をしていたと思う。
 彼はそんな私の顔を見て、
「やっぱり、どこか具合が悪いんだろ?ちゃんと言えよ。心配する
だろ」
 ……悔しいなぁ。一言で私の気持ちを地獄から天国へと移動する
なんて。
 大好き。
 でも、おしゃべりな私も、これだけは口に出さない。
 気弱な女の最後の砦だから、ね。






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