インディーズバトルマガジン QBOOKS

第4回1000字小説バトル
Entry35

言えない言葉

作者 : 苦楽
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 とある居酒屋。それなりに女性に対して自信のある達川という男
は困っていた。聡子との初デートだというのに、まともに喋れない
のだ。達川は昨日、飲んだお茶が思ったより熱く、下唇を火傷して
しまった。口を閉じる事ができず「まみむめも」が「あいうえお」
になってしまう。文庫本などは「うんこ本」になってしまい、彼女
の前でそんなことは言えない。

 気をつけねば。気をつけるといえば、彼女は小さい頃に「さる子」
と呼ばれ、猿に関連する言葉に敏感になっているそうだ。猿ネタも
気をつけねば。
 達川はそう思いながら、口に日本酒を含む。
「達川さん。聞いてるの?」
「えっ何だっけ?」
「もう、普段家で何をやってるかって話よ」
「ああ、家ではほとんどの時間、あそこんいじってるよ。他にする
ことないし」
「まあ、なんてこというの!」
 聡子は顔を真っ赤にして、達川を軽蔑の目でみつめる。達川は
「パソコン」が「あそこん」になっているのに気づいていない。
「え?最近は、あそこんいじるくらい普通だよ。教えてあげようか?
結構楽しいよ」
「もう。最低!そんな人だとは知らなかったわ。」
「あそこんいじりの何がいけないの?」
「もう。知らない!バイバイ」
  彼女は達川をひとりおいて帰ろうとする。
  達川はなぜ彼女が怒っているかわからないまま言う。
「あいあい」
  パチーーーーーン






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