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第4回1000字小説バトル
Entry36

夜中の薔薇

作者 : 海坂他人
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Website : http://www3.justnet.ne.jp/~yoshka/index.htm
文字数 :
 羽目板のすき間から、細い光のすじがさし込んでくる。
 ぼくとありすは、まっくらな屋根裏にいた。下は彼女の父さんの
寝室。
 ありすは教室でぼくのとなりの席にいる。色白で、唇が赤くて、
(お人形さんみたいだ……)
と、ぼくはずっと思ってた。彼女の頼みで、夜中にこんなところへ
来たのも、そのせいだ。

 ありすの家はとても大きいお屋敷で、曲がりくねった階段と、広
い廊下と、たくさんの部屋があって、ぼくはよく遊びに来る。母さ
んはなぜかいい顔をしないけれど。
 母さんと言えば、ありすにはお母さんがいない。いつもいる小母
さんは、お手伝いさんなの、と言っていた。
 兄弟もいないありすの家族は、お父さんだけ。何か書くのが仕事
らしく、いつも机に向かっていて、いろんなお話をしてくれた。
 もう一人、この家には若い男のひとがいる。兄さんかと思ったけ
れど、ありすはとても冷たい。お父さんの部屋にいて、このひとが
入ってくると、すぐにぼくを連れてぷいと出てしまう。お父さんの
止めるのもきかずに。
 誰なんだろう、と思っても、きけやしない。

「パァパが病気なの。」
と、ありすは休み時間に、きんちょうした顔で言った。なんの病気
か判らないけど、死ぬかも知れないの。実はあのひとは妖怪で、毎
晩パァパの精気を吸い取ってるの。あたし、それを確かめることに
したのよ。
「だから、一緒に来て。」
 それでぼくはありすの家で晩ごはんを食べてから、迷路のような
家の中を彼女に連れられて、この屋根裏に来たというわけだ。

 優しい声が流れてきて、ぼくははっとした。しばらく眠っていた
ようだ。
 そっと下をのぞくと、ベッドにはありすの父さんが横たわって、
その横のいすにはあのひとが座って、本を読んであげていた。
 パァパは確かに、別人かと思うくらいやつれていた。でも幸せそ
うだった。
 しばらくしてパァパが眠ると、あのひとはそうっと本を閉じて、
パァパの額にキスをして、スタンドを消して出ていった。
 気がつくと、ありすがぼくのすぐそばにいた。泣いてるようだっ
た。

 ありすが転校するという噂が流れたのは、それから何ヶ月か後だ
った。
 ぼくはすぐにありすの家に行って、パァパが死んだこと、ありす
は遠くの親戚に引き取られること、そしてあのひとはどこかへ行っ
てしまったことを聞いた。そして最後に、
――大人になったら、迎えに行くよ。
と、約束したんだ。
 パァパの代わりには、なれないだろうけれど。






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